2012年元旦の「天声人語」は雑煮の話を枕においていた。<雑煮は心に根ざした食べ物である。土地土地、家々に流儀があって、こればかりは他家や他郷のでは駄目という人が、このご時世にも多い>
現職の頃を思い出した。3学期開始「正月明けの休みボケで授業にならんナ」というと、相棒が「餅の形状調べなんかどうッスカ。我が家は丸餅」という。つまらんナ「餅なんか切餅に決まってんだろう」と思ったが対案もなく雑煮調べと相成った。これがなかなか面白い教材で結局4時間も使って、学園祭の教科展示にまで発展していった。
調査結果は予想外で丸餅派が3割もいたことである。そして汁の作り方や具の内容が家毎に違うのは当然であるが、その雑煮のスタイルが全く変わろうとしないという事実である。どうしてその雑煮になったのかでは「母の実家の雑煮が継承されている」で、2世帯家族では祖母から母に伝えられているのだという。
母親はこの雑煮についてどう思っているのか、という問には「どこの家の雑煮もこういうものだ」と思って特に考えた事もなかったという。こんな回答を寄せた母親もいた「正月の三が日、献立に悩む事もなく、大助かりです。お雑煮バンザイ!」
因みに我が家の雑煮は<醤油の薄味、具は里芋・大根・人参でダシは鳥。切餅の表面を焦がして鍋にいれ味が馴染む程度に少し煮る> 程度の差があるにせよ全国こんなものと思っていたのだが、家々に流儀があって秘伝のように伝えられていたのだ。
相棒はまだ現職である。3学期の最初の授業で「我が家の雑煮」調べなんてやっているのだろうか。
<正月は日本酒ですね~、もちろん大関とは限りません>
風冴えて笹の葉揺れる門松の縄締め上げる職人の技
ミニチュアのドアに下げたる注連飾り開け閉め毎に鈴の音響く
粟餅を焼けばボロボロ粘りなく囲炉裏囲んだ貧しき戦後
元旦の熱燗一本押し抱き愚痴めくオヤジをふと思い出す