著者はアメリカ人の詩人。戦争体験がない著者が、日本人の戦争体験者を訪ねて話を聞く。
インタビューの相手は、真珠湾攻撃に参加したパイロット、被爆者、強制収容所に入れられた日系人、元日本兵、沖縄からの疎開中に船が沈没し漂流した女性など。今だから語られる当時の生々しい証言が、当時の戦争の空気感みたいなものを伝えてくれる。戦争の歴史的事実は学校や戦記物で知ることができるが、その時代の空気は、それに携わったか又は被害を受けた当事者にしかわからない。戦争体験者が徐々に少なくなる中、当事者の声を拾い集めておくことは重要だと思う。(この本ではインタビューを受けた後、亡くなった方が多い)著者は、それぞれのインタビュー後にコメントをつけているが、体験者へ寄り添う姿勢と率直な感想が良いと思った。インタビューされた人たちの悲惨な戦争体験を読むと、今の時代に生きられる幸せを感じる。 とても良い本だと思う。
ちなみに自分の両親も戦争体験者で、父は満州で生まれ、大戦前に引き上げてきて鹿児島に住んでいた時に、空襲を体験し、米軍の戦闘機に銃撃された記憶があると言う。母は長崎に住んでいたが、原爆投下の直前に福岡の親戚のところへ疎開していて難を逃れた。自分は両親の幸運のもとで今を生きている。戦争を生き延びた人たちに感謝するしかない。この著者のように、両親の存命中に戦争体験を聞いておきたいと思った。