時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

蝉しぐれの街

2012-08-03 | essay



八月。

気がつくと、あちこちで力強く蝉が鳴いている。
関東の蝉は「みーんみーんみい~~ん」やら、「ジー・ジ・ジ・ジ」と、とても暑苦しい音色。

先週、父が二度目の心筋梗塞で倒れ、急遽大阪へ。
強運に恵まれている父はまたもや奇跡的に素早い復活を遂げた。

久しぶりに歩く灼熱の大阪の街。。。
父の無事を確かめ、ほっとしたわたしの耳に
ふいに飛び込んできたものは、懐かしい蝉の鳴き声。

あちらの蝉は、「シェシェシェシェシェ・・・」とさざ波のように鳴くんだ。
緑の公園の傍を歩いたら、シェシェシェシェシェ・・・と滝の流れるような大合唱。。。

関東はほとんどアブラゼミやミンミンゼミ。関西はほとんどがクマゼミなんだな。
子どもの頃、毎年夏を過ごした鳥取でも、
子ども時代を過ごした大阪でも、いつもこのさざ波のような蝉しぐれの中で遊んでいた。


蝉しぐれの中、立ち止まってひとりでじっと耳を澄ませて聴いてしまうと、

グラグラと体まで揺さぶられるような錯覚がして、少し怖いような気持ちになったのを覚えている。
父も、同じようなことを以前言っていたっけ。

滝の音のような蝉しぐれの中を歩いていると、自分がコドモに戻ったような・・・妙な気持ちになる。
父は今回も、ありがたいことに命拾いをしたけれど、まさか永遠の不死身ではあるまい。
遠くないこの先「コドモのわたし」を知るひとがひとりも居なくなる。。。ということに、このたび初めて思い至った。
だれもが歳をとれば、それは自然の摂理なんだけれどね。わたしがお先に失礼!ってこともないとは言えないし。

こんな心もとない気持ちは、蝉しぐれの中でココロまで翻弄されるあの感覚とよく似ている。


夕暮れの森に身を置いて、こころを撫でてくれるようなヒグラシのカナカナカナ・・・って声を聞きたいな。


 大阪の街路樹の傍でひとやすみ?のクマゼミ。



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