Sea side memory (11)

2007-01-15 | 自作小説:Sea side memory
君は元気そうに見えた。それが、なぜかしゃくに思え、僕は黙り込んだ。
本当は、君に会えてうれしかった、そのはずだ。
でも、実際に君を目の前にすると、心配していた分、安心し、
逆に、意固地にさせ、素直になれない。一種の羞恥心みたいなものかもしれない。
 ”来てくれて、ありがとう。あなたには話しておかないといけないない気がして。”
 ”話すなら、もっと早くして欲しかった。転校する前にね。”
 ”話したかった、でも、、、、あなたの言うとおりね。ごめんなさい。”
 ”別に謝ることはないさ、ホシにはホシの事情があったってことだろ?”
 ”手紙にも書いたけど、あなたには本当の私を知ってもらいたいと思って。”
 ”手紙?そんなものは知らないよ。ただ、海に来てみたかっただけだよ。”
 ”嘘つかないで。”
 ”本当だよ。たまたま海に来たら、たまたまホシに会った。”
君は、僕の表情を探っていた。
 ”偶然に会ったんだ。ホシはどうして来たんだ?”
 ”嘘ばっかり、手紙みたんでしょう?だから、ここに来たんでしょ。”
僕は、ポケットから君の手紙を取り出した。
 ”手紙って、これ?”
 ”そう。つまらない嘘をつかないで。”
確かに、手紙で指定された時間に、僕はここに来た。
でも、君の身の上を聞きたいわけではない。君に会いたいから来ただけだ。
他愛のない話をしたいだけだ。
気がつくと、僕はライターを取り出し、手紙に火を点けていた。
君は、そんな僕の行動を不思議そうに、そして、少し嬉しそうに見ていた。
 ”こんなものはいらない。俺は、今のホシに会いたい、昔のホシじゃない。”
君の瞳はうるみ、涙がひとすじ頬を伝い流れ落ちた。
初めて見た。君が泣く姿を想像したこともなかった。
そんな僕の視線を恥ずかしく思ったのか、涙を隠すように顔を手で被った。
僕は、君の肩に手を回し、肩の震えが治まるのを待つことにした。
君は僕に寄りかかるように、肩に頭を乗せた。

                        つづく

ランキング参加中
←良かったら、押して下さい

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1/15の収穫 | トップ | アーマード・コア 4 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

自作小説:Sea side memory」カテゴリの最新記事