年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

早稲田

2013-05-16 | フォトエッセイ&短歌

 田植えといえば麦刈りが終わった時期に一斉に始まったものだ。六月の初め木々の新緑が濃い緑に覆われる頃、麦畑は黄金に輝き小波のようにサワサワと揺れる。初夏の透き通った陽射しが小波に陰影を作って広がっていく。田園の最も美しい風景ではないか。
 晴天の日を見計らって麦の収穫が始まる。麦刈、麦扱、麦打と一気に片付けるのが稲の収穫作業と違うところだ。見た目には美しい麦だが、麦打の時に出る芒(のぎ)は閉口ものだ。汗の皮膚に着く芒の痛痒さは格別で皮膚が弱い人は赤く腫れ上がる。
 作業の合間に爺さんがストロー(麦藁=むぎわら straws)で手品のような手捌きで虫かごを作ってくれる。小麦は製粉してウドンになる。大麦は押麦にして麦飯になる。自給自足のそんな時代がこの間まであったのだ。
 現在は稲と麦の二毛作が行われることもなく初夏の麦畑を見ることはなくなった。そのために田植えも早々と行われる。
 まだ、6寸くらいの早苗(さなえ)が田植機で移植され田の中で震えている。
田植えは梅雨の頃の作業であったが、今や春の農作業となっている。やがて、トマトと同じように、新米が1年中出回る時代が来るのかも知れない。俳句の季語の解説が必要にもなってくるのだろう。

若芽の薄い緑を早稲田に映して水面に揺れる早苗たち


  冷たかろ 早苗はたんぼの水の中心細げに田面に首出す

  吹き下ろす蔵王の風は雪名残り早稲田の水面に早苗踏ん張る

  黙々と田植機一人田植えするエンジンの音谷戸に響かせ

  田植機にTPPはストップ!のステッカー張りてグッグッと進む