付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★手始めとして奨めたい「なろう」系

2018-07-20 | 異世界転生
 知人に「今、なろう系の本でお薦めはなに?」と訊かれると困ります。
 「小説家になろう」やその他ウェブ連載作品の書籍化はかなり多くなっていますが、きちんと完結しているものはそれほどありません。話は面白いのに出版社が売ることができなくて打ち切られたり、作者のモチベーションがなくなって断筆したり、あるいは筆が乗りすぎて完結しないんじゃないかと思うくらい大長篇になっていたり。
 でも、それは別にウェブ連載発でなくてもよくあることで、ぼくらはずっと佐藤大輔の『皇国の守護者』や『遙かなる星』や『レッドサン ブラッククロス』、豪屋大介の『A君(17)の戦争』の続きを待ち望んでいたし、ペリー・ローダンなんか翻訳どころか原書で読んでいたって生きているうちに完結編まで読めるとは思えません。いやいや栗本薫の『グイン・サーガ』は全100巻を豪語してシリーズを始めたものの100巻で終わらないまま著者が亡くなってしまった。いや、それを言い出したら、中里介山の『大菩薩峠』や国枝史郎の『神州纐纈城』だって未完なのだ。
 ただ、人に奨めるとなると未完とか終わりそうにない話は奨められません。『EGコンバット』『レイニーブルー』止めみたいな極悪なマネはできないよね。
 そういうわけで、とりあえず「ウェブ連載が初出の作品で、書籍版が完結している、もしくはウェブ連載で完結していて書籍版も最後まで出版されそうなくらいには出版社が推している」ものの中から、40代以上にもお薦めできる作品をリストアップしてみました。

『死神を食べた少女』 七沢またり
 剣と魔法の世界で直感と本能のままに戦い、むさぼり食らう少女シェラの物語。昨今のライトノベルのような軽さと、ホラー映画みたいなヒロインの強さと、ダンセイニあたりと幻想と現実の境界線があやふやな世界観が魅力的で、やはり同じように人格が壊れてしまった少女が巨大な武器を振り回して暴れ回る『火輪を抱いた少女』も合わせてお薦め。

『異世界食堂』 犬塚惇平
 ファンタジー世界の住人たちに現代日本の食事を提供してみよう……という、ある意味、既に1つのジャンルになってしまっているような作品群の中から代表作を。
 オフィス街の一角、雑居ビルの地下にある「洋食のねこや」は週に一度、裏口が異世界の各地につながってしまう。毎週土曜日はオフィス街のお店は休業だけれど、ドラゴンや魔法使いなど異世界の住人たちがシチューやカツサンドを堪能しにやって来る……という話で、1話完結の連作短編集なので、飽きずにどこからでも読めちゃいます。異世界での物語や各種族ごとの個性と料理がうまくマッチしたストーリーです。

『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける』 横塚司
 学校丸ごと異世界転移してしまい、異能を身につけるも異世界のモンスターに襲われて死んでしまう者も出るし、仲間割れでクラスが分裂することも……という、これまたクラス集団転移というジャンルができるくらい類似作が多いけれど、その中でもストーリー展開が面白く、それでいて全9巻という手頃な分量で完結しているのでお薦め。ただ、イラストが本当にモンスターとか異世界を描写できていないので、そこだけが難点。

『この世界がゲームだと俺だけが知っている』 ウスバー
 現実そのままに体感できるゲームをプレイしてますとか、その世界からログアウトできなくなりましたとか、ゲームそのままの世界に転生してしまったという話も多いのですが、プレイ日記みたいに終わらなくて延々と続く、最初は面白かったのに中だるみしたまま戻らない、書籍化が打ち切られる、ウェブ連載が止まるというのも多いのです。そもそも元祖と言うべきローゼンバーグの『眠れる龍』だって1巻打ち切りです。
 定番と言えば(なろうではないけど)『ソードアート・オンライン』をマザーズ・ロザリオ編まで読めば十分という気がしないでもありませんが、あえて挙げるなら『この世界がゲームだと俺だけが知っている』。
 バグだらけの仮想現実体験型ゲーム「猫耳猫」そのままの世界に転移して帰還不能に陥ってしまったのを、ゲームの裏技を駆使して乗り切り、その世界の危機も救ってしまうもので、イラストと本文がうまく連係していて、9巻完結と長さも手頃です。やりこみゲーマーがテクニックを駆使して暴れる話の中でも、その身もふたもなさでは筆頭です。


 他にも面白い話は多いけれど、ウェブも書籍版も完結していないと二の足を踏みます。面白い話が途中で止まってしまうと、読んでる方は辛いんですよね。
 その中で、ウェブでは完結していて、書籍版もなんとか最後まで行きそうなものを幾つか。

