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税制メールマガジン 第39号

2007年04月27日 | 税制メルマガ

税制メールマガジン 第39号             2007/04/27  ------------------------------------------------------------------ ◆ 目次 1 巻頭言 2 税制をめぐる最近の動き3 元主税局職員コラム ~イソップと政策 政府のお仕事(その1)~4 諸外国における税制の動き   ~「少子化対策」としては何もしない国フランス、あるいは自由の母国~5 編集後記 ------------------------------------------------------------------ 1 巻頭言   今年の4月は統一地方選挙ということで、私も近所にある小学校に2度投票にいってきました。知事選挙となると、オリンピック招致の是非など話題性のあるテーマとともに大々的に報道されますので候補者の名前や何を公約として掲げているのかも耳に入ってきます。ところが、区長、区議会議員となりますと、大変恥ずかしいことながら、殆どどういう人なのかわからないまま投票してしまいました。日頃様々な行政サービスを受けている最も身近な地方自治体であるにもかかわらず、どんな代表者によって行政が行われているのか、他の自治体に比べてどんな特色があるのか、など本来住民として当然関心を持っていなければならないことに実は全く無関心であったということに気づかされた瞬間でした。あとで聞いたところによると、中学校の統合の是非が最大のテーマになっていたそうです。  行政サービスの提供というのは「ちゃんと行われていて当たり前」の世界であって、例えば夕張市のような危機的状況にならない限り、あまり意識されないのかもしれません。地方分権が進められていく中、住民によるチェック、住民の行政サービスについての受益と負担の意識の明確化など、その必要性が叫ばれ続けています。こうした点は徐々に根付き始めているのでしょうが、まだまだ先は長いような感じがします。しかし、少子化、高齢化、国際化をはじめとして、私たちの身の回りの環境は大変なスピードで変化しています。当然のことながら、「サービスを提供して当然」の自治体も、そのような環境変化の真っ只中に晒されているわけです。起こっては困ることですが、気づいたら取り返しのつかない状況にということにならない保証はありません。  国についても全く同じことがいえるわけですが、自治体よりももっと「遠い存在」ゆえに危機に気づくのはさらに遅れてしまうおそれがより大きいのかもしれません。まずは身近な自治体に強い関心を持ち、自分のこととして考えること、これが出発点でしょうか。         主税企画官 鑓水 洋 ------------------------------------------------------------------ 2 税制をめぐる最近の動き   下記のとおり、税制調査会が開催されました。  【4月13日(金)】   第7回企画会合・第2回調査分析部会合同会議   ・海外調査(欧州)報告、委員からのプレゼンテーション   【4月23日(月)】   第8回企画会合・第3回調査分析部会合同会議   ・有識者からのプレゼンテーション、委員からのプレゼンテーシ    ョン、経済財政諮問会議への報告について   ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。    http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm ------------------------------------------------------------------ 3 元主税局職員コラム ~イソップと政策 政府のお仕事(その1)~  4月になり、役所にも新人たちが入ってきました。彼らに話した話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  昔、ある村に、親子と痩せたロバがいました。ある日、ロバを手放すため、父親と子供は、町に向かいました。二人と一頭がとぼとぼ並んで歩いていると、村人が笑いました。「馬鹿だなあ。せっかくロバがいるのに、歩いているなんて!」。「なるほど」と二人は合点して、ロバに乗っかって行きますと、今度は、「かわいそうに。あんなに痩せたロバを二人でこき使うなんて!」という声がしました。そこで、父親がロバを降り、子供だけを乗せて歩きますと、「ひどいものだ。子供を甘やかせて!」。今度は、子供を下ろして、父親が乗っかっていきますと、「ひどいものだ。小さな子を歩かせて、自分だけ楽をするなんて!」。