書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

原彬久 『戦後史のなかの日本社会党』

2005年08月20日 | 政治
 日本社会党は1996年1月の64回党大会で社会民主党へと党名を変更して社会主義政党であることをやめた。つまりこの時点で初めて社会理念および政治体制としての民主主義の意義と重要性を明確に認め、それを支持・擁護する立場を取ったということである(それまではそうではなかったことがこの書で事実に基づいて叙述されている)。

 辻元清美女史が社民党の懇請により、大阪10区から社民党公認候補として今度の衆議院選挙に出馬するそうである。
 辻元女史は「日本は北朝鮮に対して植民地支配の補償をしていないのだから拉致被害者を返せというのはフェアじゃない」という持論の持ち主である(注1)。しずやしずしずのおだまきくりかえしむかしをいまになすよしもがな。
 あるいは、党の支持者層を国民のごく一部へ絞り込む方針へ決したのかもしれない。いずれにせよ、コアでディープなファンを確保する方が現在のこの党にとって得策なのは確かである。
 そこで私にアイデアがある。
 北朝鮮による拉致は「日本政府に北朝鮮への食料支援をさせないことを狙いとして、最近になって考え出され発表された事件なのである」云々と、こんどは党の公式見解として堂々と主張するのはどうか(注2)。それから「日本社会党」の党名を復活させる。これはもうコアでディープで、その上最高にエキセントリックで、言うことがないほどの妙手であろう。

(中央公論新社 2000年3月)

(注1)
 正確には以下のとおり。
“こういうこと(北朝鮮との国交正常化を達成してから話し合いで拉致問題を解決するというやり方)を弱腰だと言う人に言いたいのは、「声高に非難して帰ってくるんですか、道が開けるんですか?」ということ。国交正常化の中では、戦後補償が出てくるでしょう。日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして言葉まで奪ったことに対して、北朝鮮には補償を何もしていないのだから、あたりまえの話です。そのこととセットにせずに、「9人、10人返せ!」ばかり言ってもフェアじゃないと思います” (部分)
 (http://www.cafeglobe.com/special/01_nov/girls/g011112.html)

(注2)
 2002年10月はじめまで同党のホームページに掲載されていた北川広和氏(社会科学研究所研究員)の論文「食糧援助拒否する日本政府」より。同論文はもと「月刊社会民主」1997年7月号掲載。
 (http://www6.plala.or.jp/mines-room/NewFiles/diary-sp3.html)