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消費税10%を確約する首相声明を出せ

2018年10月09日 | 経済

 

3度目の見送り説を打ち消せ

2018年10月9日

 消費税を来年10月に10%に引き上げることは消費税法で決まっています。選挙対策で公約を2回、破って先送りを決めた際、「今度こそ」と、安倍首相が決断したにもかかわらず、今だに延期説がくすぶっています。「それを打ち消すには、10%への引き上げを確約する談話か声明をだすべきだ」との声が上がり始めました。私は社会保障財源の確保、赤字国債の発行抑制のために、首相談話に賛成です。


 麻生財務相も「今回は間違いなくやれる状況になってきた」と、指摘しています。消費増税に伴う景気へのマイナス効果に対して、編成作業が進んでいる19年度の当初予算で、十分すぎるほどの対策を実施することになっています。予定通りなら消費税10%は、1年後には実施されているはずです。


 これに対し、「2020年の東京五輪景気は、会場整備やホテル増設の工事、準備がほぼ出尽くす19年10月にはピークを過ぎる」とか、「米中貿易戦争が世界景気にとって逆風となる」など、消費税10%の先送りをけしかける声が聞こえてきます。五輪が迫れば、五輪景気が下降するのは当然ですし、これまで五輪景気の果実をもいできたのですから、身勝手な論理です。


増税対策が先行する綱渡り予算


 安倍政権は消費税対策として、5兆6000憶円(1年あたり)の増収分のうち、2兆円を教育費の負担軽減、子育て支援など、さらに駆け込み需要の反動減対策として、自動車や住宅の購入支援も検討しています。その予算は年度始めの来年4月からの執行です。一方、財源の消費税引き上げは10月からです。歳出増を先行させたうえ、消費税上げを見送れば、2兆円の穴があき、赤字国債が増発されます。


 社会保障財源に充てるべき消費税の使途を突如として、安倍政権は広げました。党や政府税調、経済財政諮問会議でほとんど議論しないまま、安倍首相の一存で、あれよあれよという間に、重大な変更が行われました。医療、年金などのための社会保障税として位置づけられた消費税の性格が変わりました。


 消費税アップの対策費ならば、せいぜい1,2年程度の景気下支えでいいのに、教育費の負担軽減、子育て支援、さらに住宅ローン減税を始めたら、途中で打ち切ることは難しいでしょう。ですから増税対策の名を借りた人気取りのばらまき、選挙対策が隠れた狙いだと、批判されてきました。


1強政権でこその消費税率2ケタ


 税率を10%とせず、8%のまま据え置く軽減税率も実施される予定です。飲食料品、教育費、新聞・雑誌などが対象です。麻生財務相は「新聞を読むと反安倍になる。若い世代はネット情報に馴染み、新聞を読まないから反安倍でない」旨の発言をしたことがあります。新聞論調が気に食わないならば、「軽減税率は新聞に適用しない」の覚悟かなと思いましたら、そうではないのですね。


 とにかく年末の予算編成期前には、消費税10%の腹を本当に固め、「今度は必ず実施する。3回目の先送りはしない」との意思表示をすべきです。さらに、増税を断念する状況に追い込まれたら、消費増税の対策予算を年度途中でも執行を停止するという覚悟を決めておくべきでしょう。


 若い世代に安倍支持が多いといっても、政権がやっていることは、若い世代へのつけの先送りで、自分たちの身に降りかかってくるのです。さらに、現役世代が加入している健康保険組合から、退職した高齢者の医療費(後期高齢者は1割負担)の収支を合わせるために、3兆5000億円もの支援金が支出(補助)されています。将来を背負う若い世代の負担を増していくのは愚かなことです。


 そういう事態に歯止めをかけるためにも、消費税をまず10%にし、将来は20%程度以上にしないと財政赤字は拡大します。いつまでもぐずぐずしている結果、選挙に重なったり、五輪景気の終了や貿易戦争にぶつかったりするのです。「安倍首相は憲政史上最長の政権となる可能性を視野に入れた」が政治メディアの口癖です。それよりも「消費税率を2桁にした政権となれ」くらいのことを言うべきです。



 


 


 





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