なんちゃって日記

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『国民の映画』

2011-04-01 14:02:12 | 日記
昨日の話。

パルコ劇場に『国民の映画』を観に行きました。
2007年の『恐れを知らぬ川上音二郎一座』はチケットを取ったのに観に行けずだったので、やっとこさ三谷幸喜作品をこの目で見る事が出来て宿願叶ったり!!

…だったのですが、結果として楽しいばかりの観劇ではありませんでした。
上演された劇は大変すばらしかったのです。
しかし、非常に残念な事に同行者が「嫌な客」でした。
詳細は書きませんが隣で観劇したワタシは劇に集中したいけれど気になって仕方なかったし、おそらく反対側の隣にいた方や後ろの席の方もそうだったのではないかと思います。
一度は小突いて注意を促したものの声を出せる状況ではないのであまり効果がなく、結局劇の終盤まで同じ状態が続きました。
その人に悪気ないのはわかっているのです。
でもマナー違反には違いありません。
ワタシは、劇場は楽しい時間を共有する場だと考えています。
「お客様は神様です」なんて言葉も耳にしますが、「お客様」はやはり「お客様」です。
そして「お客様」とは、楽しい時間を共有できる人の事だと思います。
もし「神様」だというのならば、「神レベルのお客様」であってほしいものです。
昨日のワタシの同行者の行動が(「神様」どころか)「お客様」のものではなかったのが、他のお客様に申し訳なかったし、この上なく残念でした。
いい公演(長くなるので定義はここでは書きません)だったからこそ「いいお客様」でありたかったなと思います。

暗い気持ちになる書き出しになってしまいましたが、劇は非常にすばらしく観に行けてよかったなぁと思っています!
以下にネタバレ防止スペースを取って感想を書いていきますっ。















ワタシは幅広い世代が一緒に楽しく観られる三谷作品が大好きです。
程良く親しみやすい作風というのでしょうか。
作品の感想が「好き嫌い分かれるよね」となるものってたくさんあって、これはこれでいいのですが、こう言わしめないのが三谷作品の一番スゴいところ!…というのがワタシの認識です。
ユーモアもたっぷりで、普段映画や演劇をあまり観ない人でも(比較的?)飽きずに観られますよね(たぶん)。
それが今回はそうではありませんでした。
パンフレットを読むと三谷さんご自身も「挑戦」と仰っていますね。
良い悪いは別として、あちらから歩み寄ってくれるような親切さ・サービス精神はいつもの30%オフ、といった印象でした。
(この辺りが同行者が「嫌な客」になってしまった原因の1つなのかも…。)

作り慣れていない構成のせいか、いつものテンポのよさも感じられずでした。
これもまたご本人がパンフレットのインタビューで「(笑)」付きで語っておられますが、本当に第一幕が登場人物の紹介だけ。
登場人物の人となりが伺えるエピソードばかりだし、どれも演劇らしくて楽しくはありましたが、いかんせん長いです。
ワタシは開演前にパンフレットのあらすじを読んでいたので「あれ?まだ本題に入らないのか??」と思っているうちに第一幕が終わってしまいました。
フライヤーやHPにも確かあらすじが出ていたと思うのですが、もうちょっとこの辺りは工夫があってもよかったのでは…。

このように感じた第一幕を受けての第二幕はスゴかったです。
いよいよ本題の「国民の映画を作る!」といった展開になっていきます。
従来の三谷作品らしい映画づくりの再現シーンが非常に楽しかったです。
それぞれにわがままを言いだす様子から登場人物の人間らしさが感じられて、おかしいやら微笑ましいやら。
ですが、いつしか「ああ、こういう人なのね」と理解したはずの登場人物が「悪魔の所業」としか言えない残酷な行為に走って行くのです。
それが明らかになる場面では、すとんと劇場内の空気が重くなったのを感じました。
恐ろしいけれど人間てそういうものなんだ、と。

なんとも考えてみたいテーマをたくさん内包した作品でした。
ラストシーンでは、ナチスの党員とユダヤ人が一緒に映画を観ます。
この2人の関係とは?
登場人物たちは何を思っていた?
この作品における「映画」とは?
このシーンだけでも考えてみたい事が次々に出てきます。

役者さんでは今井朋彦さんが非常に良かったです。
舞台ではホント二枚目!(笑)
お声が群を抜いて耳に心地よかったです。
シルビア・グラブさんはハマり役過ぎてっ。
ザ・ミュージカルスターだなと思いました。
そして、キーパーソンたる小林隆さんの演技からは、本当に一度にたくさんの感情が伝わってきて圧倒されました。
特に印象強かったのはこのお三方ですが、どの方ももれなくよかったです。
(今回は実在した人物の役がほとんどだったのですが)さすがというべきか、どの登場人物も「ああ、こういう人いるよね!」と感じられる説得力がありました。

初めて三谷作品を劇場で観ましたが、ワタシが一番好きだなと思う舞台と客席の距離感でした。
見入ってしまうのだけど、どこか客観的な感じ。
適度に観客まかせの情報量。
伝えたい事を人を死なせたりキツい言葉(差別用語等)を用いずにエピソードで描いていくく三谷幸喜作品が、ワタシはやはり好きです。
いつもの作品とちょっと違ってはいましたが、期待通りで期待以上でした!