年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

こぶし

2013-04-25 | フォトエッセイ&短歌

 福島の友人から便りが届いた。一進一退の寒さで春の訪れをヤキモキさせている福島でも桜が咲き始めた。色を失った山々もさみどりに輝き始め、里では辛夷が霞のように靄っている。梨の透き通るような花も開き始め春の足音が見えるようになった。と思ったら季節外れの雪が舞って一面の雪景色になったという。
 4月下旬に雪がちらつくのは珍しくはないが雪景色をつくる積雪は余り記憶が無いともいう。早めの春に身を乗り出した、サクラもコブシもナシもモモも降る雪の中で花弁を震えさせていた事だろう。東北では花がイチニイサンッと掛け声かけて一気に咲き始める。
 もう30年以上も経つか、新任の頃、ガリ版刷りの学年通信を発行していた事がある。まだサクラの蕾も堅く北西の風が冷たく吹く中で辛夷の花が咲き始める。清楚な白い花で造りもシンプルで、如何にも春を告げる花である。
 学年通信のタイトルを『こぶし』にした。生徒は最後まで「こぶし」を「拳」と理解していたようだ。辛辣な記事が多かったからナ~。窓越しに見える辛夷の蕾を見ながらカリカリとガリ切りした遠い思いが浮かんできた。鉄筆を握る指先が冷たかった。原紙のロウの香りが清々しかったという記憶があるが原紙に果たして匂いがあったのだろうか。あれは修正インクの匂いではなかったのか。
 ワープロが導入されファックス印刷器が普及した時にはこんなに楽にプリント出来てしまっていいのかと目を疑った。1/10の労力で済むようになったが、教育現場は別の大きな労力を必要とするようになっている。進学対策にイジメの対応、モンスターペアレントと食品アレルギー緊急対策の講習と学校は多忙である。
 窓越しに揺れていた辛夷は窓枠いっぱいに大きく葉を広げ時代の経過を物語っている。

北風の残る空に真っ白に咲くコブシの花

 

  辛夷まだ小さき頃にガリ切りの通信『こぶし』に意気込み強く
                                           
  新学期辛夷の花を眺めつつガリ版通信『こぶし』と名付ける

  ガリ版のたより『こぶし』に燃えた日々辛夷の幹も細き頃に

  ガリ切りの通信『こぶし』カリカリと窓打つ辛夷小さき頃に


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