仕方なく、とうとう親子は、ふうふう言いながら、ロバを二人でかついで行ったということです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  長く役所で仕事をしていると、このイソップの逸話がいつも頭をよぎります。  たとえば、ひとつの例ですが、「法人税を下げるべきだ」といわれて下げようとすると、「企業優遇ではないか。所得税こそ下げるべきだ。」と言われます。そこで所得税も減税すると財政赤字が増えるので、赤字国債を増やしますと、「ゆるむ財政規律。」。それでは歳出を切ろうとすると、どのような歳出にも受益者はあって、「大事な国民サービスを切るな!」。やむなく税の引上げを検討すると「安易な増税に頼るな!」・・・。  結局何をやっても批判はあり、全員に喜んでもらえるような仕組みは、なかなかありません。しかも、喜んでいる人は声を上げませんから、批判の声しか聞こえません。そのうち、制度に対する批判や不満だけが繰り返され、信頼感が低下すれば、制度の運用にも影響してきます。  人に言われるままにやるだけであれば、楽かもしれませんが、「ロバを担いでいく」ことにもなりかねません。また、よい子になりたければ何もしない(町へロバを連れて行くのをやめてしまう)のもひとつの手ですが、それでは何も変わりません。じっとしていても、結果が見えたあとになって、「だから言ったじゃないか。ロバを町で売ればいいって!」といった声が突如上がることもあります。  結局、税や財政もそうですが、政策の一部だけをあげつらっていても、問題は解決しません。全体をどのようにしたいのか(おじいさんと子供とロバは、結局どうしたらよいのか)、選択肢を並べて、得失をよく比較して考えないと、答は見つからないものです。  しかも、人々の価値観が多様化している今日、意見が異なる人々のあいだで、折り合いを付けることはなかなか容易ではありません。人それぞれ、感情や立場もありますし、常に白黒がはっきりしているものばかりでもありません・・。  しかし、調整なしには、改革を前に進めることはできません。何事も鵜呑みにせず、意見をよく聞いて、自分の頭でよく考えること。そして、全体を見ながら、皆がおさまる「あるべき姿」を模索して、具体案の調整・妥協の説得を行うこと。これは、間にはさまれて批判されることも多い仕事ですが、誰かがしなくてはならない仕事でもあります。  あまり表には見えませんが、霞ヶ関の仕事には、こういう側面が含まれています。            主計局主計官(元主税局広報企画官) 藤城 眞   ------------------------------------------------------------------ 4 諸外国における税制の動き  ~「少子化対策」としては何もしない国フランス、あるいは自由の母国~  フランスの出生率が回復傾向にあり、昨年の数字が2を超えたというのは大きなニュースとなったので、ご存じの方も多いと思います。我が国ではこれが1.26であり、あちらでもこちらでも少子化対策が話題となっています。さぞかし、フランスでは立派な少子化対策が採られているものと思っている方も多いでしょう。  私は、3月中旬に、政府税制調査会の海外調査団の一員としてフランスに赴き、税制を中心とした少子化対策について調査してきました。しかし、フランスの当局者との意見交換は、いま一つかみ合わないものでした(もちろん、事前の調査からそうなることは予想していましたが)。彼らに対して、「少子化対策としてどんなことをしているのか」という問いかけを投げると、答は「何もしていない」となるのです。税制に関するものだけではありません、予算措置としても少子化対策としては何もしてないと主張するのです。  そんなはずはないと思われるでしょう。実際、手厚くきめ細かい給付制度、託児所や認定保育ママのような充実した保育サービスなど、出生率の上昇に役立つ多種多様な施策があります。また、フランスの家族関係の歳出規模をみると、対GDP比で約3%と、わが国の0.74%をはるかに上回ります。今回の出張でも税制上の措置を中心にいろいろな説明を聞いてきました。しかし、フランスの当局者が、そうした説明の中で繰り返し主張したことは、「これらは少子化対策を政策目的としたものではない」、子どもを産むかどうかを含め、どのような家族を持つかは個人の自由であるということでした。  政府ができることは、子どもを持つかどうか、また持ったとして自宅で育てるか、預けて仕事をするかといった多様な選択肢のうち、どれを選んでも特に不利益とならないような制度を提供すること、あくまでも個人の自由を保障することだけだということでした。そして出生率の上昇については、それ自体は目的ではなく、結果でしかないと強調していました。  建前論かもしれません。しかし、保健連帯省の担当者(女性)の目は真剣そのものでした。そんな彼女の説明のうち特に印象に残ったのが次の言葉です。「少子化対策のフォーラムに招待を受けて日本に行った際に、日本の若い女性と話をする機会がありました。