年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

09'秋浪漫<3>安積疎水

2009-11-17 | フォトエッセイ&短歌
 磐梯朝日国立公園に属する猪苗代湖は湖面が標高514mで全国でも有数の標高の高い湖である。冬には、強い季節風に吹き上げられた水しぶきが木などに付着して、そのまま凍り付いてできる「しぶき氷」が有名である。天鏡閣(てんきょう)からみる「しぶき氷」はどんな光景になるのだろうか。

<穏やかな陽を受ける天鏡閣の赤レンガの正門。落ち葉が舞い始めいる>

 天鏡閣から西へ山裾を抜けると戊辰戦争で会津城下の防衛戦とされた十六橋攻防戦跡である戸ノ口原がある。この水門の歴史は古く弘法大師が16の塚を作り橋を造ったのが始まりだという。
 現在の水門は明治12年着工、「安積疏水」事業の一環として石造の十六橋水門が建設されたのがその始まりだ。オランダ人お雇い技師のファン・ドールンの設計・指導による。
 安積疎水(あさかそすい)の開通は猪苗代湖の水を安積の原野に引き入れ、豊かな穀倉地帯に変えた。その後、猪苗代水力電気株式会社が発電所の建設に際して水利調節のため大正3年に電動式ストーニーゲートに改築している。

<安積疎水十六橋水門。那須疏水・琵琶湖疏水と並ぶ日本三大疏水の1つ>


 安積疏水の水は、猪苗代湖より取水し、福島県郡山市とその周辺地域の安積原野に農業用水・工業用水・飲用水として供給されている。この発想は明治維新で職を失った各地の士族が反乱を起したので、その対策として安積原野開拓が計画された。その結果、郡山市に灌漑区域面積、約9,000haの広大な穀倉地帯が誕生し一時期、米穀生産量日本一の市となった。
 農林水産省が日本の農業を支えてきた代表的な用水を疏水百選(そすいひゃくせん)として選定し次世代に伝えようとしている。水と土と里を維持する活動の一環だとしている。

<「疏水百選」に選定された安積疎水の水門拡大図。不毛の地を変えた>