ひまじん倶楽部 Himagine Club

あまり役に立たない(かもしれない)ことにミョーに一生懸命になるページです。

世界の選挙権年齢

2009年08月13日 17時53分03秒 | 政治

 日本でも、選挙権年齢を18歳に引き下げるべきだという論調が強くなってきている。世界の趨勢は18歳選挙権だそうだ。そこで、世界の選挙権年齢を調べてみた。


 列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union: IPU)に加盟国の議会ホームページへのリンクがあり、そこで調べることができるのだが、都合のいいことにこれを表にまとめた論文があった。



井田正道「18歳選挙権に関する考察」明治大学学術成果リポジトリ(明治大学図書館)



 この表には168カ国の選挙権・被選挙権の年齢がまとめられている。変わったところをいくつか紹介しておく。オーストリアでは、1月1日現在で満18歳が選挙権、満19歳が被選挙権を得る(表では、実際の選挙時の年齢として19歳、20歳となっている)。ボリビアの選挙権は21歳だが、結婚した場合は18歳となる。イランでは、被選挙権は26歳~75歳となっており、「後期高齢者」は被選挙権を失う。


 列国議会同盟に加盟していない(と思われる)中国や台湾、ミャンマー、アンマン、ブータンなどは、この表には載っていない。こちらの論説によると、中国は革命直後に18歳以上の普通選挙を実施したとあるが、それ以降は普通選挙自体が実施されていないようだ。


 上記の表を、さらに年齢別にまとめなおしてみた。


  


 選挙権年齢は、18歳という国が圧倒的に多い。被選挙権はいろいろな考え方の国があるようだが、18歳、21歳、25歳の国が多い。日本は一応25歳の国に分類されているが、参議院議員と都道府県知事は30歳。


 選挙権と被選挙権の組み合わせを見ると、やはり、選挙権18歳で、被選挙権が18歳・21歳・25歳という国が多い。20歳-25歳という国は、日本を含めて2カ国と、超マイナーだ。



 仮に、選挙権年齢を引き下げた場合、どこの政党に有利になるのだろうか。政治オぴみオンの「政党別の支持率/不支持率」から類推してみた。



 他の世代(20代以上)に対して10代(15~19歳)の支持率が高かったのは、自民党と公明党。逆に10代の支持率が低かったのは、民主党・共産党・国民新党という結果だ。民主党の支持率は、20歳以上では自民党を上回っているのだが、10代の支持率は自民党を下回っている。


 18歳選挙権となった場合の得票率に直結するとは限らないが、18歳選挙権を支持している(らしい)民主・共産の10代支持率が低いというのが興味深い。


マニフェスト比較

2009年08月02日 21時36分22秒 | 政治

 衆議院が解散になり、各政党からマニフェストが出てきた。マニフェストのフォーマットがある訳でもないので、各政党により書き方がまちまちで、比較が単純ではないというのが難点だ。そこで、「ひまじん倶楽部」としては、マニフェストのエッセンスを比較してみようと試みた。


 といっても、複雑な話ではなく、各政党のマニフェストの「スローガン」「基本政策」「最優先施策」を並べてみた。「スローガン」は、各マニフェストの見出しに相当する部分。「基本政策」は、現状認識や目指すべき方向性などを述べた冒頭部分。「最優先施策」は、単純に各マニフェストの最初の方に掲載されている政策とした。



 参照した各党のマニフェストは、次のとおり。



 


選挙制度(連載3修正):都道府県の議席配分

2009年08月01日 17時49分22秒 | 政治

 選挙制度(連載3)で、比例区の都道府県への議席配分を試算したが、山梨、佐賀、徳島、高知、福井、島根、鳥取の7県への配分がゼロになっていた。これでは、この7県の選挙民の比例代表区への投票が生きなくなってしまうとの指摘を受けた。


 自県への議席配分がゼロでも、比例代表区への投票は全体として議席配分に生かされているのだが、確かに自県に配分されないというのは好ましくはないだろう。しかし、比例区の定数が180のままでは、すべての建に議席を配分するのは難しい。そこで、ドイツ式に、小選挙区・比例区の議席配分を同数にする(つまり、240議席ずつにする)という仮定で配分をやり直してみた。


 議席の割り当ては、まず小選挙区の(都道府県単位の)議席配分をドント方式で決め、続いて比例区の議席配分を同じくドント方式で決めた。つまり、全480議席のうち、1議席目~240議席目を小選挙区に割り当て、241議席目~480議席目を比例区に割り当てた。この結果、すべての県の小選挙区、比例区に配分することが可能となった。



