ひまじん倶楽部 Himagine Club

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「障害者」の表記あれこれ

2009年08月08日 20時57分42秒 | かず、ことば

 「障害者」の表記について、いろいろと議論があるようだ。障害者の「害」の字が、障害者に害があるようで避けたいということで、違う表記にしようという動きだ。一時期は、「障碍者」という表記が増えたが、最近は、「障がい者」とする動きになってきたように見受けられる。


 この動きを推進する側の主張としては、たとえば、NPO法人 沖縄バリアフリー研究会の「障害者.障碍者.障がい者」という一文に代表される。「障がい者」ではなく、「障碍者」と書くべきだとする主張もある(「『障がい者』という表記はおかしくありませんか?『障碍者』と書きましょう。」)。


 これに対して、「障害者」が「障害となる者」という日本語の解釈自体が誤りだとする説もある(「障害 伝統的には『障礙』『障碍』と書くのが正しい」)。また、常用漢字で「障害者」としただけで、常用漢字外の文字の使用を禁止されたわけではないので、「障害者」「障碍者」「障礙者」のいずれを使っても問題ないはずだとする説もある(通信用語の基礎知識「障がい者」)。これらは、いずれも、「障がい者」というひらがな書きに対する反論だ。


 私の調べたところによると、日本語で「障害」の英訳は(一般的には)"handicap"(ハンディキャップ)となり、その中国語(簡体字)訳は「障碍」、台湾語訳(繁体字)が「障礙」となっている(たとえば、Yahoo! BABEL FISH による)。


 上で紹介した「『障がい者』という表記はおかしくありませんか?『障碍者』と書きましょう。」の中に、それぞれの表記の割合をYahoo! と Google の検索データで比較した表がある。このデータによると、「障害者」に対して、それ以外の表記はかなり少ないようだ。「障碍」「障礙」という表記は、中国・台湾でもありうると考えると、やはり圧倒的に「障害者」という表記が(インターネット上では)支持されていることが伺われる。一方、日本独特の新しい表記である「障がい者」も、少ないとはいえ、一定程度の広がりはあるようだ。


 日本の自治体では、「障がい者」という表記を採用するところがいくつか出てきているとのことだが、この動きが主流になるというほどの勢いでもなさそうだ。「障害者」の表記、最終的な落ち着き先が決まるまでには、まだ時間が必要なようだ。


 


カタカナ語の言い換えは中国の陰謀?

2009年08月01日 00時05分38秒 | かず、ことば

 かつて、小泉首相が、官庁の作った報告書などにやたらカタカナ語が多いことを批判して、言い換えを指示したことがある。その後、国立国語研究所が四次にわたって「『外来語』言い換え提案」を公表し、まとめて「総集編」(PDF)として公表した。


 報告書のタイトルは「外来語」だが、対象となっているのはすべてカタカナ語、しかも英語由来の言葉がほとんどだ。そして、言い換え語として挙げられているものの多くは漢字熟語、つまり中国由来の「外来語」だ。鬼畜米英、満蒙開拓という、第二次世界大戦を髣髴とさせる、というのは言い過ぎか。



 漢字は中国由来だが、漢字熟語は必ずしも中国語ではないという見解もありうる。中国の正式国名、中華人民共和国のうち、「人民」も「共和」も日本で作られた熟語だ。しかし、漢字の音読みを基本とした熟語は、やはり「中国語風漢字熟語」と言っていいだろう。
 ちなみに、「言い換え提案」の中に挙げられているカタカナ語の中にも、日本で作られたものも少なからずある(アイドリングストップ、スケールメリット、デイサービス、ノンステップバス、メディカルチェックなど)。これらも、「英語風カタカナ語」とでも言うべきだろう。


 この「言い換え提案」の最大の問題点は、「分からないカタカナ語」を「中国語風漢字熟語」に置き換えれば分かるようになると信じている、あるいは少なくともそう思わせるような提案内容になっているというところにある。しかし、たとえば、「コンセプト」という言葉の意味が分からない人(たとえば小学生)に「基本概念」と言い換えれば分かるようになるだろうか。「コンセプト」が分からなければ、たとえば「大元になる考え」とでも言った方が、まだ伝わりやすいのではないか。


 一般的に、官僚の文章は、訳の分からないカタカナ語が多いのも事実だが、分かったような(それでいて実は分からない)漢字熟語も極めて多い。これに対して、分かりやすい文章と言われるものは、大和言葉や和語と言われる言葉が多く含まれている。ある人は、「ひらがな言葉」という言い方をしていた。


 たとえば、「コミットメント」を「確約」に言い換えるよう提案されている。そんな漢字熟語を使うより、「指きりげんまん」とでもしてみたらどうだろうか。「コミットメント」の英語圏での意味合いは、契約などによる約束というよりも、より本質的な、「神との約束」、あるいは道義的な誓いということらしい。そう考えれば、「指きりげんまん」という言い換えも、あながち外れてはいない気がする。「言い換え提案」では、別の言い換え例として、「公約」を挙げているが、政治家の公約はウソっぽいので、あまり適した言い換えごとは言いがたい。
 「コミットメント」のもうひとつの意味として「関与」が挙げられている。こちらにも別の言い換え例があって、「かかわり」とされている。そういう易しい言い方を思いつく頭があるのなら、こちらの方をメインに押し出して欲しかった。 


 数年前、文部科学省のプロジェクトで、「ユビキタス情報社会」(カタカナ語と漢字熟語の組合せだぁ)を研究する「やおよろずプロジェクト」というのがあった。「ユビキタス」を、(コンピューターの機能が)そこかしこにあるということから、「やおよろず(八百万)の神」という日本古来の信仰に当てはめたネーミングだ。これなどは、「ユビキタス」という訳の分からない新しい言葉(かつ新しい概念)をうまく言い表したと言えるのではないか。
 ちなみに、「言い換え提案」には「ユビキタス」はない。「やおよろず」以上のうまい言い換えが思いつかなかったということだろうか。


 もうひとつ、「ユニバーサルデザイン」も、「ユニバーサル」を「みんな仲良し」とでもして、「みんな仲良しのものづくり」とか「みんなが仲良しになれるものづくり」とでも言った方が夢があると思うのだが。
 「言い換え提案」では、「万人向け設計」「誰にでも使いやすい設計」となっている。もう一息!


数字の「区切り」

2009年07月11日 13時24分22秒 | かず、ことば

 まず、この数字を見ていただこう。



88,548,001,321,000


 平成21年度の一般会計(歳出)だ(下3桁は丸めてある)。桁数が大きすぎて、数字の位すら分からない。桁数が大きい以外に、もうひとつ分かりにくい理由がある。それは、数字の区切りが「3桁ごと」になっていることだ。


 数字を3桁ごとに区切るのは、欧米の習慣で、たとえば英語では、88トリリオン(trillion)、548ビリオン(billion)、001ミリオン(million)、321サウザンド(thousand)となるから、日本人が読むよりはまだ分かりやすいのだろう。(英米圏の数字


 一方の日本語では、数字の桁は4桁区切りになっている。同じ数字を4桁区切りにしてみると次のようになる。


88548001321000

 これなら、かなり分かるのではないだろうか。(数字の桁が大きすぎて、金額として実感がわかないことに変わりはないが)


 略号にするなら、このままアポストロフィを使えないか。



88'5480'0132'1000


 すべて「半角英数字」で表せるので、たとえば表計算ソフト扱えるようにすることも、比較的簡単なのではないだろうか。


 ということで、「数字4桁区切り」を提唱したいと思うのだが、いかがだろうか。