人権擁護法案アピールの会

真に必要な人権救済機関を設立するために…

緊急アピール~人権擁護法案再上程を前に

2005-03-19 00:32:45 | アピール文
【掲載記事】
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050222k0000m040147000c.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050221-00000084-kyodo-soci

緊急アピール
人権擁護法案再上程を前に

                    2005年2月21日

第1 人権擁護法案上程の経緯と問題点
 政府・与党は、国内における人権救済機関(以下「国内人権機関」という)を設置するための人権擁護法案を、今国会において、上程しようとしている。しかし、同法案は、2002年3月、国会に上程されたが、解放同盟をはじめとする各種人権推進団体から、①国内人権機関を法務省所管としていたため、独立性が担保されない、②メディアの取材が過度に規制されるおそれがあるなどの強い批判を浴び、2003年10月、いったん、廃案となった経緯がある。
 人権擁護法案が、突然、今国会に再度上程されることになった背景には、解放同盟の積極的な動きがあったと報道されている。
 我々も、国内人権機関の設置の必要性を否定するものではなく、適切な国内人権機関であれば、早期設置を望むところである。
 しかし、再上程予定の人権擁護法案は、前回廃案となった法案において批判された上記①②の点について、まったく改善されていない。
 報道によれば、わずかに、)数年後に必要な見直しをする、)メディアの報道・取材を勧告・公表・訴訟援助などを行いうる特別救済の対象とする条項(いわゆるメディア規制条項)については「凍結」し、「凍結」を解除するには別途法律を要することとする、)地方事務所の充実に努める、という点が変更されるようである。
 しかし、)については、見直しの内容が全く不明確であり、見直しによって将来における国内人権機関の独立性が担保されるわけではない、)については、メディアが「凍結」解除されるのを恐れて取材を過度に自主規制するおそれがあり、本来削除すべきである、)については、法務省所管を前提に地方事務所を充実したところで、効果がある人権救済手続を行うことは困難であることから、前回廃案となった法案と比較して、国内人権機関の機能が大幅に改善されるとは到底言い難い。
 そして、現時点において、一度廃案となった法案をほとんどそのまま再上程することに何らの合理性も認められないのである。
 よって、我々は、今国会において上程される法案について、ア)人権救済機関を内閣府の外局とするなどして、独立性を担保すること、イ)民主主義の根幹である表現の自由が侵害されることを避けるため、メディアの取材・報道に対する規制に関わる条項を削除すべきであることを要求するとともに、次のとおり、アピールする。

第2 アピール
 1 政府・与党への要求
   パリ原則は、人権救済機関が真に公権力から独立したものであることを求めている。このパリ原則は、公権力自体が人権侵害の主体となりうるものであることを認識したうえで、そのような公権力による人権侵害を防ぐことが、人権救済機関の大きな使命であることを理解して作成されたものである。
   このような状況は世界共通であり、日本だけが例外であることはあり得ない。現に、前回人権擁護法案が上程された際には、刑務所内での刑務官による痛ましい暴行事件が反復継続されていることが明らかとなり、法務省の所管とすることに対し、批判が寄せられた。今回の上程直前には、UNHCRによる認定難民が入国管理局によって退去強制されるなど法務省による人権侵害が問題となっている。
よって、人権救済機関を内閣府の外局とするなどして独立性を担保するよう強く求める。
   また、再上程される人権擁護法案において、メディアに対して規制されることに対しては、重大な懸念が寄せられている。権力を監視するべきメディアが、権力に監視される立場に置かれることは許し難く、メディア規制条項は削除されるべきである。凍結しただけでは、メディアが凍結解除をおそれて自主規制することが懸念されるうえ、凍結解除され法的規制が行われることに歯止めをかけることができない。

 2 法務省への要求
   多くの人権侵害が問題となっている刑務所、拘置所、入国管理局等を抱える法務省が所管する人権救済機関を設置しても、その人権救済機関が内部の人権侵害事件を救済することはおよそ期待できない。
   パリ原則に則り、法務省は、人権救済制度について法務省の所管という発想を捨てて、政府から独立した機関による実効的な救済が不可欠であるという視点を持つべきである。
また、行刑改革会議で、刑務所内における人権侵害事件について、市民が加わった救済機関を設けることが検討された。提言は、「行刑施設における収容者の人権侵害に対し、公平かつ公正な救済を図るためには、矯正行政を所掌する法務省から不当な影響を受けることなく独自に調査を実施した上で判断し、矯正行政をあずかる法務大臣に勧告を行う機関を設けることが必要不可欠である」とし、「このような観点からは、人権擁護推進審議会の答申を最大限尊重して設置されることとなる、公権力による人権侵害等を対象とした独立性を有する人権救済機関が可及的速やかに設置されるべきであると考える」と述べている。法務省にこの人権救済機関を設置するということは、この提言の趣旨に明らかに反するものと言わざるを得ない。
したがって、再上程される法案が、従来のまま、人権救済機関を法務省の所管とすることは、人権救済制度として、到底、許されない。

 3 解放同盟への要望
   上記のとおり、解放同盟は、人権救済機関設置に対して積極的な立場にありつつも、従前から批判的な視座を有していた。今回の本法案に対しても、たとえば、2005年2月9日の第4回中央委員会の提案による「『人権侵害救済法』制定をめぐる情勢と当面する課題」において、「法務省所管の場合の問題点は、名古屋刑務所問題など相次ぐ公権力による人権侵害の不祥事を起こしていることもさることながら、人権委員会の3大機能(仲裁調停・教育啓発・政策提言)を発揮しにくいという限界性があるということである。」、「政府案は、従来の法務省人権擁護体制を『看板替え』するだけのものであり、この体制では『迅速性』・『簡便性』・『安心性』が確保できないことは、『答申』でも認めるように実証済みである」、「メディア規制に関わる条項は、公権力からの不当介入の危険性を排し『報道・表現の自由』を確保するために、削除すべきである。もちろん、メディア関係の過剰取材や差別問題などは重要な問題であるが、自主的な取り組みによって善処していくのが望ましい」など、極めて適切な指摘を行っているところである。
 我々は、政府から独立した人権救済機関の設置のために長く尽力されてきた解放同盟の努力を高く評価する。我々も、解放同盟の指摘を踏まえた形での人権救済機関設置のため、ともに努力するとともに、今日の法制定にあたって、解放同盟が①この機関を法務省に置かないこと、②メディア規制条項は削除することという2点について、これを原則として、あくまでもその実現を追求されるよう求めるものである。

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