年月に関守なし…… 

古稀を過ぎると年月の流れが速まり、人生の終焉にむかう。

委員会の崩壊です

2016-03-23 | 俳句&和歌
◇◇◇   委員会の崩壊です
 3月9日の衆院外務委員会の松島議員の話なので旧聞に属する。知人に聞いてwebの中継動画を見て呆れかえった。岸田外務大臣の(尖閣問題ですよ!)答弁中に隣席のボサボサ髪の松島外務委員が気抜けの様でウツラウツラとやっている。
 やおらケイタイを取り出しふんぞり返ってピコピコ、そしてあ~あ~と大アクビし机にバッタリ、やがて顔を上げ目をこすり読書タイムとあいなりも遂に熟睡状態に陥った。 日刊ゲンダイは「まるで学級崩壊したクラスで勝手気ままに振る舞う“悪ガキ”みたいだ」と醜態を報じた。この緊張感ゼロの体たらくでは、尖閣(中国:釣魚)・竹島(韓国:独島)の解決には至らないだろう。しかも、緊急事態法の閣議決定のさ中にだ。
 「うちわ問題」でわずか2カ月で法務大臣を首になり公選法違反容疑で告訴された松島みどりは辞職どころか、政調副会長の任にあり、外務委員会に所属している。自民党の政策や外交問題、こんな低俗議員が関わっていることで「自民党が崩壊」するのは構わないが、税金を納めている主権者である国民としては許し難い。
 電波止められたら大変だし、睨まれたら勲章貰えないしで、マスコミをジャーナリストも静かなものです。天下泰平、波立たず。


 
 
 
   袖ほぐれメタボに馴染んだセーターに別れを告げる冬の終わりに
 
   赤松は菰外されて武者震い筋骨哮る仁王のように
 
   街角をストレスためて我行けば往く手さえぎるデモ隊のコール


 
 
 
     遅き日や100円ショップを二回り
 
     日本死ね!春雷のごと議事堂に
 
     思春期の儚さもある葦の角

 
 
 
※松島の読書=『世界最強の女帝 メルケルの謎』 (文春新書)だそうです。
※遅き日=日の暮れるのが遅くなったな~と感じられる。春の季(暮遅し・夕長し)
※葦の角(あしのつの)=葦角(あしづの)。葦の鋭い芽 春の季(芦・葦牙)

どうせ 先生は聞いてくれない

2016-03-14 | 俳句&和歌
◇◇◇      どうせ 先生は聞いてくれない
 
  広島県安芸郡の府中町立府中緑ヶ丘中学校の男子生徒が12月8日に亡くなり、翌日全校集会が開かれ「急性心不全で急死」と説明された。それから3ケ月も経ってから学校の誤った「進路指導が原因の自殺」と報じられた。真相が闇に葬られる寸前であった事に驚いたが、自殺の原因とされる「指導なる」ものには耳を疑った。
  生徒が私立高校への専願受験を希望したところ、担任から万引の非行歴があるので「推薦は出来ない」と廊下の立ち話で言われたという。万引は学校側の記録誤記、ミスはその場で指摘されたが訂正が為されず、2年後の進路指導にその資料が機械的に使用されたという事である。
  担任教諭の責任を追求する過激な報道が続いているが、どうも学校全体の生徒指導の構造的問題のようでもある。一体どのような「指導」があったのか。何も無かったとしか言いようがない。
  生徒の万引があった場合、万引にいたる生活の点検やその背景を明らかにして、自分と向き合わせて反省を迫るのが生活指導ではないのか。反省し学校生活に問題がなければ、人間的に一歩成長した事になり、万引きはリセットされる。それが指導というものだろう。
  そういう一切の指導をしないで一年時の万引資料を持ち出して非行歴を理由に「推薦不可の進路指導」を行ったのだ。
  取り返しのつかない失態である。「どうせ言っても先生は聞いてくれない」という少年の言葉が寒々と響いて来る。
 
 
 
 
  老梅の耐えこらえいる絵馬重し「願・合格」の重ね重ね着
 
  廃校の運動場のあの辺り朝礼台は胸中にあり
 
  是非もなし 想像力のなき友にこまごま伝え諍いになる



 

