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ビル・ゲイツ氏の後悔。届かなかった感染症への警告。 感染症の世界的大流行を5年前に警告していた

2020-05-25 12:56:03 | 医療・疾病・疫病・パンデミック・新型コロナウイルス

ビル・ゲイツ氏の後悔 届かなかった感染症への警告。感染症の世界的大流行を5年前に警告していた

2020 年 5 月 12 日 14:33 JST   WSJ      Betsy McKay  

 ビル・ゲイツ氏(64)は、今後世界が直面する出来事の中で、最も多くの死者を

出す恐れのあるものは戦争ではなく、感染症のパンデミック(世界的大流行)と

5年前に警告していた。億万長者のゲイツ氏は、ワクチンをより早期に開発する方法や、

疫病を追跡するシステムの創設に何億ドルもの資金を投じてきた。

世界の指導者らに対し、新たな感染症への国家的防衛体制を構築するよう求めてきた。

 

 ゲイツ氏はこれまでの活動を振り返り「この危険な状況に注意を促すため、もっと

多くのことができたはずだ」と語った。マイクロソフトの共同創業者である同氏は現在、

未然に防ごうと努めてきた事態と対峙している。

 

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューに応じたゲイツ氏は

「惨めに感じる。われわれが行動を起こせば被害を最小限に食い止めることができると

言い続けてきたのに」と述べた。

 

 世界の健康問題と米国の教育問題に貢献する慈善家で、世界で最も資金力のある

基金の共同議長というのが、ゲイツ氏の第2のキャリアだ。彼はこのキャリアを通じて、

28万3000人以上の死者を出し世界経済を崩壊させた新型コロナウイルス感染症

(COVID-19)のパンデミックとの戦いの中心に立っている。

 

 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団は、治療方法を模索する研究者らに資金を

提供している。また、製薬会社幹部や各国政府と協力して、何十億人分もの有望な

ワクチンの生産で、試験段階から開始するのにも資金を投じている。監督当局の

承認が得られ次第すぐに活用できるようにするためだ。同財団は、最も有効性の

高い新薬の生産を早急に開始できるようにするため、製造工場内のスペース確保を

支援している。

 

 ゲイツ氏は、ワクチン生産の細部にまでこだわって製薬会社の最高経営責任者

(CEO)らに質問する。「毎日のように、例えばガラス瓶が不足することはないのか、

大丈夫なのか」「それは簡単なことのよう思えるかもしれないが、これまで誰も

70億人分のワクチンを製造したことなどないのだ」

 

 ゲイツ氏は世界の指導者らと、パンデミックに関する研究の進展について話し合う。

テレビのインタビューや自身のブログを通じて、ウイルスの感染拡大を抑制する上で

ロックダウン(都市封鎖)が必要な理由や、商業活動や学校の再開への慎重な道筋に

ついて説明する。ゲイツ氏は、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン

(NEJM)誌に2月に掲載された記事の中で「COVID-19は、われわれが恐れていた

まさに1世紀に一度クラスの病原体のようになりつつある」と述べている。

 

 ゲイツ氏は、今回のパンデミックでは目立つ役割によって、陰謀論やワクチン

接種反対派グループの攻撃目標にもなっている。

ゲイツ財団本部(シアトル)

 

 公衆衛生分野や国際関係の専門家らはしばしば、ゲイツ氏と彼の財団が自らに

与えた役割について批判してきた。その批判とは、資金豊富な同財団が、

時には優先対象となる病気や、その病気への対処方法を決定してきたというものだ。

 ゲイツ氏は「私たちの仕事は資金を提供し、意見を共有することだけだ。最終的な

決定を下すのは私たちではない」と語る。

 

 新型コロナウイルスが原因のCOVID-19で明らかになったことがあるとすれば、

それはパンデミックを食い止める上で1人の人間にできることは限られるということだろう。

たとえその人間が、世界で2番目の金持ちであってもだ。ゲイツ氏はこのウイルスについて

「私の人生の中で、群を抜いて最も劇的な事象となった」と述べている。

ポリオ撲滅、低所得諸国の子供たちのワクチン接種、その他の優先順位の高い長期的

取り組みへの資金拠出は続いているとはいえ、新型コロナウイルスは、こうした

取り組みの基盤を損なっている。

 

 ゲイツ財団はCOVID-19に有効なワクチンや薬を探し出したり、低所得諸国への

薬や資材の供給を支援したりするために3億0500万ドルの拠出を約束している。

ゲイツ氏は、パンデミックが終息するまでに「もっと多くを支出することになるだろう」

と語った。

ビル・ゲイツ氏と彼の妻のメリンダさん

 

新たな脅威

 ビル・ゲイツ氏と彼の妻のメリンダ・ゲイツさんは、感染症に対抗する生物医学上の

イノベーションを探求する目的で2000年に財団を創設した。2014年には夫妻の関心は、

世界中で少なくとも1万1300人の死者を出したエボラ出血熱に向けられた。

 