仕事をしたいという方がいる一方で、自分は結婚して子供を育てたいと『遠慮がちに』言う人もいました。でも、それも彼女の選択だからそれでいいんですよと言っておきました。」  どこまでも自由の母国フランス、を感じた瞬間でした。  政府税制調査会海外出張報告については、税制調査会のHPをご覧ください。 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/siryou/k7t2kai.htm                  主税局調査課課長補佐 小多 章裕 ---------------------------------------------------------------- 5 編集後記  今月のメルマガは記事が少なかったので、編集後記を長めに書きます(と思ったら、寄稿がありました。ありがとうございます。)。  4月23日の税制調査会で千葉大学の広井教授のプレゼンテーションを聞いていて、子どもの頃から繰り返し読んでいるある本を思い出しました。  N.H.クラインバウムの「今を生きる」という本で、映画にもなっているので、ご存じの方も多いかもしれません。1950年代のアメリカ・ヴァーモントを舞台に、伝統と規律を重んじる学校にキーティング先生(ロビン・ウィリアムス扮する国語の教師)が赴任してきて、子どもたちに、「わが身が息絶えるそのときに、わが人生に悔いなしというために」、自分で物事を考えることの大切さを教えるという話です。子どもたちが自分らしさを模索し自らを表現しようとする姿、子どもたちに真剣に対するキーティング先生の情熱、子どもたちとキーティング先生との間の信頼に心を打たれます。  この本を読むたびに考えさせられるのは、自分が死んじゃうときに自分の人生はまあよかったかなと納得しようと思ったら、自分自身でこれがよいと思う道を考え(そのすべてがそのまま実現したわけでなくても)、いろいろな制約がある中でも自分で人生を決めてきたと言えるかどうかだろうなということです。自分で決めたのだから仕方がないと思える状況にすることが大切だと思うわけです。  経済の成熟化・定常化に適応した「持続可能な福祉社会」という新たな社会モデルの模索についての広井教授のプレゼン(これからの日本の社会保障は基本的に強化が必要であるが、「医療・福祉重点型の社会保障」が妥当と考えていること、「人生前半の社会保障」や「ストックをめぐる社会保障」が重要と考えていることなどを説明されていました。詳しくは、財務省ホームページに掲載されている広井教授のレジュメと、今後掲載される予定の議事録をご覧ください。)を聞いていて、ふとこのことを思い出しました。  どんな社会であっても、その中で、一人一人がこう生きたいと考えられ、その実現を追求できるものであってほしいし、また、税制を含めて、その社会の制度を作るときには、その制度の是非について一人一人が考え、その決定に参画することによって、賛成・反対の意見はあったが自分たちで決めた制度だと言えるようになってほしいと思います。                             (高宮) ---------------------------------------------------------------- ご意見募集のコーナー  政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国民の皆様から、御意見を募集しております。 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm 当メールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。 mailto:mg_tax@mof.go.jp ------------------------------------------------------------------ 税制メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧頂けます。 http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm ------------------------------------------------------------------ その他配信サービスに関する手続は、以下のアドレスでお願いします。  財務省メールマガジンの配信中止・登録内容の変更はこちらでお願いします。 配 信 中 止 → http://www.mof.go.jp/haisin/sakujo1.htm 登録内容の変更 → http://www.mof.go.jp/haisin/henkou1.htm


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