自燈明・法燈明の考察

葬儀について考えた事

 人は何時か死んでいきます。家族の中で誰かが亡くなった時、残された家族は亡くなった故人と別れを告げ、それぞれが自分の人生を生きて行かねばなりません。

 何故こんな事を書くかと言えば、以下の記事を見てふと考えた事があるのですが、今回はその事について書いてみたいと思います。




 私の両親で母親はまだ存命していますが、父親は十年以上前に亡くなりました。若い頃、身近な人の死というのは悲しい事であり、恐ろしいものでもあると思っていました。しかし実際に私の父親が亡くなった時、感じた事は「寂しい」という感情だったのです。
 私の父親はけして模範的な父親ではなく、どちらか言うと昔ながらの「オヤジ」であり、家庭内暴力(いわゆるDV)も結構ありました。だから私が中学生や高校生の時、この父親が嫌いで堪らなかった時もありました。
 しかし私が結婚し、家庭を持って子供を持つ親になってから感じた事ですが、父親は父親で日々悩みながらも生きて来た事が理解出来ました。まあ、その感情表現が下手くそだったという事だったのでしょう。

 現代の社会は「人の誕生と臨終」は大抵、病院という施設の中に隠されていて、リアルに感じる事というのは、人生の中でそれほど機会がありません。私も父親の臨終に立ち会う事が出来ず、亡くなったと連絡が入り実家に向かうと、既に部屋の中で寝かされている状態で対面しました。

 葬儀は友人葬で行いましたが、今回紹介させて頂いた記事にもある様に、自分自身の中で「父親の死」を納得させる為にも、葬儀という儀式は確かに必要であったと思いました。

 私の父親の友人葬ですが、そこでちょっとした揉め事がありましたので、この場で少し紹介をしたいと思います。それは創価学会の儀典長との間で起きた事です。
 私には兄が居ますが、兄が創価学会の組織に父親の訃報を報告すると、翌日に儀典長なるよく知らない爺さんが実家に来ました。恐らく実家の組織の圏幹部(副役職)の爺さんに見えました。当時、兄は喪主として様々な事で忙殺状態で混乱してもいました。儀典長はその兄に対してこう言いました。

「今回のお父様の葬儀は、地域広布の為にまたと無いチャンスだ。いいですか、地元の自治会長にも連絡いれて、町会議員の〇〇さんにも連絡をとって、地元の人を大結集する闘いをしなさい!それこそがお父様へ代えがたい御供養になるんです。立派な葬儀を沢山の人に見て頂き、この地域の広宣流布を進める切っ掛けを作るのです」

 私は兄を見ると、既に目が泳いでいて「ハイ!ハイ!」しか返事をしません。兄は真面目な壮年部員で副ブロック長。混乱状態の中で圏幹部に気おされているのがよく解りました。

 当時の私は男子部から壮年部に移った時で、丁度、何かと組織幹部に対して指摘をしていた時でしたので、圏幹部に気おされる以前にこの幹部の応対にカチンと来ていました。だからその圏幹部に聞きました。

「ちょっとよろしいですか?葬儀とは本来、誰の為の儀式なのですか?」

 するとこの圏幹部は、まるで鳩が豆鉄砲を食った様な表情をして、私を見てきました。私は続けました。

「葬儀とは本来、遺族の心の整理の為であり、亡くなった故人を偲ぶ儀式ではないのですか?先ほどから聞いていると、やれ広布の闘いだとか大結集だとか、そのどこに私達遺族や故人に対する想いがあるのですか?」

 圏幹部は黙っていました。

「我が家はそんな組織の為の葬儀はやりません。儀典長にはしっかりと故人の冥福を祈って頂きたいと思います。」

 その後、この儀典長の圏幹部は段取りの内容を確認すると、地元壮年部幹部と共に、そそくさと帰っていきました。その後兄は、私に「言ってくれて助かった」と言ってくれたので、兄に対しても間違えた対応では無かったと思っています。

 この父親の葬式は少人数でしたが、しっかりとした葬式で滞りなく終える事が出来ました。ただ一つ、儀典長の弱々しく活舌悪い読経を除いては。

 どの様な人であっても、人は必ず死んでしまいます。恐らくこのブログを読んでいる人も、百年後にこの世界に残っている人は一人も居ないでしょう。もれなく皆さんは「骨壺」の中に納まっている事と思います。そしてこれは私も当然、同じく「骨壺」に入っているでしょう。
 亡くなる本人は良いのですが、残された人達は心の区切りをつけなくてはなりませんし、その為にも儀式としての葬式というのは必要だと思います。ただ近年では無駄に華美な儀式ではなく、よりこの葬儀の本義に基づいた形式が求められる時代になって来ています。

 この大事な儀式に関わる僧侶や宗教団体も、そういった事をしっかりと理解して携わる姿勢が無い限り、これからの時代、そこから締め出されていくのかもしれません。


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