だせなかったLove Letter:19

2010-06-17 | 自作小説:私小説
いつからだろう。
夜、家に帰ると、僕の家、僕の部屋にS本が来ていることが多くなった。
S本とは、小学校3年の時に知り合った。

僕の通っていた小学校は、2年ごとにクラス替えが行われていた。
そのため、3年生でクラス替えがあり、当然、担任の先生も一新された。
僕のクラスは、大学を卒業したばかりの新人のM上先生が受け持つことになった。
M上先生は、大学時代、空手部に所属しており、そのせいか、男っぽい人だった。
そんな性格が、男子・女子に関係なく好かれ、
それだけではなく、母親の受けもすこぶる良かった。
僕の母親も大変、気に入っていた。
今、思えば、イケメンな人だったと思う。
M上先生は、ことあるごとに空手の面白さを生徒に語った。
その頃、ブルース・リーの“燃えよドラゴン”が公開されたことあり、
世間的にも空前の空手ブームだった。
僕はM上先生に心酔していたこともあり、空手を習いたいと思った。
それを親に告げると、二つ返事賛成し、すぐに、近所にある空手道場を見つけた。
その道場は、家から徒歩10分程度の距離にあるのだが、
その場所は僕の通う小学校とは別の学区だった。
道場に通う子供は、僕の小学校の子はひとりもいなかった。
それでも、僕は、どうしても空手を習いたかった。
それに、僕のクラスメイトに知られることなく、ヒミツにできる。
その時の僕は、そのシチュエーションは、
まるで、アニメのヒーローそのものに思え、
僕のやる気を倍増させた。
見知らぬ人の集団。
そんなところに行く孤独感や恐怖感などは全く感じなかった。
僕には、生まれながらに、新しい世界に憧れる習性があったのかもしれない。
そして、孤独な状況がたまらなく好きだった。
そんな気がする。

その空手道場、そこのボスがS本だった。
彼は小学生にして、黒帯を締めていた。

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