『本好きの下克上』 香月美夜
 本好き少女が図書館で圧死して異世界に転生したものの、識字率が低い世界で本そのものが王侯貴族や教会の一部にしかなく、しかも自分は貧乏な兵士の家に虚弱体質で生まれてしまったという逆境下で「本がなければ作れば良い」と紙を作るところから始める物語。
 シリアスとコメディのバランスが良く、キャラクターが魅力的で、それでいて魔法の存在する世界での封建的身分制度のありように説得力があります。よくある「平民が簡単に貴族に成り上がれる」とか「貴族がやたら平民に親切でもあたりまえ」という世界ではありません。王侯貴族と平民では、単に貧富の差だけではなく、価値観から在り方そのものまでが違って相容れないのです。そこを「本が好き」というだけで、1つずつ突破していくところが面白さです。

『人狼への転生 魔王の副官』 漂月
 異世界の人狼に転生して魔王の副官になった青年が、世界を大きく動かしつつも、自分ごときは大した活躍はしてないよと言い張って周囲から白い目で見られる、自己評価低い系主人公の話。読者を泣かせ、笑わせ、胸を熱くさせられる作品だと思います。
 エピソードの取捨選択も巧く、いろいろ横道それたり大事件が連発しているようでいて、気がつけばサクサク話が進んでいくストーリー展開の早さも魅力です。ウェブ版は後日譚まで含めて完結。書籍もそろそろ後半も半ばに差し掛かってます。
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「この世界がゲームだと俺だけが知っている9」 ウスバー

2018-06-09 | VRMMO・ゲーム世界
 バグだらけのクソゲーVRの世界に巻き込まれたソーマは、バグ技を駆使して邪神の欠片を殲滅していくが、それは邪神本体の目覚めを早めることにも繋がっている。しかも、邪神は倒されるごとに受けた攻撃を克服し、強化されて復活してくる。
 何度でも復活し、しかも一度受けた攻撃は効かなくなるという邪神に対してソーマと仲間たちは立ち向かうことを決意するのだが……。

「猫耳猫スタッフの底意地の悪さに比べたら、(邪神の悪意など)子供の悪戯みたいなものだ!!」

 9巻でちゃんと完結。クソゲー世界にバグ技で立ち向かうという、ある意味一発ネタの物語なので、ほどよい長さで終わったなーと満足した読後感。身もふたもないお約束感にあふれる1冊。イラストと本文とのコンビネーションも良好でした。

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている6」 ウスバー

2015-11-02 | VRMMO・ゲーム世界
 窮地に陥ったトレインちゃんの命を救うため、ソーマはあえて魔王イベントを発動させた。「魔王の祝福」という時間停止の呪いによって、プレイヤーと婚姻可能なキャラクターは男女を問わず時が止められてしまったのだ。
 だが10日以内に魔王を倒して呪いを解除しないと、主要キャラクターの凍結による治安悪化や魔物の侵攻によってプレイ不可能なまでに世界は混乱してしまうのだ……。

……で、その場にいるメンバーで適当にパーティーを組んで、「あ、だったらわたしが、お父さんに頼んであげようか!……この人たち、魔王を倒すために武器がいるんだって! 地下の宝物庫のアイテム持ってっていいかな?」で装備を揃えるという、非道いゲームの非道い話(褒め言葉です)。
 バグやら裏技とか使えば、さくさく行くとこはさくさく行くんです。そしてリンゴちゃんはソーマについて行くことを決意し、そして変態になりました。

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている5」 ウスバー

2015-03-19 | VRMMO・ゲーム世界
「嫌な話だがまあ、何も失わずに生きていける人間なんていねえ。そういう時のために、自分の中で線引きというか、優先順位だけは決めといた方がいいぜ」
 冒険者ライデンは、ソウマが関わった人間に入れ込みすぎると警告する。
 すべての人をいつでもどこでも救えるはずがないのだ。

 「生贄の少女」と「妖魔の迷宮」のシナリオをクリアしたソウマだったが、そこに魔封船が墜落したというニュースが飛び込んできた。
 墜落地点はやはり高レベルの魔物が闊歩する荒野のど真ん中。
 そして、その乗客の中にイーナ・トレイル、トレインちゃんの名前があった……。

 前半はいつものようにソウマたちの迷宮冒険が描かれていますが、巻頭カラー漫画と後半は冒険者としてコンビを組んだトレインちゃんとティエルさんの物語です。表紙もそうですね。そして思わせぶりたっぷりの、絶望的な幕引きで次巻へと続きます。

 クールな言動を猫耳が裏切ってすべて台無しにしているミツキが好きです。ぱたぱた。

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている4」 ウスバー

2014-04-27 | VRMMO・ゲーム世界
「りょうりは、ハートキャッチ」

 ちょっと留守にしている間に自宅に官憲の捜索が入ってしまい、その屋敷がバグだらけトラップだらけだったばかりにすっかり犯罪者のアジト扱いにされ、指名手配されてしまったソーマだが、そんなことよりもなによりも王都に迫る何万もの高レベルモンスターを防ぐ方が優先だった。どうやら『王都襲撃』イベントが、ゲームの時は別の形で発動してしまったらしい。
 ソーマVS1000匹の魔物。
 史上最悪のピンチであり、最低の決戦だった……。

