カンボジアだより シーライツ

国際子ども権利センターのカンボジアプロジェクト・スタッフによるカンボジアの子どもとプロジェクトについてのお便り

最悪の形態の児童労働と児童労働の連鎖

2007年09月05日 22時30分46秒 | カンボジアの子ども
みなさんこんにちは、以前カンボジア事務所に勤務していました平野です。前回は最悪の形態の児童労働の撲滅に向けて世界的な合意があること、そしてカンボジアにおける最悪の形態の児童労働について書かせていただきました。今回は最悪の形態の児童労働と児童労働の連鎖について書かせていただきます。

【最悪の形態の児童労働は少しずつ減らす?】

最悪の形態の児童労働は、すべて、それも一刻も早くなくすべき、というのが多くのみなさんの願いだと思います。しかし一方で、ゆっくりさまざまな対策を取りながらでないと、かえって良くないという説を唱える人もいます。その学者の説によると、最悪の形態の児童労働がなくなる→そこで働いていた(働かされていた)子どもたちが「最悪でない」形態の児童労働をするようになる→最悪でない形態の児童労働の働き手が増える→一人ひとりの賃金が下がる→子どもたちはこれまでよりもたくさんの時間働くことになる、ということだそうです。

【最悪の形態の児童労働は負の連鎖を招く】

これはこれで経済学的モデルとしては成り立っているのでしょうが、だからといって最悪の形態の児童労働をゆっくり減らしたほうがいい、ということになるのでしょうか。最悪の形態の児童労働をしている(させられている)子どもは、多くの場合学校に行っていません。また、幼いうちからの過酷な労働はおとなになっても残る健康被害を与える危険が高いのです。その結果彼ら彼女らはおとなになったときに収入に恵まれず、貧困に陥り、その子どもたちが児童労働、時には最悪の形態の、をすることになる危険がとても高いのです。これは児童労働の「負の連鎖」と言えます。また、話は違いますが、最悪の形態の児童労働の場合、賃金などろくにもらえないケースも少なくないことも付け加えておきます。

【子どもたちを学校に】

児童労働の撲滅は一足飛びにできるものではないでしょう。まずは子どもたちが多少仕事をしながらでも少なくとも学校には毎日行く、というふうになれば、将来その子どもたちが親になったときに、子どもを働かせないですむようになる、つまり望ましい連鎖が生まれるはずです。働きながら学校にも行って大変だったけれど、おかげで今自分の子どもは働くことなく育っている、という経験を持つおとなは世界中に、日本にだってたくさんいます。もちろん勉強だけでなく遊びも子どもの成長に大切なものですが、少なくとも学校にも行けない環境よりは友だちとともに学ぶ環境のほうが遊びも多いでしょう。国際子ども権利センターは奨学金制度を展開していますが、学校に通うということは、少なくとも最悪の形態の児童労働には陥っていないことを保証するものなのです。

いかに現状が厳しくとも、段階を踏んで進めていくべきものとそうでないものがあります。最悪の形態の児童労働については、一刻の猶予もないものなのです。

もちろん、最悪の形態の児童労働は、人道的観点からも一刻も早い撲滅が望まれています。次回はそのあたりも含めて予防か、保護か、という問題について書かせていただきます。


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写真は川辺でさとうきびを売る少女(撮影:甲斐田万智子)