時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

マイ・バラライカ

2009-06-10 | MUSICのこと

熱しやすいというよりも、
周りに気づかれることなく瞬間沸騰するタイプ。
直感を信じて、思い立ったら走ってる。
(吉と出るか凶と出るかは・・・別ものですが)

バラライカとの出逢いもそのひとつ。
でも実物に出会えるまでに数年かかった。

バラライカは、ロシアの民族楽器の代表的な弦楽器。
二十歳すぎごろ、銀座文化で「ドクトル・ジバゴ」を観た。
全編にわたってもの哀しく響くその音色に
すっかりこころを奪われたわたしは、
まず、楽器店に足を運んだ。
当時はインターネットなど無縁の時代。
足で探すしかなかったのだ~。
しかし、どこにもない。
楽器店の店員さんの中には、存在さえ知らない人も少なくなかった。
そのうちきっと出逢えるさ、と思いつつ月日は過ぎて。。。

二年ほどは経っただろうか、渋谷で立ち寄ったYAMAHAで
ふと尋ねてみると、親切な店員さんがいろいろ調べてくれ、
銀座の「白樺」にあるかもと、貴重な情報をくださった。

「白樺」知ってます、知ってます!
銀座の大通りのロシアの民芸品の老舗っぽいお店で、
母と何度かのぞいたことがあった。
(残念ながら、現在はもうないが)
そうか!「白樺」に!?
気づかなかった~~。

というわけで、数年越しで、やっと実物とご対面。
一緒に店に置いてあった、
北川つとむ先生の「バラライカ教本」と共に
大事に胸に抱いて帰った。

そうして、当時外苑前近くにあった、先生の教室の門戸を
たたいたのだった。

ギターもピアノも弾いたことがなく、
音譜もろくに読めないぶきっちょなわたしに、
先生はとても丁寧に教えてくださった。
「その歳で、ドクトル・ジバゴは珍しい!」と笑った。
しかも、映画の中の音色は、バラライカではなく、
同じ民族楽器の、ドムラだということも教えてくださった。

青山墓地の見える静かな空間。月に2回の土曜日。
何年通っただろうか。
ハードな仕事の合間の、穏やかな時間だった。
さほど上達もしていなかったのに、
恐れ多くも、アンサンブルの皆さんと一緒に
何度かステージにも立たせていただいた。

結婚・引越しを機に教室を離れ、
日々の生活に翻弄されつつ年月を過ごすうちに、
埃をかぶってしまった、可哀想なわたしのバラライカ。

やっぱりもう一度弾いてみたい。と思い、
ホームページを探していて、先生の早過ぎる訃報を知った。
ずっとお会いしていなかったけれど、
またお目にかかれると当然のように思っていた・・・。
まだ、五十前の若さだったのに。
こころよりご冥福をお祈りいたします。。。

「いつか」「そのうち」なんて思っているうちに
音もなく指の間からこぼれていく。

いつかではなく、「今」思うことをしよう。
たいせつなものは、今、抱きしめよう。

鳴らしてほしそうにしているマイ・バラライカ。
へたくそだけれど、先生の教本の最初のページから
もう一度弾いてみよう


いつまでも、感性のままに、いつでもすきな方向へ走っていける、
柔軟なこころでいたいものだ。


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