年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

春の妖精

2013-03-08 | フォトエッセイ&短歌

 雪に埋もれて9名もの人が亡くなった。雪を知らない旅人ではなく、風雪や降雪の恐ろしさを熟知している雪の中で暮らしている雪国の人たちと言うから一体何があったのか感想もない。自動車という文明の機器をいつの間にか絶対安全と信じてしまったのか。あるいは注意をしててもなおそれを上回る異常な風雪だったのか。
 文明に慣れ親しんだ人間達の自然に対する姿勢の甘さがあるのかも知れない。想定外の自然災害の続発である。地震雷火事親父、自然の恐ろしさは常に日常的営為の一として想定しておく事が肝要なのである。今どき親爺が恐ろしいなどと思う者はいなくなったが。 このように、自然は暴れることもあるが、実に几帳面に穏やかに流れるのが普通である。日々の寒さにうんざりしていたが、ようやく啓蟄(けいちつ)を迎えた。土の中の虫が陽気に誘われて動き出すという。その啓蟄を待っていたかのように寒気団が北に退き春の陽気が着実にやって来た。永井荷風の俳句「日のあたる窓の硝子や福寿草」がよく雰囲気を表現している。
 野の福寿草がキラキラと黄色い花弁を開きだした。この時期に花が咲き茎が伸び濃い緑葉をつけるが、夏には姿を消して地下にもぐって晩秋に花芽を出す。そのためスプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)「春の妖精」と呼ばれる。このように夏から秋にかけて地上から姿を隠してしまう花にカタクリやニリンソウなどがある。
 福を招き寿ぐ、何とも縁起の良い花で元旦に鉢植えが飾られるが、実は毒草で心臓麻痺を起こして死に至ることもあるという。綺麗な花にはトゲが隠されている。

<北風の中、啓蟄を待って花開いた野の福寿草>

  

                                            
  福寿草啓蟄迎え蕾あり雪降る北のたよりに震え

  幸福を寿ぐという福寿草落ち葉を割りて梅花の下に

  緑濃き色彩(いろ)なき冬も終わりかな啓蟄過ぎて福寿草咲く

  毒草と聞けば何やら緑葉と花の黄色が鮮やか過ぎる

  花言葉「悲しき思い」と辞書にあり春呼ぶ花は猛毒秘して

  花閉じる大陽(ひかり)に弱し福寿草春の陽嫌い春告げるとは