 クソゲーの世界に転移してしまったプレイヤーの冒険譚。今回も頑張ってみんなを助けても周囲から気持ち悪がられるだけの主人公ですが、孤高のヒーローというとカッコ良くなる気がします。
 あいかわらずゲームとしてのシナリオの説明やシステムの解説が多くて、そこを気にしなければ、それが楽しければ、問題ないです。まあ、無双系ではありますけど、もともとのゲームの意地が悪いので、これでちょうどバランスが取れているという感じです。
 こういうウェブ小説デビューの作品だと、刊行された途端に執筆ペースが落ちてしまったり、そのまま消えてしまったりすることがないわけではないのだけれど、これは安定して続いていて、それだけでも嬉しいですね。
 書き下ろし外伝「真希の果てしない戦い」の方に登場する、謎のサークル仲間も気になりますが、再登場はあるのでしょうか?

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている3」 ウスバー

2014-01-02 | VRMMO・ゲーム世界
 スタッフの悪意とバグに満ちあふれたクソゲー『New Communicate Online』こと猫耳猫オフラインの世界に入り込んでしまった主人公の物語も3冊目。ここまででゲーム内時間が2週間経っていないというのは驚きですが、何度も何度も攻略して要領を飲み込んでいる上に裏技を駆使してクエストを一気に消化していれば展開が早いのも納得です。

 今回は自宅にと購入した邸宅を巡る冒険と、ヒサメ道場の顛末。それに外伝『ミツキの奇妙な冒険』を収録してます。
 あいかわらず面白く読んでますけれど、今のままだと5巻、無理でも7巻くらいで完結するように持って行かないと、バグや悪意ある設定が原因のトラブルと裏技によるその解決が繰り返されるわけで、そのうち単調になりそうでちよっと怖いです(刊行がエンターブレインなので、そのあたりはぐだぐだにならないと信じてはいますけれど)。
 シナリオの先読みと裏技テク活用の先に、どんな話が見えてくるのかな。魔王すら最終ボスではないので、このままだと真のヒロインの座争奪戦がメインになりそうで怖いです。

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている2」 ウスバー

2013-08-06 | VRMMO・ゲーム世界
 バグと製作スタッフの悪意が満載なバーチャルリアリティ・ゲーム<猫耳猫>の世界に入り込んだ“ぼっち"ゲーマーの冒険の2冊目。

 何とか王都までたどり着いたソーマだったが、宿に泊まった翌朝、気がつくと同じベッドに見たこともない一糸まとわぬ姿の美少女がいた……。

 リンゴちゃん登場の回で、例によってゲームシステムとシナリオについての解説が、ハードボイルド小説や軍事サスペンス小説における武器兵器の解説なみに多いけれど、そこはストーリーに絡んだ大事なポイントです。こんなゲームを誰が作った!?とつっこむ場所で、ここが大事なのです。
 前回ヒロインのトレインちゃん……というより治療師ティエルが主役の書き下ろし外伝『約束のゲルーニカ』も収録されていて、しっかり堪能させていただきました。
 さて、男はよく女性の「王子さま願望」を冗談のネタにして笑い飛ばすけれど、男にだって「お姫さま願望」はあって、そういうときのお姫さまというのは「純真で無垢」で「自分を無条件に慕って裏切らず」しかも「戦えば強い/能力が高く足手まといにならない」という、たいへんに都合の良い存在です。
 そのあたりをしっかり自覚した上で笑い飛ばしましょう。

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「この世界がゲームだと俺だけが知っている」 ウスバー

2013-05-08 | VRMMO・ゲーム世界
「理不尽は、理不尽であるほどに、ひっくり返した時が面白いんだ」
 バグだらけのクソゲーをやりこんだ相良操麻の言葉。

 通称「猫耳猫」と呼ばれる仮想現実体験型ゲームは非常に残念な出来だった。
 まず、オンラインMMORPGを目指していたはずなのに、ソロプレイしかできなかった。オンラインなのは、てんこ盛りのバグを解消するためのパッチをあてるためだけにあったといって過言ではない。そして、悪意たっぷりの意地悪で不親切で理不尽なシナリオとシステム……。
 そんなゲームであっても、やりこまずにはいられないマニアはいたけれど、相良相馬はこんな世界に転移して帰還不能に陥ってしまった……。

 これまた「MMORPGの世界に取り込まれたゲーマーの冒険譚」なのだけれど、入り込んだのがバグ多発のゲーム。やりこみしていた主人公ソーマは、シナリオやシステムを熟知していてバグ仕様を逆手に取ったプレイで優位に立つのだけれど、迎え撃つゲームの側も理不尽で不合理で、なおかつ現実化することでゲームの時と変わってしまっていて……という、ある種コンゲーム的な楽しさの1冊。
 今回は、プレイヤーが一所でレベル上げしていると、どこからともなく多数のモンスターを引き連れて逃げてくる「トレインちゃん」篇。
 オンライン小説として相当読まれている作品だけれど、単行本化にあたってプロローグのコミック化とか、内容の手直しとか、注釈の追加とかがかなりされていて、ネットで読んでいても買った価値はありました。良い仕事してます。

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