    受験子はゲーム機握り深海魚
 
    ヘディングの少女の髪が春日斬る
 
    春泥をゴールキーパー勲章に

体育の授業は手裏剣の体験です

2016-03-06 | 俳句&和歌
◇◇◇   体育の授業は手裏剣の体験です
 
 土産のお釣り計算で「数学」履修、洋画の映画で「英語」履修、伊賀流忍者博物館で手裏剣投げを「体育」の履修、……生徒の学力が低いので学習意欲を引き出す為の授業の工夫です。なんともユニークでそんな授業の学校もあっていいのかナ~。三重県伊賀市の株式会社:私立ウィッツ青山学園高校(通信制)の報道の感想である。
 ところが、文部科学省が「極めて背信的な授業で在校生の救済措置が必要」、続いて東京地検特捜部が詐欺容疑で家宅捜索、教育評論家の尾木ママは「あり得ない話、強制閉校措置をとるべし」との続報がありこれは一体なんだと驚いた。
 在校生のインタビュー。「何もしないで高校が卒業できる」がウリです。「教材が年に1回ドカーンとリポートの課題と一緒に送られて来るが、リポートは提出しなくてもいいんです」。通信制で義務付けられている2回の「スクーリング」であるが、バスで本校に乗り付けて記念写真の撮影をしてお終いです。どうもスクーリングに参加しましたという「証拠写真」らしいです。
 東京地検特捜部は何にメスを入れようとしたのか。家庭の教育費負担を軽くするために国が授業料を支援する「高等学校就学支援金制度」、生徒1人あたり年間最大30万円が支給される。この制度を悪用して「支援金」1億5711万3千円を不正受給したとして詐欺容疑で地検が手入れを行ったのだ。
 カラクリの手口は定かではないが、教育を騙って国から税金を掠め取ったのだ。「政治・経済」の授業を生徒に実践して示したのかも知れない。

 

   同期会通信はがきに墨跡で連絡無用と代筆のあり

 
   君倒れ「ハガキヨコスナ」ほっとけと金釘流に怒り寂しき

 
   隧道の脇の氷柱の争奪戦跡エレベーターの乗り口あたり

 

      南妙寺紅白梅の乱れ咲き
 
      老梅のずんぐり幹の花ひとつ
 
      路地の梅散ってしまえば忘却の



 
※株式会社立学校=株式会社が設立し運営する学校。教育の質も低く、高卒資格取得を売りにしたビジネスとの批判がある。
※スクーリング=通信教育で短期間集中的に学校教育と同様な教師による指導を受ける。

昭和は遠く

2016-02-25 | 俳句&和歌

◇◇◇   昭和は遠く
  横須賀市内の戦没者遺族でつくる横須賀遺族会が、2015年度限りで解散した報道があった。戦後70年、会員の減少が進み「犠牲者を慰め平和を祈念する集い」などの出席者も僅かとなり、会を存続して行く事が困難になったからとある。
 現在、56団体が加盟する県遺族会の会員は1万3千人で平均年齢は75歳。「こうした高齢化が進み解散する地域で出てくる」と指摘する。靖国神社に昇殿を許されて参拝する遺族、閣僚の参拝で大騒動、自民党の大票田…遺族会の支部も曲がり角に来ている。
 昨年の秋、福岡県遺族連合会(古賀誠会長)が東条英機元首相らA級戦犯14柱をの靖国神社から分祀するよう求める決議をした。これに賛同する意向を示したのが神奈川県遺族会である。反対を表明したのが北海道・兵庫県両遺族会である。
 決議の理由は「天皇皇后両陛下、全ての国民にわだかまりなく靖国神社を参拝していただくため」とし「遺族が元気なうちに実現したい」と説明している。
 これに反対する団体は「これは、反日左翼陣営が提起した靖国神社のA級戦犯分祀論である。我が国には戦犯は存在しない」と言い「毒餃子と同じくシナ原産のものです。問題は国内に、毒餃子でもよいからシナのために日本が中毒すればよいという勢力があり、シナに呼応していることです。古賀誠はその一人だ」「福岡と神奈川は売国奴!日本の敵、日本から出て行け!」なんとも…
 反戦平和のモニュメントの象徴として静かに誰もが戦争を考える場所にならないのか。

 

  繋がろう「絆」のポスター陽に灼けて薄れ忘れる仮設と共に


  立法府かしまし娘の丸川に島尻高市参戦丸山

  往還の旧道矢じるし歴史めく陣屋横町はカギ十字路なり

 

 

