新古今和歌集の部屋

平家物語 四部合戦状本 元暦大地震

第十二
同九日午剋、大地震動シ、良久湩レリ。怖ケレ申スモ愚。赤カ嵴中自白河法勝寺塔始、或倒或破レ、崩レ。在〃所〃、不殘神社仏閣皇居人家一宇モ。響聲ヘ如シ雷。揚クル塵以煙、日光モ不見ヘ。老少共消シ魂、鳥獣モ悉迷スト心ヲ。見ヘ呼爲シ何事ゾ喚叫フ。有被打殺之者モ、多被ケル打損ス之人モ。近國遠國如シ是山峰崩レ埋メ谷河、海傾涅ヒヌ陸。巌砕ケ入谷モ。洪水漲リ來テ、上リテモ岡ヘ何可キ不助ケ。猛火燃ヘ來テ、隔テモ河暫クハ可去リヌ。只悲シカリ大地震動。非シ鳥空モ難シ翔、非竜雲難シ入。

心憂名目、主上奉ス鳳輦渡ラセ玉池渚ナ。法皇、其程新ニ熊野、有御参籠御花進マセ、御在家共打倒ル。人多ク被打損セ之間ダ、汚ガレ共出來ケレ、六條殿ヘ成還入。

天文博士共各參騒申ス占セン文所差不軽ラ。今夜南殿立仮リ屋御在諸宮諸院モ御所共倒上無ク隟振レリケレ。或被召御車或奉輿御在有テ種〃御評定亦樣〃御祈始今夜子丑寅剋打返サン。有占云居家内無シ上下一人モ立遣リ戸障子天鳴リ地動ク度、只今死ヌ高念佛申ケレ所〃聲〃震シ。

七八十、八九十者モ斯ル事未聞カ申世亡ビナンハ云事、今日明日不思モ寄云老叫ブ事震シ。

文天王御宇、斉衡元年三月、前朱雀院御時、天慶元年四月、有斯ル大地震承天慶去御殿常寧イ殿前立五丈楃主上渡ラセ玉、從四月十五日于至八月打連キ湩ケレ上下家不ゾ安堵承ル其レ不ズ見事ナレ有ケ何不知今度事自今以後可有類ヒ不リキ覺ヘ平家怨霊世可キ失之由申合奉逼落シ十善帝王御身沈ヅメ、海底御在、大臣公卿渡シテ大路其首懸獄門木。異國有ケ其例モヤ本朝未ザル聞事無キ、是程事ダモ自昔于今死霊怖シキ事ナレ。世不鎮ナラ有ズトゾ何被歎。

建禮門院吉田九日地震築地モ崩レ、荒屋共ナレ傾キ損シ、冣度可住玉之樣不見ヘ憑シキ人、一人モ不候。地モ可シト打返シツ聞食セ無ケレ、可惜カル之御命。只世常樣消ヘ入ハヤトウ被思食、心任ニ荒ナシ籬気色從モ茂テ、野露気折知リ顏何シ賀、虫聲〃恨ミ哀。

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