年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

桜咲く

2008-04-01 | フォトエッセイ&短歌
 日本には古来より「ウメ暦」「ヤナギ暦」などの自然暦がある。花や鳥の様子で農作業の手順を判断したのだ。中でも「サクラごよみ」は優れた自然暦である。何故ならパッと開花し、サッと散るので誰の目にもはっきりした季節の指標花となり、農耕開始を告げるからである。そのためか、各地に春の祭礼の日(花見の日)を定めて『花見に行き、物忌みする風習』が残っていたという。
 春の陽に盛り上がって咲き誇る満開の桜は目を奪われる美しさである。が既にその時はハラハラと散りさっていく。儚い花の命は、また人の命の儚さをなぞっているのか。
 哀しくも二度と繰り返してならない特攻隊を描いた映画「ホタル」(監督:降旗康男・高倉健主演)を想う。
 貴様と俺とは同期の桜/同じ兵学校の庭に咲く/咲いた花なら散るのは覚悟/みごと散りましょ国のため。元の詩は「少女倶楽部」に発表された西条八十の「二輪の桜」。君と僕とは二輪の桜 /積んだ土のうの影に咲く/どうせ花なら散らなきゃならぬ /見事散りましょ国のため

 3月初めから気象庁が発表する「染井吉野(ソメイヨシノ)の開花予想」を示すのが「桜前線」であるが、これはマスコミの造語で気象庁の公式用語ではない。気象庁の資料では、サクラの「開花予想の等期日線図」というのだそうだ。気象庁が示す「開花」とは、花が5~6輪、開いた状況。東海・関東地方では約7日で8割開花しそれを満開と称するが同時にハラハラと散り始める。
 今年は「桜前線」の北上が早く、加えて一気に満開状況で、予定された桜イベントの時には桜吹雪となって散り去ってしまいそうである。その桜吹雪の華やかさは花見の最後のステージとして愛でられているが、それが終わると葉桜である。
          
 桜咲く満開の芝公園のサクラ越しにそびえる東京タワー。東京のシンボル・観光名所として知られる東京タワー(日本電波塔)もすでに建設後、半世紀。経済成長のシンボルとして注目を集めた世界一の自立鉄塔も今その二代目が生まれようとしている。頂点より赤色(インターナショナルオレンジ)と白色を交互に配した障害標識ともなっているが、曇天で鮮やかな彩りとはならなかった。