選挙制度(おまけ):議席配分シミュレーション

2009年07月24日 22時55分55秒 | 政治

 選挙制度を、現在の小選挙区比例代表並立制から小選挙区比例代表併用制に転換することを提案した。



選挙制度(連載1):民意の集約と反映
選挙制度(連載2):小選挙区制と比例代表制
選挙制度(連載3):小選挙区比例代表併用制


 小選挙区制と比例代表制の長所と欠点を比べたところ、どうやら併用性がいちばん長所を生かしつつ短所をカバーできそうな制度だということになりそうだ。


 そう言っている間に、衆議院も解散になったので、提案の併用性を元に前回の選挙結果に当てはめてみた。



 前回の総選挙は、いわゆる「郵政選挙」で、小泉マジックの絶頂だったと言っていい「ブーム」が巻き起こった。その結果、小選挙区の300議席に対して、比例区の180議席では「調整」が完全には利かなかった。得票率に応じた議席配分にするには、ドイツのように小選挙区と比例区の議席配分を1:1程度にする必要があるのかもしれない。


 それでも、現状の並立制に比べると、かなり「公平」な議席配分になっている。


 もうひとつの提案要素である、比例得票議席の都道府県への割り振りも試算してみた。こちらは、各都道府県の有権者数を元に、議席配分方式と同様にドンと方式で都道府県への議席を配分してみた。


 こちらの方は、まずまずうまく配分できたのではないだろうか。都道府県単位で見た「1票の格差」も大幅に改善されている。おりしも、「地方分権」が話題に上っている。都道府県への議席配分というのも、意外と捨てたものではないのかもしれない。



 


選挙制度(連載3):小選挙区比例代表併用制

2009年07月05日 18時33分06秒 | 政治

 この連載2でみたように、小選挙区制は「1党独裁」「死票」「1票の格差」「区割りの公平性」などの点で欠点があり、比例制は「候補者の『顔』が見えにくい」「選挙区が広く金がかかる」などの欠点があると言われている。


 これらの欠点を補うために、小選挙区比例代表並立制が考案されたとされている。似た制度で、ドイツで採用されている小選挙区比例代表併用制がある。名称は酷似しているが、制度の内容はかなり違うらしい。


「並立制」と「併用制」


 日本で採用されている「並立制」と、ドイツで採用されている「併用制」の違いを比べてみると、次のような感じになる。


  


 現在の「並立制」は、どうも小選挙区制と比例代表制の欠点を両方とも残している制度に見えてしまう(小選挙区制の欠点は、多少は緩和されているとはいえ)。むしろ「併用制」の方が、両者の欠点をカバーできる制度のようにみえる。


 「併用制」の採用を訴えるページがあった。 前回の総選挙に当てはめるとどうなるかという比較も載っているので、紹介しておく。


制度の修正点


 制度を採用するに当たって、なるべく既存の制度の欠点を補うという観点から、いくつかの修正点を提案したい。


定数配分


 小選挙区と比例代表区の定数配分がよく問題にされているが、併用性の場合は、定数配分はあまり気にする必要はなくなる(はず)。単純にいえば、ドイツのように半々にするということだろうが、要するに、小選挙区での「死票」や「1票の格差」分が、比例代表区で是正されればいいので、240+240でも、現行の300+180でも、結果として大差はないだろう。(ただし、比例区の定数が少なすぎると是正効果が利きにくくなるので、ある程度の議席配分は必要)


比例区の当選議席の配分


 ドイツでは、比例区の当選議席は、各州に配分され、各州の(各政党の)候補者名簿に従って議席が決定されるらしい。このやり方は一考に値する。比例区の欠点として挙げられている、「候補者の『顔』が見えにくい」「選挙区が広くて金がかかる」といった点が、ある程度緩和されることが期待できるからだ。


 日本の場合なら、衆議院の選挙ブロックに割り当てるというやり方もありうるが、選挙区をできるだけ小さくした方がこれらの欠点の解消には有効なので、当選議席を都道府県ごとに配分する方がより優れているのではないだろうか。


 ただし、そのためには、小選挙区の定数の割り振りが、都道府県ごとの選挙人(有権者数)に対して、あまり大きな較差が生じていないことが前提条件となる。


候補者か政党・政策か


 有権者が投票するに際して、候補者の人柄や実績で選ぶべきか、政党や政策で選ぶべきかという議論がよく起こっている。とくに、日本の比例制では個人の立候補が認められていないこともあって、よく話題になるのではないだろうか。


 単純にいえば、どちらの選び方もありうるので、選挙制度でどちらかに固定しない方がいいのだろう。とくに、比例制で、投票者が、政党と個人のどちらでも自由に選べるようになっていれば、この議論も決着がつくと思われる。