 ゲイツ氏は2014年11月のWSJによるインタビューの中で「全世界は疫病の流行に

対する準備ができていない」と語った。このインタビューは、彼がエボラ出血熱の

有望な薬剤治療に関するプレゼンテーションを最後まで視聴し、エボラ感染から生き

延びたナイジェリアの医師と話をした直後に行われたものだった。

 

 ゲイツ氏は別のコロナウイルス感染症である重症急性呼吸器症候群(SARS)の

2002~2003年の流行に触れ、「SARSの一種が出現した時、どうやってそれを食い

止めるのか」と述べ、次に来るものは「SARS II」かもしれないと指摘していた。

 

 ゲイツ氏は2015年3月に行われ、幅広く視聴されたTEDのプレゼンテーションで、

感染症のパンデミックが世界にとって核戦争をしのぐ脅威になると警告していた。

各国がほとんど防御態勢を構築していなかったからだ。同氏は、移動医療班、迅速な

診断技術、備蓄医薬品や何カ月かでワクチンを生産する技術を擁する国際的な警告対応

システムの設置を呼びかけた。

 

 同氏は同月、NEJM誌に「感染症は、向こう数十年間で世界を大きく後退させる可能性

のある数少ない大惨事の1つだ」と寄稿していた。

 

 ゲイツ氏は他の国際保健分野の専門家とともに、公衆衛生面の防御態勢の改善を求めた。

「私1人が声を上げているわけでは決してない。しかし、私が異色な点の1つは、感染症に

人生を費やしてきた専門家でないことだ」

 

 同氏は2016年大統領選挙の候補者たちにパンデミックのリスクを説明し、それへの

準備を国の優先事項の1つにするよう促した。ゲイツ氏は2016年12月に行われたトランプ

タワーでの会合で、大統領に選出されたばかりのトランプ氏にも訴えた。これについて

ホワイトハウスはコメントを差し控えた。

 

 ゲイツ氏が2017年、国際安全保障政策に関して毎年開かれているミュンヘン安全保障

会議に向けて事前に準備した原稿によると、同氏は「世界的なパンデミックへの備えは、

核抑止力や気候変動による大惨事の回避と全く同じくらい重要だ」と述べていた。

 

 同氏はこの会議で、ワクチンをより迅速に生産する方法について話した。既存の

成分を使って新しいウイルスに合ったワクチンを作り、時間を節約するというのが

1つの考えだった。

 ゲイツ財団はこの頃、最近問題化した感染症のための新たなワクチン開発を支援

するため、寄付者や政府から構成される「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」

に1億ドル(現在のレートで約108億円)を寄付した。こうしたワクチンの開発には

多額の費用がかかるが、需要が散発的なため、利益にならないことが多い。

CEPIは現在、COVID-19向けを含むワクチンの開発に資金を拠出している。

 

 ゲイツ氏は政府の指導者に接触できる能力を生かした。彼らは備えを構築する手段を

持つ唯一の存在だという。

 「欧州、米国や世界中のトップの人々と会ったときには、このパンデミックのリスク

について話すことを選んだ」とゲイツ氏。

 

 ゲイツ氏は慈善活動の役割は仲介だと考えている。「私は何億ドルもの財団の資金を

これにつぎ込んでいるが、本当は政府がやるべきことだ。戦争勃発時に役立てるために

国防予算があるのと同じだ」

 

 世界の指導者たちの多くは、原則的にゲイツ氏に同意している。しかし、差し迫った

脅威がなかったため、大半の国はパンデミック対策に必要な多額の資金を投じることに

後ろ向きになっていた。「私などが出した警告が、協調した世界的な行動に結びついて

いればよかった」

 

 ゲイツ氏は、海外での動きが鈍いことに不満を感じ、身近にあるプロジェクトに

目を向けた。同氏はパンデミックを引き起こし得る呼吸器系ウイルスが拡散する速度を

最も遅くできる方法を知りたいと思っていた。

 

 「呼吸器系ウイルスについて、例えば、学校はどのくらい重要で、そこを閉めると

どのくらい感染が抑えられるのかや、マスクは実際に助けになるのかといった質問を

しても、いつも明確な答えがない」

 こうした疑問は、2018年に行われていた研究に自ら2000万ドル以上の資金を投じる

ことにつながった。それはインフルエンザ向けの検査、遺伝学を利用した感染追跡と

拡大阻止について、より良い手法を見つけることを目指す研究だった。研究者らは、

シアトル地域の人々から集めたインフルエンザの検体検査を始めた。

 新型コロナウイルスの感染が最初に拡大した武漢に中国政府が封鎖措置を課していた

1月半ば。ゲイツ氏は財団の科学者らに質問を浴びせ始めた。最も期待できるのは

どの薬か。ワクチンができるまでにどのくらいの時間がかかるか。財団はいかにして

試験の加速を後押しできるかといった質問だった。

 ゲイツ財団は、新型コロナウイルスの治療法やワクチン開発に弾みを付けるため、

資金を投入し始めた。

 

