年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

台風:時計御殿を襲う

2007-09-09 | フォトエッセイ&短歌
 相模湾から小田原に上陸した台風9号はそのまま東北を北上し津軽半島に抜け、さらに北海道を横断しオホーツク海に消え去った。上陸すると雲散霧消する情けない豆台風と違い最後まで強力な暴風雨の勢力を保ち、日本列島1/2を暴れまくった。何かアッパレという陣取りである。
 航空機を払い除け、列車をなぎ倒し、自動車道を閉鎖させ、道路を寸断するなど、毎度お馴染みの「猛威のつめ跡」である。その刻々と進む台風の進路をTVで眺めながら、ジッと道を削り取るつめの動きを見ている事になる。進路に予定される地域住民はたまったものではない。飛ばされて死者がでました・流されて行方不明の模様・重軽傷何名に達しましたとリアルタイムの放送だから。
 叡智を集めた人間の文化は何ともはかなく心細い。それに比して計り知れない恐るべき自然のエネルギーである。

 避難勧告の解除を聞いていたかのように、堤防を越えようかと盛り上がって渦を巻いていた濁流は徐々に水位を下げて行く。台風一過、穏やかになる川面に合わせるようにコバルトブルーを刷毛で掃いたような淡い透き通るような空が広ってくる。それも束の間で陽は西に沈んでいく。
 濁流の何が不気味かといえば茶色というか泥色に濁った渦巻く奔流である。それも今は夕闇に消えトウトウと夕日を映しながら満足げにのたうっている。


 台風襲撃の数日前、多摩川河川敷きを歩く。六郷あたりから二子玉あたりは青テントの密集地である。何が個性的と云ってもこのテント小屋の芸術的家屋に勝るものは無い。ヒト一人横になるだけの寝袋型から夫婦に子2人は入れる別荘型まで、柱のある物・ロープ掛けの物まで、ソリャア~飽きることはない。
 <時計御殿>に出会った時には流石にうなってしまった。これはもう青テント文化財級軽便建造物である。3方の壁に時計がびっしり、しかもほぼ同じ角度で針が動いているのだ。
「写真撮ってもいい?」「ああ、構わん」「拾って来るんですか?」「…*!」<拾うってのがまずかったかな。リサイクル!>「時計、趣味ですか」「TIME。問題は時間だ!」…チョット哲学勉強して出直さないと…


 戻った残暑を背に、時計御殿に足を運ぶ。嗚呼無惨!慚愧に堪えん!文化財に認定出来たかも知れんのに。御殿は跡形もなく流出していたが、ドロドロの土砂の中で主人は既に復興の槌音を強くたてていた。