 比例代表区に個人の立候補を認め、1議席分相当以上の得票があれば議席を割り振る(当選とする)ということにするだけでも、この問題の半分以上は簡単に解決できるはず。さらに、政党に対して投票したくはないが、政党(候補者名簿)内の特定の個人に対してなら投票したいという選挙人もいるだろう。このような投票も、比較的簡単な方法で受け入れ可能になる。


 日本の比例制では、ドント方式が採用されている。各政党の得票数を1、2、3……で割った数字が、名簿順位1位、2位、3位……の候補者の「得票数」として割り当てられ、この数字の大きい順に当選が決まっていくというシステム。つまり、名簿に掲載された各候補者には、擬似的な得票数が割り当てられるというもの。


 そこで、有権者がある政党のある候補者個人に投票した場合も、ドント方式で割り当てられた擬似得票数に単純に上乗せすれば、各候補者の得票数に算入することができる。


 よく、比例名簿にタレントなど有名人を載せて、政党全体の得票を稼ごうという話があり、批判されている。この方法なら、その有名人個人に投じられた票は政党の他の候補には分配されないので、抑制効果も期待できるだろう。


 このような投票方法は、北欧の比例代表制で採用されているという話を聞いたこともあるのだが、今回調べた範囲では確認できなかった。


小政党乱立


 以上見てきたような制度にすれば、小選挙区制・比例代表性それぞれの欠点とされている点も、おおむねカバーできることになるはず。残るのは、「小政党が乱立して政権が不安定になる」という点だけだということになる。


 開き直って言えば、有権者の意見が割れているのだったら、国会での議論も割れてしまったとしても、むしろ、「国民の声」がそのまま反映されているとも言える。「政権交代」という意味で言えば、選挙のたびに毎回のように政権政党(の組み合わせ)が変わる可能性が高くなると考えれば、むしろ、政権交代がよりスムーズに行われるとも言えなくもない。


 個人的には、いっそのこと、大臣(と副大臣)も、得票数(議席数)に比例して配分してしまってもいいのではないかと思っている。委員会の委員長なども、そういう配分にして運営されているのだから、あながち無理な注文とは言い切れないのではないだろうか。


 ともあれ、この点に関しては、どうやら選挙制度だけでは解決できそうにないので、別の機会に譲りたい。


(以上、この項、完結)


選挙制度(連載2):小選挙区制と比例代表制

2009年06月15日 20時38分18秒 | 政治

1.小選挙区制と比例代表制の長所と短所


まず、よく言われている小選挙区制と比例代表性の長所と短所をまとめてみた。



参考にしたサイト:





選挙制度の論理シミュレーションは、これらの長所・短所を考慮して、長所を生かしつつ、なるべく短所を解消ないしは緩和することを目指すべきだろう。


(以下、続く)


 


選挙制度(連載1):民意の集約と反映

2009年06月14日 17時50分53秒 | 政治

はじめに


日本の政界では、衆議院の議員定数削減が話題になっているらしい。自民党は50減、民主党は80減を主張しているとのこと。いずれも、比例区の定員削減(現行は180)。


現行の、小選挙区比例代表並立制は、細川内閣のときに成立した。そのときの選挙制度に関する最大の政治課題は、最高裁判所が「1票の格差」を違憲としたことで、違憲状態をいかに解消するかということだった。(参考:議員定数不均衡訴訟


それが、いつのまにか「金がかかりすぎる選挙」という課題が浮上し、小選挙区制の方が金がかからないという議論が沸きあがった。そして、さらに、政権交代を容易にする選挙制度という議論になり、落ち着いたところが、現在の小選挙区比例代表並立制だった。


当時の細川首相の答弁によると、「小選挙区により民意を集約し、比例代表区により民意を反映する」ということで、衆議院500議席を半分にして、250議席ずつを「集約」と「反映」に割り当てるということになった。(その後、細川連立政権と自民党との「折衝」により、小選挙区300、比例代表区200となり、さらにその後、比例代表区が180となった)


確かに、小選挙区制、比例代表制、いずれも長所もあり短所もあるのだろう。ただ、現在のような小選挙区比例代表並立制は、世界的にみると評判が悪いらしく、採用した国もすぐにやめている例ばかりらしい。


小選挙区単独、あるいは比例代表単独の選挙制度を採用している国も少なくないが、両方の制度を組み合わせていちばん実績があるのが、ドイツの小選挙区比例代表併用性と言われている。


ここでは、小選挙区制と比例代表制の両方を同時に採用するという前提で、ドイツの制度を参考にしながら、どうするのが(論理的に)もっともよさそうなのかを考えてみた。


(以下、続く)