議論 de 廃棄物

環境・廃棄物問題の個別課題から問題の深層に至るまで、新進気鋭の廃棄物コンサルタントが解説、持論を展開する。

優良性評価制度と実地確認の免除

2009年10月06日 05時32分17秒 | 政策提言
 先日の廃棄物処理制度専門委員会の報告書案に、「排出事業者による処理委託先の実地確認の義務付けを提言する方向だが、優良性評価制度の認定を受けている場合は実地確認を免除する」旨の記載があります。

 バカバカしいと思ってこのブログでも取上げていなかったのですが、このタイミングで追加しているだけあって、どうも真面目に考えているようです。ここで少し意見を述べたいと思います。

 以下、排出事業者の視点から見た問題点を挙げますが、処理業界からの懸念については、環境新聞に説明がありますのでここでは割愛します。

①優良性評価制度はそんなにエライ制度ではない
 認定業者とはつまり、「一定の情報を公開している+行政処分を受けていない+ISO14001等のマネジメントシステムを取得している」業者のことです。これらは当然、実地に行かなくても書類だけを見ればわかる内容です。これをもって実地確認に替えられるというのであれば、「実地確認で求められること=実地に行かなくても分かる程度の情報の確認」ということになります。実地確認って、その程度のことしか期待されていないのでしょうか?
 実地確認を行っている排出事業者は、「優良性評価制度の認定業者なら確認不要」という規定を見て、「じゃあワザワザ行くのやーめた」とならないでしょうか。廃棄物処理法として、実地確認と(丁寧な?)書類の確認は同等である、というメッセージを打ち出すことになりますが、それでいいのでしょうか。実際は、この制度を信頼していない排出事業者が多いので、やめない所が多いと思いますが。。。

②実地確認の義務化などナンセンス
 これまで全くありえない案と思っていましたので、黙っていました。。。いかに中小企業を除外したとしても、大企業の倉庫、支店、営業所などもあり、実地確認の完全義務化はおそらく無理でしょう。そこで、実地に行く以外にも、処理業者による情報提供等による確認も可能とする案があります。妥当な判断のように見えますが、上記①と同じ問題に直面しますし、そもそも第三者性が全く担保されません。
 第三者性を確保するためでしょうか、代理人による調査報告書の確認でよし、としている自治体もあります。これを採用すると、代理人の候補となり得る財団とか公社などの組織にとっては「久々の新規事業」になるかもしれません。これでは、(そんな意図がなくても)天下り先を利する規制だと揶揄されそうな気がします。仮に排出事業者が代理人を任意で選出できる仕組みとしても、安かろう悪かろうの調査報告書が出回るだけです。
 やるなら、量と危険性でもって実地確認の義務対象廃棄物を決めるべきでしょうが、それで対象となる事業所は既に実地確認をやっているでしょう。どんな案になるのかによりますが、今のところ意味があることとは到底思えません。

③そもそも、実地確認を免除したら、排出者責任も免除されるのか
 例えば行政指導によって撤去を要請されることはなくなるのか、もっと言うと、19条の6の「~規定の趣旨に照らして排出事業者等に支障の除去等の措置を採らせることが適当であるとき」に出される命令の適用除外になるのか、が問題です。これらが免除にならないのに実地確認の義務を免除しても、排出事業者にとっては正に“茶番”です。

■キチンと声を出していきましょう
 エライ先生の発言を受けての修正かと思いますが、事務局がこれを案文として入れたということは、にわかには信じがたいです。どうも環境省に重要な「何か」が欠けているような気がします。「案」だとしても、もう少しリテラシーがあればこんな案文がそう簡単には上がってこなかったはずです。それとも既に、上記問題は議論しつくしたあとなのでしょうか。

 別に、エライ先生の批判をするわけではありません。環境省の批判をするわけでもありません。それぞれの立場で、今ある情報やノウハウでベストを尽くしているだけだと思います。問題は、我々国民が環境省に重要な「何か」を十分伝えきっていないという点にあります。
 そしてその筆頭は、排出事業者なのではないでしょうか。排出事業者の声は主に日本経団連が出していますが、日本経団連経由で意見を出している方はどれくらいいるのでしょうか。パブコメ経由でもよいので、どんどん意見を出したり、時には直接情報交換をすべきです。これこそが民主国家の国民の義務のはずですし、政策立案者をサポートし、あたらしい民主党政権を活かす術のはずです。
コメント (5)
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