ジョーの日記

米国での日々の生活を写真と言葉で綴ります。

一つのメルヘン(中原中也)

2010-08-26 | 日記
                       
                     
                            一つのメルヘン 
                                    
                                         中原中也
                  
                    
                     秋の夜は、はるかの彼方に、
                     小石ばかりの、河原があって、
                     それに陽は、さらさらと
                     さらさらと射しているのでありました。

                     
                     陽といっても、まるで珪石か何かのやうで、
                     非常な個体の粉末のやうで、
                     さればこそ、さらさらと
                     かすかな音をたててもいるのでした。

                     
                     さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
                     淡い、それでいてくっきりとした
                     影を落としているのでした。

                     
                     やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
                     今迄流れていなかった川床に、水は
                     さらさらと、さらさらと流れているのでありました。。。


                     .................................................................................



                     21歳のときに「中原中也詩集」(神保光太郎編)を購入しました。
                     中原中也は流水を好んでうたったと言われ、
                     それは彼の「長門峡」という詩にも現れています。
                     

                     
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