 ゲイツ氏は、疫学者や国際衛生専門家を集め、2月中旬に会議を開いた。関係者に

よると、ゲイツ氏は専門家の意見を聞いた後、新型ウイルスを中国国内に封じ込める

ことができる確率はおそらく25%未満だろうと、側近に漏らした。

 ゲイツ氏は、新型ウイルスがほかの国に広がるのを見て、財団の科学者のほか

医薬品メーカーのトップに対し、検査能力やワクチンの開発計画、財団による支援

の道筋について質問を投げかけた。

 

 シアトル地区のインフルエンザ研究が2年目を迎えていた2月下旬。研究者は10代の

若者から採取した検体から新型コロナウイルスを発見した。遺伝子分析を行ったところ、

この検体は地域で先に見つかった感染例と結び付けられる可能性があった。

インフルエンザ研究の指導に加わっていたシアトルの「フレッド・ハッチンソンがん

研究センター」の遺伝子疫学者トレバー・ベドフォード氏によると、これは「地域内で

相当広がっている」ことを示していた。

 

 公衆衛生当局はこの週に、ゲイツ氏の自宅から11マイル(約17.6キロ)ほど離れた

ワシントン州カークランドの介護施設で、新型ウイルスの大型感染事例を発見した。

 ゲイツ氏は長年、致命的な感染症について警告を発してきたが、それは突然身近な

ものとなった。

2013年、ガーナでワクチン接種を手伝うゲイツ氏

 

財団の使命

 ゲイツ氏は最近、識者やインターネットのニュースサイトから、右寄り・左寄りを

問わず厳しい批判にさらされている。財団の慈善事業について、冷酷な資本家としての

イメージをごまかすのが目的だと言われた。中国政府の新型ウイルス対応への追及を

「問題から関心をそらすもの」と断じたことについて、中国を擁護していると言われ

たりもした。

 

 フェイスブックなどネット上の書き込みの中には、もっと悪意のある陰謀論を

広めるものもあった。新型ウイルスの検査を受けたかどうか判別するため、人々に

ICチップを埋め込もうとたくらんでいるという主張もその一例だ。フェイスブックから

虚偽と断定された。このような説に共通するテーマは、ゲイツ氏が危機に乗じて金を

儲けようとしている、という見方だ。

 

 ゲイツ氏の広報担当者は、ゲイツ夫妻が推定1060億ドルとされる資産のほとんどを、

生前あるいは死後贈与で慈善活動に寄付することを約束していると指摘。

「これらの陰謀論や虚偽情報はみな完全な誤りだ」

 

 ゲイツ氏は世界保健機関(WHO)を擁護する4月15日のツイートでも、批判された。

これは、トランプ大統領が、WHOの新型ウイルスへの対応を検証する間、資金拠出を

凍結する、と発表したことに対する応答だった。ゲイツ財団は、WHOで米国に次ぐ

第2位の資金拠出者だ。

 ゲイツ氏は「われわれはWHOを必要としている。追及のために業務の邪魔をする

ことは、全く理解できない。訳が分からない」と指摘。「われわれは現在パンデミック

にさらされていて、WHOはそこで非常に重要な役割を果たしている。むしろ、

WHOにはもっと戦力が必要だ」

 

 ゲイツ財団は、活動を始めるにあたり、健康と教育の改善を推進して世界の格差を

是正するという使命を掲げた。感染症に焦点を当てたのは、医薬品メーカーにとって、

感染症の治療薬開発ががんや他の慢性疾患と比べてもうけが少なすぎて投資を行えない、

という問題があったことが理由の1つだ。財団の最新の財務報告によると、2018年の

贈与額は468億ドルに上った。

 財団によると既に2014年8月以降、感染症への備えと対応に2億3500万ドルを直接投じた。

新型ウイルスに対しても、別途3億0500万ドルを振り向けている。

 

 政府の指導者や公衆衛生当局者は、ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)の

予測値に注目している。この研究所の資金はゲイツ財団が担っている。

IHMEは、新型ウイルスによる米国内の死者数について、予想を倍近くに引き上げ、

8月初めまでに13万7184人に上るとの見通しを示した。

 

 ゲイツ氏は、新型ウイルスへの世界的な対抗策は「理想からほど遠い」と言う。

しかし、将来に関してはもっと楽観的だ。

 「現在の私の期待は、自国民を守る責任を負う世界の指導者が今回の悲劇から

教訓を得て、将来の爆発的流行を防ぐための仕組み作りに投資するのではないか、

ということだ」

 


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