サロン中央アジア

中央アジアの自然と人々

安部公房の「砂の女」

2007-11-28 23:58:25 | 中央アジア日誌
旧カラテレン村に残っている数軒の内、東端にある1軒は半分ほど砂に埋もれている。地形と風道との関係で砂は運ばれ砂丘となる。新カラテレン村は今のところ周辺に砂丘は見られないが、5月の砂嵐の後には家屋の諸処に砂が溜まっていた。少しの環境条件の変化で砂丘の位置が移動する可能性は十分にある。2003年の8月にこの村で1週間ほど滞在し、アラル海が健全だった頃に漁師だった人に当時の魚のことや漁港のことを聞き取りした。滞在先は今回の漁師の兄貴の家であった。猛烈な暑さの毎日で、午後3時ころの気温は連日48度であった。数名の調査団は午後になるとひたすら気温が下がる日没を待つ以外にすることはない。というよりも、なにもやる気力が沸かない。そこで、アルマティから持参した安部公房作の「砂の女」を全員が読んだ。砂に埋もれる村で読む砂の女は日本で読んだ時よりもはるかにリアリティがあった。この作品はロシア語に翻訳されており、カザフでも人気の小説である。沙漠に出かける際、この小説を持って行かれると良い。 . . . 本文を読む

砂丘とサクサウール

2007-11-27 22:24:19 | 中央アジア日誌
 旧湖底の植林地を後にして村に帰ることにする。遮るもののない旧湖底沙漠はさすがに寒い。村に近づくとサクサウールの自生地がある。車から降りて同行の研究者がサクサウールの観察を始める。いつか見た風景であるが、しばらくは思い出せない。サクサウールの向こうに波のようにつらなる小さな砂丘群がある。そういえば、10年近く前にシルダリア河口域の水質調査を終えて、テントをたたみ、村に帰って来たとき、村に通じる道はシルダリアの氾濫で水没していていて通り抜けは危険であった。そこで、迂回路を捜していると砂丘群にぶつかった。ここをなんとか通り越せば村に帰れる。運転手が小さな砂丘の間をジープで突破しようとルート探しを始めた。 . . . 本文を読む

サクサウール植林方法

2007-11-23 17:59:39 | 中央アジア日誌
サクサウールの苗木は、ドイツのGTZ(日本のJICAに相当する)の援助でできた苗木圃場から購入する。その苗木を植える位置に穴を掘り、砂丘から採取して運んできた砂を入れて苗木を移植する。その後でシルダリア川からタンク車で持ってきた水を潅水する。これでお終いである。有機質や化学肥料も施さない。穴に入れた砂丘の砂の塩分含有量は極めて低いので苗木の活着率が良くなるという。この植え付け方法は前述のドイツのチームと植物学研究所が見つけたものである。2年もすると苗木の根はこの砂の層をはみ出していくが、そのころには塩分に対抗するだけの体力を苗木が持っているようである。写真の下部(溝の中)は見るからに塩分を多く含んでいるように見える。なんとか生き抜いてくれと願う。 . . . 本文を読む

200m、11列の溝を掘る

2007-11-22 09:36:15 | 中央アジア日誌
今年の植林地は平地が360度ひたすら展開する沙漠の中にある。今年の5月に決定した地点であり、土壌表面にはそれほどの塩分が含まれてない。カウンターパートである植物学研究所のリリアさんが最終的に決めてくれた植林方法ですでにサクサウールが植えられていた。当初の予定では1kmの畦を3本平行して作成し、植林することにしていたが、この地の風の強さなどを考慮して、200mの畦を11本平行させ、植林する方法になった。深さ30センチほどに掘られて溝の断面を見ると。下層には塩分が相当含まれているようである。そこで溝を掘り上げてできた畦の上に植えている。風を遮るものもない沙漠はさすがに寒いが、植えられた苗木を1本ずつ見て回る。か細く、土と同じような色のこの苗が生きてくれるようにと。 . . . 本文を読む

今年の植林サイトに向かう

2007-11-20 16:28:57 | 中央アジア日誌
 シルダリア河口の村から20キロほど離れた、かつては大アラル海湖底であった地点に向かう。11月2日の午後である。小春日和と思っていたが、さすがに午後になれば風が冷たく、冬間近である。かつての湖底は今や広大な沙漠となり、地平線まで平らな沙漠が展開している。前を走るジープの砂煙をよけながらの2台の走行である。今年の植林サイトは1970年代の終わりから80年代にかけて干上がった地域であるが、いまだ植物の侵出がきわめてまずしい。はたして、植えたサクサウールが根を張り、活着し生き残ってくれるのか不安であるが、このような環境条件下で成功させなければ大アラル沙漠を植物で被覆することはできない。新たな挑戦である。地面にはかつてこの湖底に生息していた二枚貝の貝殻がいまだ風化せずに散乱している。遠浅の旧湖底を走ると前方に植林サイトが見えてきた。 . . . 本文を読む

1年後のサクサウール

2007-11-18 00:26:12 | 中央アジア日誌
 今回のカラテレン行きは、去年に続いて2年目の植林のためである。今年の5月に半年目の活着率を測った結果、半分以上の苗が活着し、大地に根を張ってくれていたので一安心したことは本日誌に書いた。地球環境基金の助成を受けての事業である。11月2日に村の周辺に植えた植林サイトを見に行く。写真のように順調に生育してくれている。背丈も枝分かれてよい。 . . . 本文を読む

カラテレン村は小春日和の中

2007-11-15 23:39:56 | 中央アジア日誌
カラテレン村は穏やかな小春日和の中にあった。シルダリアの水位計測を委嘱されている漁師の家が定宿である。今年の5月に小アラル海であわや遭難かと思う嵐を見事に乗り切ってくれた船頭がこの家の主人で、勝手知ったる我が家のように居間に上がり込むと、奥さんがチャイを入れてくれてくつろぐ。スーツケースには防寒着がぎっしりと詰まっているが今日は必要ではなさそうである。 . . . 本文を読む

カラテレン村へ

2007-11-14 00:26:05 | 中央アジア日誌
シルダリア川を渡り、砂利道を2時間ほど走ると目指すカラテレン村が視界に入ってくる。数十戸の村である。かつては良好な漁港の村であったが、今では沙漠の寒村である。人口は500人ほどの村の生業は牛や羊、ラクダやヤギの牧畜である。何人かがシルダリアと小アラル海での漁業を営んでいるが往時の面影はない。アラル海との位置関係を図に示す。ここに到着したのは2007年11月2日である。京都を出発したのが10月の30日であるから、わずか4日間でやって来た。これまで十数年間ここに通っているが最小日数である。 . . . 本文を読む

アラル海植林地への旅・シルダリアを渡る

2007-11-13 00:17:27 | 中央アジア日誌
アルマティからアラル海旧湖底の植林地への旅日記をしばらく掲載する。カザフスタンの旧首都で最大の街アルマティ市には関空からソウル経由で入る。そこからはアクトベ行きの列車乗って、29時間の列車の旅となる。アラル海に接近しやすい街であるノボカザリンスク市に到着する。ここからは車の旅となる。 . . . 本文を読む

アルマティに戻ってきた

2007-11-06 20:38:14 | 中央アジア日誌
 10月31日にアルマティを列車で出発して、アラル海まで行ってきた。アラル海に流れ込むシルダリアの最河口の村カラテレンでの植林のためのアラル海行であった。植林事業はすべて順調に完了し、昨年度に植えた苗木の活着率も60%もあり、まずは順調な滑り出しである。植林のことは後日書き始めるとして、旅の印象を本文に。 . . . 本文を読む