先日、ある中堅機械メーカの役員さんから次のような依頼を受けました。
「社内のモチベーションを上げるために、管理職を対象にした意識改革研修をやりたいのだが、具体的なプランを考えて欲しい。」
この役員さんは大変よく勉強をされている方なので、ちょっと驚いてしまいました。
私は「意識改革ですが・・・それってどういう意味なんでしょう?」と尋ねると、彼はあきらかに頭上に大きな「?」を浮かべ、「意識を変えることだよ。他に意味があるのかね?」と答えました。結局、私はこの依頼をお断りしました。
要は、ある成果(今回はモチベーションアップ)が欲しいときは「意識を変えれば良い」と思い込んでいるのです。
つまり、手段であるはずの「意識改革」が主役になっていて、さらにその意味もよく分かっていないのです。「勇者の剣」を手に入れることができれば魔王を倒せる!というわけです。
残念ながらビジネスの現場に勇者の剣はありません。
また、ある研修会社のホームページ次のような一文がありました。
「意識改革とは、一人ひとりのパラダイムをシフトすることである」
うーん・・・ここまでひどい表現はあまりお目にかかったことがありません。まさに勇者の剣のように意味不明です。
元プロ野球監督の野村克也氏が著者の中で、「心が変われば態度が変わる、態度が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる 運命が変われば人生が変わる」という言葉を紹介しています。
素晴らしい言葉です。でも凡人には実践できません。
ごく普通のサラリーマンで「心を変える」ことができる人がいたら、その人は「普通」ではありません。
まともな研修は「行動を変える」ことに焦点を当てます。
面倒くさいし、忘れがちなことを多少無理してやってもらう。その結果、ちょっとだけ効果が得られる、その時にちょっとだけ「嬉しい」と感じてもらう。そんなことの繰り返しが続いていくと、いつか意識が変わる「かも」しれません。
ところで「勇者の剣」はアマゾンで購入できます。「カスタマーレビュー」は必読です!
(人材育成社)