     陽炎いて白きチョゴリの九段坂


     ざわめいて鳥居をこえる春塵や


     大凶を引き当て結ぶ春の夕


ゲスの極み

2016-02-11 | 俳句&和歌

◇◇◇  ゲスの極み

 安倍内閣の最重要閣僚の一人、甘利経済再生担当相が辞任した。建設S社が道路建設をめぐり独立行政法人都市再生機構(UR)から2億2000万円以上の補償金を引き出した。その口利きの心付けとして甘利側に1200万円を渡したという。
 甘利明氏自身も金銭授受を認めて辞任に追い込まれた。
 未だ詳細は不明だが「あっせん利得処罰法」違反、「政治資金規正法」違反、刑法197条1項以下の「収賄罪」にも当たるとも云われる。庶民には実感が湧かない。大臣の禁じ手で野党は安倍総理の任命責任と真相究明を迫っている。
 自民党内では青天霹靂、何故こんな事態を迎えたのか、某週刊誌への疑念と怨嗟で充ち満ちたであろ事は想像に難くないが、確固たる証拠が揃っているのでどうしもない。山東昭子派閥会長は「(週刊文春に)告発した事業者のあり方は<ゲスの極み>」と記者団に語ったという。
  現職の参議院議員で自民党の派閥の領袖を務めている「先生」の発言としては余りにお粗末である。甘利氏に猛省を迫り「政治と金」の問題を糺していくと云えないのか。
 未だ検察は動いて無いが、極めて犯罪性の高い事件である。山東先生「ゲスの極み」ですよ!

 

   去年今年如月待ちて一株のボケることなく木瓜は花ひらく

 

   質問にならぬ自民の質問に嬉々と改憲語るは総理

 

   マスコミをシャブ漬けにして袴穿きTTP署名密やかに終わる

 

 

     三分咲き梅の古木は匂い立つ

 

     恵方巻き豆撒きまでも食い尽くす

 

     麦踏みの語感懐かし句のありて

 


※下衆の極み(げすのきわみ)=この上なく下劣で品性が卑しいさま、人として最低であるさま(実用日本語表現辞典)


夢のまた夢

2016-02-03 | 俳句&和歌
◇◇◇   夢のまた夢

  昨年の暮れに栃木市役所のエレベーターで年末ジャンボ宝くじ2000枚(購入価格60万円)が入った袋を拾った60代の女性が市に届け出た。袋には「宝くじが当たったら、大雨災害の被災者に使ってください」と鈴木俊美市長宛のメモが入っていた。
  1等・前後賞合わせたら史上最高の10億円である。カンパ60万円では話題にもならないが『捕らぬ狸の皮算用』とは云え大きなニュースになる。栃木市内の濁流による被災地の映像が目に焼き付いていて「何とか1億でも」と思わざるを得なかった。夢を仕組んだ御仁に拍手であった。
 ところがである。市は宝くじを警察に、警察は拾得物として持ち主を捜したという。持ち主が現れない場合は栃木県の収入になってしまう(警察は県知事の所轄下)。
 その事を知った女性は「実は自分が購入して置いた」と名乗り出たため、宝くじは女性に返還された。女性はあらためて栃木市に寄付したという。「遺失物法」の為せるワザで、もし10億円当たった宝くじを市が使っていれば「遺失物横領罪(刑法254条)」に問われ事になるのだそうだ。
 市が組・番号を確認したところ<当せん金は、5等3000円が20本と6等300円が200本の計12万円>だった。鈴木市長は「残念ながら何億円は当たりませんでしたが、大切に使わせていただきたい」と神妙に話している。
 10枚3000円で1等7億円をゲットしようとキリキリしている筆者にとって60万円は気の遠くなるような数字である。結果はトホホッ12万円!余りにリアル過ぎて、お粗末な一席に!
 
 
 
  ジャンボくじ「当たらないよ」と云いつつも密かに買って念力込める
 
  耳遠く話半分だけれども相づちうまく前後をつなぐ
 
  往還の旧道矢じるし歴史めく出会い求めて歩く歩けも

 
 
 
    初夢や夢にもならず覚めにけり
 
    風花に「紅茶タイムか」何となく
 
    如月の宙掻き混ぜる老冬木


 

