「障害者」の表記について、いろいろと議論があるようだ。障害者の「害」の字が、障害者に害があるようで避けたいということで、違う表記にしようという動きだ。一時期は、「障碍者」という表記が増えたが、最近は、「障がい者」とする動きになってきたように見受けられる。
この動きを推進する側の主張としては、たとえば、NPO法人 沖縄バリアフリー研究会の「障害者.障碍者.障がい者」という一文に代表される。「障がい者」ではなく、「障碍者」と書くべきだとする主張もある(「『障がい者』という表記はおかしくありませんか?『障碍者』と書きましょう。」)。
これに対して、「障害者」が「障害となる者」という日本語の解釈自体が誤りだとする説もある(「障害 伝統的には『障礙』『障碍』と書くのが正しい」)。また、常用漢字で「障害者」としただけで、常用漢字外の文字の使用を禁止されたわけではないので、「障害者」「障碍者」「障礙者」のいずれを使っても問題ないはずだとする説もある(通信用語の基礎知識「障がい者」)。これらは、いずれも、「障がい者」というひらがな書きに対する反論だ。
私の調べたところによると、日本語で「障害」の英訳は(一般的には)"handicap"(ハンディキャップ)となり、その中国語(簡体字)訳は「障碍」、台湾語訳(繁体字)が「障礙」となっている(たとえば、Yahoo! BABEL FISH による)。
上で紹介した「『障がい者』という表記はおかしくありませんか?『障碍者』と書きましょう。」の中に、それぞれの表記の割合をYahoo! と Google の検索データで比較した表がある。このデータによると、「障害者」に対して、それ以外の表記はかなり少ないようだ。「障碍」「障礙」という表記は、中国・台湾でもありうると考えると、やはり圧倒的に「障害者」という表記が(インターネット上では)支持されていることが伺われる。一方、日本独特の新しい表記である「障がい者」も、少ないとはいえ、一定程度の広がりはあるようだ。
日本の自治体では、「障がい者」という表記を採用するところがいくつか出てきているとのことだが、この動きが主流になるというほどの勢いでもなさそうだ。「障害者」の表記、最終的な落ち着き先が決まるまでには、まだ時間が必要なようだ。