知音札記

現代日本の演劇、映画、音楽など芸能関係を中心にレビューを書き、語る。

映画「青夏」、「ダブルドライブ」、「高崎グラフィティ」~共通する地方の絶望感

2018-09-09 14:10:07 | 演劇 映画 音楽
  そして若者の想いを阻止する社会の仕組みとそれにどう対峙していくかを考えること。実は、それは若者だけの話でなく、高齢者の地方移住という問題も絡んでいると感じた。

  三重県の上湖村を舞台にした「青夏 君に恋した30日」はその設定(高校生が主人公)から一番甘味の強い作品に仕上がっている。2018年9月5日、15:30~渋谷TOEI。

  とにかく若者が未来を選べない社会は是正されるべきなのは明らかである。優れた才能はどこからでも探し出されるべきなのに、現実は人材登用の不公正がいまだに続いている。そして、ますます差別、偏見は広がる一方で、そういう厳しい状況の中、暗黙の了解で「妄想」が許される恐らく人生で唯一の時期が「青春」なのだろう。
ただ、その妄想を徒に扇動するのが大企業とマスコミである。視聴者に同じアイドルばかりに憧れを持たせ、原宿で買い物、中華街で似非中華を食べて等々といった行動を誘発する地上波メイン局と悪徳大企業。そういう意味で、本作は、その巨悪が仕掛ける罠を潜り抜け、恋愛を糧に自分らしく生きる道と術を獲得する方向に導く好作品だと思う。情報の洪水の中に溺れることなく、自らの立ち位置をしっかりと見据えることの大切さが描かれている。
  主演の佐野勇斗君、DISH//の橘柊生に似ている。演技はまだまだだが、素直な雰囲気で好感が持てる。40過ぎてもちっとも上手くならない老舗アイドルよりは、現時点ですでにずっといいし、将来性がある。公開間近の「3D彼女リアルガール」にも注目したい。
  もう一人の主演者、葵わかなさんは、絵にかいたような妄想女子高生を演じて見せた。主演の二人を囲む、友人やカップルのキャスティングも自然で良かった。特に特撮ヒーローからデビューの岐洲匠君やテニミュ出身の水石亜飛夢君、さらにダンスボーカルユニットSUPER★DRAGONの志村玲於君らが伸び伸びと演じている姿は、アイドルが主演の映画でも質の高い作品が生まれる可能性を期待させる。
  Mrs.GREEN APPLEの歌う主題歌「青と夏」も青春もの特有の嫌らしさ、爽やかさの押しつけがなく、良かった。テレビ出演で、この曲を演奏するに当たって、本作との関連の紹介がどれほど行われたかは定かではないが、テレビ局の大人の事情で制御されなかったことを信じたい。
  「ダブルドライブ」(2018年9月5日、21:15~シネマート新宿)は上記作品とは対照的な設定で、青春を描き出している。社会から無理矢理はじき出され、都会はもとより、地方にも行き場、居場所を見出すことができない若者の姿である。都会はもとより、地方も闇社会と政治家の利権の犠牲者が後を絶たず、その状態を維持する仕組みによって支配されている現実が目の前に突き付けられる。

  主役(藤田玲)の親友役でその裏社会的共同体の総理大臣という設定の役柄が発するセリフのとおり、まさに「権力者の奴隷になっていることに気づいていない国民」への警告が込められている。藤田玲君と佐藤流司君の汚れ役の上手さに感服した。本シリーズには今後も注目して行きたい。
  「高崎グラフィティ」(2018年8月30日、18:50〜、アップリンク)は上記2作の中間的というか、恋愛、闇社会、地域性などの要素を、一見高校生特有に見えるが、実は年代を越えた人間関係の縮図の中で、比較的均等に組み合わせている点で、より現実的に感じられる。地域性の中に潜む排他性は、若者の都会志向を助長する一因であると同時に、都会高齢者の地方移住を躊躇させる要因でもある。高崎のように東京に比較的近い場所は、より遠い場所における若者の都会志向とどのような違いがあるかという点はさておき、とにかく都会でなければ能力が発揮できないと思わせる意識、価値観とそれを引き起こし、かつ決して変えさせようとしない悪循環の源を徹底的に破壊しない限り、この国に明るい未来、愛する人の幸せはないと思う。最近頻発する豪雨と地震への政府の対応を見て、この国の国造りの施策そのものが間違っていたことは明らかなのに、悪の仕組みにまだ気づいていない勢力こそが、この国を絶望へと導いている。
  近年、映画の分野ではこうした地方を舞台にした作品が多い(「ローカルボーイズ」など)のは、都会と地方の関係性を見直す必要性の表れである。旧態依然の文化中央集権国家の日本を根底から覆すのは、都会、地方ともに若者とそれを支援する年配者の意識如何にかかっている。とりあえずは、メジャーものばかりを垂れ流し続ける主要マスコミにNOを突き付ける同時に、それに左右、支配される愚行からの脱却が老若男女問わず求められている。

  上映後のトークショー後に川島直人監督からプログラム冊子にサインをいただいた。監督、ありがとう!

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