※往還(おうかん)=主要な道路。街道
※如月の宙(きさらぎのそら)=2月の空

款冬華

2016-01-27 | 俳句&和歌
◇◇◇  款冬華
 
  「冷ゆること至りて甚だし」大寒である。長崎の積雪17㎝の坂道の映像を見てるとゾクッとして納得する。奄美大島に115年振りに雪が舞ったというが、いつ頃なのか。
 2016-115=1901(明治34)年で、田中正造が足尾鉱毒事件で天皇に直訴、その1ケ月後には青森歩兵連隊の八甲田山無謀雪中行軍で210名中199名が死亡するという陸軍史上最大の事故が起ている。大寒の時期であった。
 映画『八甲田山』(新田次郎原作『八甲田山死の彷徨』)で北大路欣也扮する神田大尉の「天は我々を見放した」は当時の流行語になった。徳島大尉の高倉健の熱演が思い出される。兵卒の生存者は4名だけだったが、彼等は山間部の者でマタギの手伝いや炭焼きに従事している若者だった。
 そんな訳で「大寒」を暦本で見てたら「款冬華」の三文字に出会ったが、読みも意味も解らなくて苦労してしまった。なんと「ふきのはなさく」と読み、意味は「厳しい寒さの中、蕗の薹(ふきのとう)がそっと顔をだし始める」という内容だそうだ。
 ついでに受け売りの解説。この頃の「寒の水」は雑菌が少なく長期保存に向いていて体に良し味よしで、凍り豆腐、寒天、酒、醤油、味噌などを仕込む時期となっている。
 冬来りなば春遠からじ……1週間で立春を迎える。蕗の薹の天ぷらで一献、季節に恵まれた地勢の幸せである。


                     
 
 今日もまた列島は風雪なれど款冬華春の気配も
 
 街道にダイコン山と積みおいてレジは空カン人影もなし
 
 大根は水滴らせ葉を広げ冬枯れの畦で寒風愛でる


 
 
 
          改憲の騒動連れて年明ける
 
   三猿にさてどうするかと酒を酌む
 
   裸木は大事も些事もすっからかん
 
 
 
※款冬華(ふきのはなさく)=二十四節気の大寒(初候・次候・末候)の初候にあたる。

満員電車に乗れず

2016-01-20 | 俳句&和歌
◇◇◇  満員電車に乗れず

 記録的な暖冬か続いていたが、18日早朝には南岸低気圧の発達で関東地方は雪に見舞われた。東京23区でも積雪を記録し滅多にお目にかかれない雪景色を見せてくれたが、如何せん5㎝位では綿帽子のような深々と鎮まる、視界が一変するような雪景色にはならなかった。
 しかも、雪は小雨に変わりシャーベット状の醜い斑模様に変わり、夕刻には雲の切れ間から冬陽が射し始めていた。だが終わってみれば「滑って頭の骨」骨折など206人が怪我をしたと報道された。
 たかが「これっぽちの雪」だったのだが、交通機関への影響は甚大で航空便と高速道路はマヒ状態となった。とりわけ鉄度は壊滅と云っても過言ではない。来ない電車でホームは一杯、改札口から駅舎外まで乗客の列が延々と続いた。こういう時に通常では見聞することがない思わぬ事態が飛び出して「そうなのか」なんて事があるものである。
 玉ノ井部屋の東輝は午前6時半に部屋を出て国技館に向かった。電車は遅れに遅れ、ようやく来る電車も超満員で力士の渾身の押しでも乗車出来ない。なにしろ125キロの巨漢、乗り込むスペースが確保できない。結局、2時間遅れで到着し、予定の18番後に翔希と対戦、決まり手は押相撲ではなく「寄り切り」で初白星をあげた。
 宮城野部屋の翔希(しょうき)は 74キロの西序二段八十六枚目の弱冠17歳。午前7時に場所入りし、相手がいつ来るか分からないので気持ちが切れた「待ちぼうけ」の末に敗れた。幕下以下の彼等を正式には力士養成員と呼ぶ。
 東輝も翔希も特段の出世をして関取にならない限り、ニュースになるのはこれが最初で最後である。それにしても6:30の出勤時間とは早いナ~

 
 
 
  黒星を十個並べて金星や笑みは半分マイクに向かう
 
  大銀杏乱れ清しく前頭大関倒しどっと転がる
 
  臥牙丸や大砂嵐の面魂 故国背にして猪突の蹲踞


 

   悴かんで立合う前に往される

   懐手サッと手を抜く審判団
 
   初場所に冴ゆる力士の玉の汗

 
 
 
※東輝(あずまひかり)=東序ノ口筆頭の22歳。部屋は足立区西新井4
※悴む(かじかむ)=手足が凍えて思うように動かなくなる。 冬の季
※往なす(いなす)=急に体をかわして、攻撃に出る相手の体勢を崩す
※冴ゆ(さゆ)=透き通ったような、凜とした様子。 冬の季

