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日橋川、魅力ある水力発電を教育や観光に活用しよう

2021年04月06日 | 土木構造物・土木遺産


猪苗代湖を水源とし、日橋川から阿賀川、そして阿賀野川を経由して日本海に。猪苗代湖が日本海と通じていることは前回説明したとおりだが、日橋川には、まだまだ魅力がある。それが水力発電所。
日本屈指の水力発電量を誇る阿賀野川水系では、明治期から昭和にかけて盛んに電源開発が行われた。日本屈指の豪雪地帯を抱える只見川における日本発送電(日発)のダム建設計画、先に紹介した鹿瀬ダム(2020年10月22日記事参照)は有名だが、日橋川では大正期から、首都圏への電灯を点すために水力発電・長距離送電が行われていた。

これは安積疎水による開発が早かったこと。それ以前から会津城下を潤すための生活用水として、戸ノ口堰からの取水(写真上:十六橋水門のすぐ下流の戸ノ口堰貯水湖と取水口)が行われていたが、ここから会津盆地までのわずかな間に、300メートルの高低差を駆け降りる日橋川に目が向けられていた。
日橋川では、建設した当時の運営会社は違えども、6か所の発電所が東京電力(東京電力リニューアブルパワー)が管理し、現在も合計16万キロワットを発電している。そのほかにも、戸ノ口堰から水を引き入れている金山川には、三つの発電所、近年では小水力の発電所が建設されている。
猪苗代の水と灌漑の歴史と、そしてこの地方独特の地形により、山の中を発電用の開渠・暗渠の水路が駆け巡っているのである。(写真下:戸ノ口堰から猪苗代第一発電所に向かう導水路、そして会津若松市河東町から見る会津盆地)



日橋川の発電は、上流で水の取水口を設けて、導水路で水を引き込む「流れ込み式」を採用している。猪苗代第一発電所から第二発電所へ、そして猪苗代第三発電所と日橋川発電所で使った水はいったん日橋川に放出されるが、下流では猪苗代第四発電所と金川発電所がその水を使う。
一番古い日橋川発電所は明治44(1911)年建設(送電開始は翌年)、最も新しい猪苗代第四発電所でも大正15(1926)年というから、現在脚光を浴びている他の阿賀野側水系のダムより古いものばかり。
(写真下:猪苗代第一発電所とそのすぐ下流の第二発電所用の取水口。そして第二発電所の全景と第三発電所へ水を供給するための貯水池)



猪苗代第一発電所と第二発電所は日本遺産に登録(猪苗代第一と第二は、建て替え前まではレンガ造りだったとか。これを見れないのは残念!)。また第三発電所と第四発電所の発電所建屋は、RC造りだが古代ローマ風のデザインで、大きな窓と窓の間にエアダクトを兼ねたピラスターが突き出ている。何とも凝った作りが評価されてか近代土木遺産2800選でBランク。(写真下:いずれも第四発電所。第三発電所は、なかなか見れない場所にあるもので。)

この日橋川が持つ物語は、学習素材としても、観光のルートとしても、魅力的に見えるんですが、そう思うのは私だけ?
もしかして、すでに活用されている?観光産業において、日本の近代産業遺産群を巡る「猪苗代物語」なんてツアーがあれば、ぜひ参加してみたいと思うのだが。



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