年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

大間の啄木

2012-09-04 | フォトエッセイ&短歌

 八月下旬の酷暑のさなかに東北の旅をした。青森県は下北半島の大間岬と六ヶ所村の原子燃料サイクル施設である。どちらも日本一で知る人ぞ知る行ってみたいところである。
大間崎(おおまざき)と言えばマグロの一本釣りである。しかし、一本釣りが話題を呼ぶのではなく、築地市場の新年恒例の初競りのマグロ卸売りの値段に驚嘆の声が上がるのだ。因みに今年は206.6キロの本マグロが413万2000円で某寿司店によって競り落とされた。413万の本マグロのネタ寿司を味わってみたいものだが、かっぱ寿司の常連ランクではとても無理な話であろう。
 400万円とは景気の良い話であるが、大間岬の漁村は日本のどこにでもある、過疎の進むうら淋しい村である。海岸を縫う海辺の街道に軒の低い潮枯れた集落が続く。ネコの額のように狭い庭には砂利を並べてそこで昆布を干しているのである。褐色に日焼けした老人が乾いた昆布を揃え束ねている。何とも日本的なつましい漁村の風景であろうか。
とは云え、突端の岬は本州の最北端ということで大きな花崗岩マグロのモニュメントが築かれて賑わっている。あらゃりゃと面白いのは啄木の巨大な歌碑が3基も建っていることである。
   「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」
   「大海にむかひて一人七八日泣きなむとすと家を出でにき」
   「大といふ字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来れり」
 東海の小島の磯がなぜ津軽海峡に臨む大間崎なのか。沖合の大間埼灯台が建っている弁天島が「東海の小島」だと言うのだ。う~ん、と頭をひねりながら説明文を読めば、まあ、それなりの曰くもあるが、またの機会にする。
 二つ目の原子燃料サイクル施設は原発ゼロ世論で話題独占中の「日本原燃六ヶ所村再処理事業」であるが、これも後日にします。

<街道の路傍で干される大間崎昆布。ダシ昆布・健藻昆布に使われる>

 

                                     
  汐の陽に昆布干す庭は詫びしくも強き匂いの下北の晩夏  

  絶品の昆布味の素広がりて生臭放ちて路肩に続く 

  啄木の「東海の…」碑立つ最北の津軽海峡は荒々しくも  

  潮速きクキドの瀬戸に踏みいれば迫り来るよな大間埼灯台  

  六カ所村暗く北国の風情なし瀟洒に聳える再処理センター


最新の画像もっと見る

コメントを投稿