ソウルの空の下

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京都の老舗「いづう」を訪ねて

2016-09-16 22:57:55 | 日記

久しぶりに京都のお話です。火曜の夜から京都に戻って、日本語教材の補充や図書館での調べものなどしましたが、今回の目的は祇園の<いづう>という鯖寿司の名店を訪ねて社長さんにインタビューをすることでした。前回松井酒造さんという酒蔵を訪ねたのに続く第2弾!-かにかくに祇園は恋し-という吉井勇の有名な短歌の石碑が立つ巽橋を渡って花見小路に向かう途中にこの店の暖簾がかかっています。シンプルですね。祇園のど真ん中にこの店構えは粋です。今は息子さんが8代目として店を切り盛りしていますが(綾鷹というお茶のCMに出て有名になられましたね)、7代目のお父さんにお話をうかがいました。延々2時間半にわたってのお話で、とうていここには書ききれませんが、230年ものお店の歴史と伝統を体現していらっしゃるような信念をお持ちの方と見受けました。鯖寿司をネットで検索すると必ず出てくる有田焼の器。これは先代の6代目が懇意にしていた13代目今右衛門という方が、いづうのために特に焼いてくれたものだそうです。そのほかにもいくつか鉢といわれる器を見せていただきましたが、無造作に新聞紙にくるんで保管してあるのが、また歴史あるお店では芸術品も日常生活の中に生きていると思わせるような...この赤い器は食籠(じきろう)と呼ばれる出前品を盛る器です。今は店内でも食べられるように席が設けられていますが、40年前より以前は、お土産と出前専門だったそうです。出前といっても個人宅ではなく祇園のお茶屋さんに届けるということで、これはまた祇園のお茶屋とは何か、京都の花街はどんなものか、なんて話をたどらなくてはなりませんが、そこまではよく知らないので省略。ただ茶屋という貸席で、芸妓、舞妓さんを呼んで料理を食べ、お酒を飲み、しばらくして小腹が空いてきたころに「虫やしない」(京都の言葉でちょっとお腹が減ってきたときにお腹を満たす食べ物という意味だそうです)として鯖寿司を頼んだそうです。社長の言葉ではいづうはお茶屋さんに可愛がられて育ったということで、大切なお客さんであるとともに、祇園の伝統文化を共に担ってきた同士のようなものだそうです。いい言葉ですね!調理場を拝見しました(写真を撮っただけ)。いづうの食材へのこだわりはすごいもので、鯖は決まった漁師さんと専属契約を結び、日本海の一番脂の乗った鯖を厳選。米は江州米という滋賀県産ですが、琵琶湖の湖畔ではなく高い土地で生産された米を(米に含まれる水分が寿司に合うものと合わないものがあるとか)使います。かつてコメ不足でタイ米を食べなくてはならないという時期がありましたが、そのときもこの米屋さんではいづうのために国内米を確保してくれたそうです。さらに酢は京都市内でいづうにしか販売しないという酢屋と終身契約を結んで使っているといいますから、徹底しています。氷で冷やす昔ながらの冷蔵庫を使って鯖を寝かせるなどの製造技術とあいまって、これだけ最善を尽くして作られる鯖寿司だから、一本(2人前)4500円という値段も納得できます。まな板のうえにはできたてのお寿司が。盛り合わせ寿司用でしょうか。カラフルにいろいろな魚が見えますね。これらを包装する紙は、創業当時から使われていたという、うさぎ(創業者が泉屋卯兵衛さんだったので屋号がいづうになり、店のシンボルがうさぎになったとか)に富士山と三保の松原の松をあしらっています。世界景観遺産に登録されたからではなく、日本一というイメージをあらわしたもので、さらにそのうえに季節ごとに違う小ラベルを貼って渡されることになります。社長は私より一つ上でまだまだバリバリの現役と思っていたら、もう店のことは息子さんに任せてあるので、自分の役割はこれまで支えてくれたお客さんや世の中に恩返しをすることだとおっしゃりながら、30くらいの組織、団体(同業者など)で責任ある地位についていろいろな活動をなさっているとか。これまでに鯖寿司も含めてたくさんのことをやり尽してきたという、ご自分の人生に対する自負心が垣間見えたような気がしました。残念ながら今回は鯖寿司を食べそこなってしまいましたが、次の機会に是非。京都を訪ねる旅の次回は銭湯の「錦湯」さんの予定です。

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