書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

山田慶児 『混沌の海へ 中国的思考の構造』

2017年07月08日 | 自然科学
 ここに収録された論考類のどれも興味深くかつ面白いが、とくには「空間・分類・カテゴリー」(注記によれば初出『展望』1975/10月号)に私としてはまず第一に指を屈する。ただ、その議論は、案外、具体的な論拠には基づいてはおらず(論理展開と行文が証明上必要とするに十分といえるほどにはという意味)、かつその論理(思考)も、また用いる分析概念も、こんにちの近代(=西洋化された)人たる我々のそれ(空間も、時間も、分類・カテゴリーも)である。そこに疑問はなかったのだろうか。著者が末尾で述べる著者自身の結論とはやや異なって、タイトル副題に示される“科学的思考の原初的、基底的な形態”の「科学」は西洋の科学であり、「原初」「基底」ともに、近現代からの評価であろう。

(筑摩書房 1975年10月)