年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

09'師走暦<1>日向の里

2009-12-02 | フォトエッセイ&短歌
 小田急線伊勢原駅よりバスで約20分、東丹沢の懐・日向川の谷戸に位置する日向地区の里山に入る。秋は「彼岸花の里」で谷戸田は紅く炎のように燃え上がるが、晩秋のこの時期は紅葉が静かな彩りで揺れている。終点下車、バス停前が日向薬師(ひなたやくし)の参道入口である。
 日向薬師(高野山真言宗)は薬師三尊を本尊とする病気平癒、特に眼病に霊験ありとの信仰を集める。

<参道入口のコケに覆われた石像が静謐な陽射しの中で足音に耳を澄ます>

 表参道の苔むした七澤石のむき出しの自然階段を登って行くと寺林に護られた山門が迎えてくれる。開口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体の仁王像が眼光鋭く訪れる参詣者に睨みをきかせるている。正式名は金剛力士(こんごうりきし)像で、仏教の護法善神(守護神)である。
 当初の像は天保元年に火災で焼失し、現存する像は天保4年に後藤慶明により復元されたとある。その後、明治20年代に子の後藤慶広とその長男・運久により補修彩色された。

<仁王様の阿吽(あうん)に迎えられヨッコラショ!メタボにもご利益あれ>

 山門を潜って常緑樹や色づき始めた広葉樹の生い茂る急坂を歩く。この参道や本堂を取り巻く境内にはスダジイ、モミ、ウラジロガシ、イロハモミジ、タブノキ、ケヤキなどの自然植生が多数生育している。
 スギの植栽樹も見事な森林となるなど、専門家によると群落分布からの特殊性も指摘されてるという。そのため神奈川県指定天然記念物にも指定されている。
 階段を登りきると広い境内に木々に囲まれた本堂(薬師堂)が待っている。本堂の茅葺き屋根には雑草が生え、傷みが進んでいる。

<日向薬師の本堂。正式には霊山寺の別当坊であった宝城坊(ほうじょうぼう)>