JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

惣内山  南三陸町

2013年03月18日 | 里山 移動運用


 津波で何もかもなくなった南三陸町志津川地区。その背後に小高く長い稜線が続いています。見た目は何の特徴もない、どこにでもある里山。標高379.6m。

 南三陸町=海と思い浮べるところですが、登山できる山もあるのです。惣内山によって海から隔てられた入谷地区は、他に神行堂山、童子山があり、この三山の斜面に民家や畑が点在し、箱庭のような集落を形成しています。震災直後は、志津川地区からの避難などで混乱が続いたのだろうと思いますが、今は、以前のまま、何も変わらない山里が広がっていました。


入谷集落から見た惣内山


 登山口は自分の知る限り3か所あります。このうち、標識らしきものがあるのは、秋目川の牧草地コースのみです。今回は、数年ぶりなので登りなれた天神地区から山頂をめざしました。標識や赤布類はまったくありません。登山口付近はとりわけ藪っぽいので、案内なしに登るのは至難です。もともと静かな山ですが、震災後、登る人はほとんどいないようで、もはや登山道と言えないような有様となっていました。消えつつあるルート、そしてトゲトゲのバラに難儀しながら、約1時間で山頂に到着。山頂直下のススキ原も伸び放題、荒れ放題となっていました。それでもここの展望はすばらしく、穏やかな志津川湾の全てが見渡せました。


山頂下のススキ原と志津川湾


 いつものハンディ機DJ-S57にJ型アンテナ。145MHz。連れがいるので、時間は取れません。メインでCQを出したところ、一関市、山元町、仙台市宮城野区、利府町、大崎市各局に応答いただきました。仙台市内との距離は85kmほど。5Wでも何とか交信できるようです(相手局も5W)。山元町は100km以上ありますが、59-59でレポート交換。電波伝搬のみでいえば、隣りの神行堂山の方が標高も高くFBです。でも、眼前に大海原を眺めながらの贅沢なQSOはこの山ならではと言えます。






 さて、この山の中腹には、巨大なケヤキが存在します。その名も蔵王権現。ススキ原から西に下る急な細道。それを200m程下って、道の消えた右手の杉林に足を踏み入れ、さらに下ること数分。こつ然と、岩のような巨木が目に飛び込んできます。推定樹齢600年。巨木と言われるものは、宮城県内にもいくつか存在しますが、このケヤキほど魂気迫るものは見たことがありません。幾多の災害を見つめ、その苦難を一手に引き受けたような、まさに神が宿ったとしか言いようのない様相。対面していると静かに問いかけられているような・・・。あなたはどこにいるのか?どこから来て、どこへ行くのか?・・・と。不思議なことに根元からは清水が湧き出ているのです。そしてこの清水は、枯れたことがないそうです。



蔵王権現


 震災後、遠慮していた南三陸の山々。山を手入れする余裕などまだまだないのかもしれません。せめてこれ以上、道が荒れないよう、足しげく通ってみたい、そんな気分になりました。





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