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選挙制度(連載3):小選挙区比例代表併用制

2009年07月05日 18時33分06秒 | 政治

 この連載2でみたように、小選挙区制は「1党独裁」「死票」「1票の格差」「区割りの公平性」などの点で欠点があり、比例制は「候補者の『顔』が見えにくい」「選挙区が広く金がかかる」などの欠点があると言われている。


 これらの欠点を補うために、小選挙区比例代表並立制が考案されたとされている。似た制度で、ドイツで採用されている小選挙区比例代表併用制がある。名称は酷似しているが、制度の内容はかなり違うらしい。


「並立制」と「併用制」


 日本で採用されている「並立制」と、ドイツで採用されている「併用制」の違いを比べてみると、次のような感じになる。


  


 現在の「並立制」は、どうも小選挙区制と比例代表制の欠点を両方とも残している制度に見えてしまう(小選挙区制の欠点は、多少は緩和されているとはいえ)。むしろ「併用制」の方が、両者の欠点をカバーできる制度のようにみえる。


 「併用制」の採用を訴えるページがあった。 前回の総選挙に当てはめるとどうなるかという比較も載っているので、紹介しておく。


制度の修正点


 制度を採用するに当たって、なるべく既存の制度の欠点を補うという観点から、いくつかの修正点を提案したい。


定数配分


 小選挙区と比例代表区の定数配分がよく問題にされているが、併用性の場合は、定数配分はあまり気にする必要はなくなる(はず)。単純にいえば、ドイツのように半々にするということだろうが、要するに、小選挙区での「死票」や「1票の格差」分が、比例代表区で是正されればいいので、240+240でも、現行の300+180でも、結果として大差はないだろう。(ただし、比例区の定数が少なすぎると是正効果が利きにくくなるので、ある程度の議席配分は必要)


比例区の当選議席の配分


 ドイツでは、比例区の当選議席は、各州に配分され、各州の(各政党の)候補者名簿に従って議席が決定されるらしい。このやり方は一考に値する。比例区の欠点として挙げられている、「候補者の『顔』が見えにくい」「選挙区が広くて金がかかる」といった点が、ある程度緩和されることが期待できるからだ。


 日本の場合なら、衆議院の選挙ブロックに割り当てるというやり方もありうるが、選挙区をできるだけ小さくした方がこれらの欠点の解消には有効なので、当選議席を都道府県ごとに配分する方がより優れているのではないだろうか。


 ただし、そのためには、小選挙区の定数の割り振りが、都道府県ごとの選挙人(有権者数)に対して、あまり大きな較差が生じていないことが前提条件となる。


候補者か政党・政策か


 有権者が投票するに際して、候補者の人柄や実績で選ぶべきか、政党や政策で選ぶべきかという議論がよく起こっている。とくに、日本の比例制では個人の立候補が認められていないこともあって、よく話題になるのではないだろうか。


 単純にいえば、どちらの選び方もありうるので、選挙制度でどちらかに固定しない方がいいのだろう。とくに、比例制で、投票者が、政党と個人のどちらでも自由に選べるようになっていれば、この議論も決着がつくと思われる。


 比例代表区に個人の立候補を認め、1議席分相当以上の得票があれば議席を割り振る(当選とする)ということにするだけでも、この問題の半分以上は簡単に解決できるはず。さらに、政党に対して投票したくはないが、政党(候補者名簿)内の特定の個人に対してなら投票したいという選挙人もいるだろう。このような投票も、比較的簡単な方法で受け入れ可能になる。


 日本の比例制では、ドント方式が採用されている。各政党の得票数を1、2、3……で割った数字が、名簿順位1位、2位、3位……の候補者の「得票数」として割り当てられ、この数字の大きい順に当選が決まっていくというシステム。つまり、名簿に掲載された各候補者には、擬似的な得票数が割り当てられるというもの。


 そこで、有権者がある政党のある候補者個人に投票した場合も、ドント方式で割り当てられた擬似得票数に単純に上乗せすれば、各候補者の得票数に算入することができる。


 よく、比例名簿にタレントなど有名人を載せて、政党全体の得票を稼ごうという話があり、批判されている。この方法なら、その有名人個人に投じられた票は政党の他の候補には分配されないので、抑制効果も期待できるだろう。


 このような投票方法は、北欧の比例代表制で採用されているという話を聞いたこともあるのだが、今回調べた範囲では確認できなかった。


小政党乱立


 以上見てきたような制度にすれば、小選挙区制・比例代表性それぞれの欠点とされている点も、おおむねカバーできることになるはず。残るのは、「小政党が乱立して政権が不安定になる」という点だけだということになる。


 開き直って言えば、有権者の意見が割れているのだったら、国会での議論も割れてしまったとしても、むしろ、「国民の声」がそのまま反映されているとも言える。「政権交代」という意味で言えば、選挙のたびに毎回のように政権政党(の組み合わせ)が変わる可能性が高くなると考えれば、むしろ、政権交代がよりスムーズに行われるとも言えなくもない。


 個人的には、いっそのこと、大臣(と副大臣)も、得票数(議席数)に比例して配分してしまってもいいのではないかと思っている。委員会の委員長なども、そういう配分にして運営されているのだから、あながち無理な注文とは言い切れないのではないだろうか。


 ともあれ、この点に関しては、どうやら選挙制度だけでは解決できそうにないので、別の機会に譲りたい。


(以上、この項、完結)


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1 コメント

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Unknown (おとろし)
2009-07-22 00:46:48
非常にわかりやすかったです。有難うございました。
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