サムスンの誤算、野心的な鉱山開発で逆風

サムスンの誤算、野心的な鉱山開発で逆風

サムスン物産、鉱山開発で7億ドルの損失

2016 年 7 月 15 日 15:28 The Wall Street Journal

 

　【パース（オーストラリア）】韓国サムスングループの幹部は2013年6月、西オーストラリア州の州都パースの公園に集まり、

豪実業界の大 物と世界最大級の鉱山開発で合意できたことを祝っていた。

バーベキューでワニ肉のステーキを焼きながら、上級幹部の1人は60億ドル（現在の為替レートで 約6400億円）近い大口契約を獲得

した従業員たちをねぎらっていた。

　これ以前にもサムスンは巨大プロジェクトを手がけたことがある。

例えば、サムスン物産を通じ、アラブ首長国連邦（UAE）ドバイに世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」を施工した。

オーストラリアの富豪ジーナ・ライン ハート氏が保有する「ロイヒル鉱山」の開発でも成功を収め、

世界的なコモディティー（商品）ブームの波に乗るはずだった。

　しかし、サムスン物産によると、グループ初となる鉱山開発では、2年間で少なくとも7億ドルの損失を出してたという。

不運と失策

　サムスンのトラブルは不運と失策が重なったものだ。それは鉱山投資に失敗した多くの企業が傷を癒している時期だった。

商品価格が下落し始めるまでは、鉱山に投資すれば巨額のリターンが得られるはずだった。

サムスンが雇った請負業者は数カ月で破たん状態に陥り、プロジェクトには遅れが生じた。

　他の多くの鉱業運営会社と異なり、サムス ン物産は予算超過リスクを全面的に背負うことに同意する一方、

2015年8月までに鉄鉱石の輸出を開始するというラインハート氏側のタイトなスケジュール も受け入れた。

また、開発作業が予定通り目標に到達しなければ、ラインハート氏が率いるロイヒル・ホールディングス（HD）に違約金を支払うことでも

同意 した。

　通常、鉱業運営会社は超過コストを採掘会社と共同で負担する。これは資源開発プロジェクトでは一般的なことだ。

　採掘が開始された2015年12月までに、サムスンは複数の請負業者およびロイヒルHDとの間で費用のかさむ法廷闘争に巻き込ま

れていた。

　ロイヒルHDはコメントを控えた。

　それ以降、サムスン物産はオーストラリア国内では、有料道路2本の建設に参画してきた。

ただ、商品価格の下落で鉱山拡張が棚上げ状態となるなか、新たな鉱山開発プロジェクトには立ち入っていない

合併のシナジーは？

　サムスン電子と比べれば目立たないが、サムスン物産は2015年に約23億ドルの純利益を計上した。

同社の業績はサムスングループの未来にとって極めて重要だ。

　サムスンの支配株主である李一族は2015年、一部の少数株主の反対を押し切って、

グループの実質的な持ち株会社とサムスン物産を合併させた。

サムスン物産はサムスン電子を含むグループ会社の株式を相当数保有している。

　 この合併により、3代目の後継者となる李在鎔（イ・ジェヨン）氏によるサムスン電子への支配権が強まることとなった。

サムスンは合併について、グループ会 社とのシナジー効果を高めることでサムスン物産の株主にも恩恵が及ぶだろうと説明した。

ただ、昨年の合併に批判的だった高麗大学ビジネススクールのキム・ ウチャン教授は、こうしたシナジー効果は発揮されずにいると指摘している。

　国内での成長鈍化に直面したサムスン物産は新たな機会を求めて積極的に海外に進出したが、その結果はまちまちだ。

　サウジアラビアに証券取引所の建物を新設するというプロジェクトは今年に入って立ち消えになった。

原油相場が下落する中、サウジ政府がプロジェクトを凍結したからだ。

また、7億ドルを投じてカタールに鉄道を建設するという事業も、原油安のため中止となった。

 

オーストラリアのロイヒル鉱山に参加するまで、サムスンC＆Tは 世界中で複数のメガプロジェクトに参画していた。

写真左上は「ブルジュ・ハリファ」（ドバイ）、契約総額は8億5000万ドル、工期は4年6カ月、完工は 2009年9月。

右上は「マージー・ゲートウェー」（英国）、契約総額は6億ドル、工期は3年10カ月、完工予定は2018年2月。

下は「ロイヒル鉱 山」、契約総額は58億6000万ドル、工期は2年10カ月、完工は2016年2月

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