ホラー短編小説(1) 夕焼け

2006-09-16 | 自作小説:読切短編
夕焼け

ピンポン。
ピンポン。
ガシャ、ギー。

安雄じゃないか。どうしたんだ。
ま、まぁ、いいか、ひとり?
なら、上がってくれよ。

そうか、お前、いい奴だな。僕のこと、心配してくれたんだ。
あっ、ノート、ありがとう。
朝起きたら、熱があってさ、体もだるいんで。
大したことはないよ。エヘ。

ああ、知ってるよ。
かわいそうにね。即死だって、、、、えっ、生きてる、、、。
そうか、それは良かった。

そう、偶然なんだ。当たり前だろう、そう、偶然だよ。
先生がさ、僕の前に立ってたんだよ。
信号は赤だった。
そうなんだよ、ノイローゼかな?
真っ赤だったのに、先生が、フラフラっと飛び出してさ。
がーーーーん、だよ、ウフ。

ショック、何が?
ああ、先生ね。先生か。確かに、信号は真っ赤だったけどね。
でも、そんなことどうでも、いや、慣れてるから平気だよ。
おかさんがさ、旅に出ちゃたんだよ。
それでさ、休んだのは。
留守番は、大変だよ、まったく。
ああ、風邪もひいてるよ。熱もあるし。
それで、大変なんだよ。

何か、飲む?
コーヒーでいい?
おかさーーーん、コーヒー。
おかあさーーーん。
いないのかな?
忘れてたよ。旅にでたんだっけ。
僕が作るから、ちょっと、待って。

何処に行ったのかな?
昨日、”旅に出たい”って言ってたから、どうぞって、見送ってあげたんだ。
その後を追って、おとうさんも旅に出たんだ。
僕を置いてだよ。ちょっとひどいよね。
でも、二人、出会えるといいな。

学校でおもしろいことあったかい?
先生、あんなやつのこと、どうでもいいよ。
過ぎたことだよ。
きっと、今頃は。

まあ、待てよ。
そうだ、面白い事件があったんだよ。
テレビでさ、やってたんだけどね。
14才の少年Aがさ、少年Aって、いい響きだな。まるで、ヒーローだ。
そのAがね、おかあさんの目玉を食べちゃったんだって。
おかしいだろう。
死んだ?おかあさん?
だから、旅に出たんだよ。
Aのおかあさんのこと?どうでもいいだろう、そんなこと。
それでさ、偉そうな評論家がさ、解説するのさ。
でも、あいつら、何もわかちゃいないんだ。
聞きたいだろう、僕の推理。
まあ、待てよ。推理、聞いていけよ。楽しいぞ。

少年Aは、朝起きたとき、どうもおかしいと思ったんだよ。
でも、なぜおかしいかわからない。
毎日、歌をうたいすぎて、足が痛くなったせいか、なんって思ったんだ。
そして、洗面所で顔を洗って、鏡を見たんだ。
そして、僕は気がついたんだ。
自分の顔を見て、愕然としたんだ。目が二つしかない。

気分でも悪いのか?
これからが、いいところなんだから、我慢しろよ。

Aの顔にはさ、目が4つあったんだよ。
でも、2つしかないんだ。
額と顎に、ひとつづつあったはずなに。
おかあさん、僕の目玉知らない。
おかあさんは、台所で夕食を作ってたんだ。
そしたら、あいつは、忙しいそうに、知らないって、言うんだよ。
あの嘘つき女め。
振り返ったおかあさんの顔には、目玉が2つあったんだよ。
かっとなった僕は、おかあさんから目玉を取り返したんだ。
そして、その後、Aは、トイレに行ったんだ。
ト、イ、レ。いい響きだね。
すごい推理だと思わない。
きっと、おかあさんの作っていた料理は、目玉焼きなんだ。
おかしいよな。

この事件、知らないの?
新聞にもデカデカと出てたよ。
ちょっと、待ってて、探してくるよ。
もう、帰るのか?
もう少し、もう少しだけ。

トイレに行きたくないか?
おかしいな、行きたくなるはずなんだけど。

おお、見てごらんよ。
夕日がきれいだよ。
ほら、真っ赤だ。
空が真っ赤だ。
部屋中、真っ赤だ。

ああ、安雄が悪いんだよ。
トイレにいかないから。
掃除が大変だよ。
全く。

END

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