南望則有関路之長行人征馬駱驛於
翠簾之下東顧亦有林塘之妙紫鴛
順
白鷗逍遥於朱檻前
紀斉名
山路日暮滿耳者樵謌牧笛之聲澗
戸鳥歸遮眼者竹煙松霧之色
白河院秋花遂露開序
源順
南に望めば則関路の長き有り、
行人征馬翠簾の下に駱驛たり。
東に顧れば亦に林塘の妙なる有り、
紫鴛白鷗朱檻前に逍遥す。
意味
南の方を眺めると、逢坂の関に通じる長い道があり、旅人やその馬が簾を通して連なって行くのが見える。
東を顧みれば、林の塘(つつみ)の素晴らしく見え、紫の鴛鴦、白い鴎が朱色の手すりの前で遊んでいる。
暮春遊覧 同賦逐処花皆好
紀斉名
暮春之月…
山路に日暮ぬ。
耳に満てる者は樵歌牧笛の声。
澗戸に鳥帰る。
眼を遮る者は竹煙松霧の色。
…謂傍人何云ふ爾。
意味
山路に日が落ちる。聞こえるのは、木こりの歌と牧童の笛の音だけである。
谷間の家には、鳥が帰る。景色を遮って目に映るのは、竹藪の夕もやと松林の霧の眺めだけである。
令和3年9月19日 壱