甲州トウモロコシ

2016-01-13 | 俳句&和歌
◇◇◇  甲州トウモロコシ
 新年早々「富士写撮会」の写真展にNさんの誘いがあって出掛けた。ネーミングの如く富士山を撮影するグループの写真展である。四季の変化に移ろう霊峰、黎明の輝き、昼下がりの雲との戯れ、夕焼けの赤富士と雄姿のシルエットとたたみ掛けてくるような作品に圧倒される。
 厳かな泰然としたMt.Fujiそのものを被写体とするグループのようで、それはそれで見応え充分なのだが、私的には共感しにくい作品もあった。以前、忍野村の近くで富士山を背に「甲州もろこし」を干している風景に出会いデジカメを向けたことがある。
  昔ながらの「トウモロコシの掛け干し」。冷涼で稲作が難しかった村で食料として栽培された恐ろしく固い甲州トウモロコシで粉にするために乾燥させる作業である。富士の裾野を駆け抜けてくる寒風の中に村人のつましい暮らしの歴史を感じさせたものである。
 今回、作品展に行く切っ掛けになったのは他でもないNさんから頂いていた、冠雪の始まった富士山を背景にした「大根の掛け干し」の写真である。それはタクアン用に掛け干しした真っ白い大根の写真だった。甲州トウモロコシを思い出した。
 子供の頃の話。タクアンは自家製で大根洗いは子供達の仕事だった。2本を葉のところをワラで縛って振り分けにぶら下げて干したのである。ほどよく萎びたところで粗塩だけで樽に漬けるのだ。重しの「沢庵石」を載せて終わりである。10日もすれば瑞々しい沢庵が丼一杯食卓にあがる。
 写真展にその作品は無かった。


 
   黎明の朝靄払い佇立する旭日一閃富士の肩より
 
  富士抱く清冽池もなんのその忍野の里は異国語の渦



 
    吊るし柿富士の冠雪真に受けて
 
    紅玉の歯にシャッキリと寒の入り
 
 
 
※甲州トウモロコシ=一時、姿を消したが、村おこしで栽培農家が増えきた。
※紅玉(こうぎょく)=小さくて酸味が強い真っ赤なリンゴ。

三猿の教え

2016-01-06 | 俳句&和歌

◇◇◇   三猿の教え
 今年の干支は「丙申」で申年である。本来の読みは「しん」、これを「さる」としたのは無学の庶民に十二支を理解させよと動物の猿を当てたのだと物の本に載っている。
 これが、しっかり定着し年始には欠せない動物となり、年賀葉書は猿の繚乱である。霊長類で我々ヒトの仲間であるが、猿知恵、猿真似、猿芝居とヒトより劣るものと貶めている。アメリカでyellow monkeyといえば日本人に対する最大の侮蔑としても用いられる。
 年賀状に「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿のイラストがあった。三猿の謂われについては中学生の頃に聞いた記憶がある。江戸時代「お上に対する庶民のあるべき姿勢」を表現したものだと云う。民衆は為政に対して「目をつぶり、耳を塞ぎ、口をつむんで年貢を納めていれば天下泰平」。士農工商の江戸時代はこうして300年間も続いたのだと。 君たちはこういう封建的姿勢では駄目だ!主権在民だ!戦後教育を感じさせる三猿の解釈であるが、民主主義と重なってすごく納得させられた記憶がある。
 しかし、三猿の解釈がこればかりではなく、この封建的思想云々は少数派である事を知ったのはずっと後の事である。そればかりでなく三猿話は猿の生息している所、世界中にあるというのだ。
 マハトマ・ガンディーは常に3匹の猿の像を身につけ「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」と教えたという。アメリカの教会(日曜学校)では三猿を用い「猥褻なものを見ない」「性的な噂を聞かない」「嘘や卑猥なことを言わない」よう諭したという。如何にもカトリックの国らしい。三猿にもお国柄の文化がうかがえる。

 

 初詣背を震わせて土下座する限界老人なにを祈るか

 恙なし 六十余年も延々と意味有りや無しや賀状が続く

 

   追羽子の響きにホッと足止まる

   鰐口の響きのこもる初景色

   雪吊の縄のカラカラ淑気なし

 


※丙申(ひのえさる)=十干の「丙(ひのえ)」と十二支の「申(さる)」の組合せ
※鰐口(わにぐち)=仏堂の軒に掛かっている丸い仏具。参詣人は布綱で鳴らす。
※淑気(しゅくき)=新春のめでたくなごやかな雰囲気