『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』の著者 桜井春彦の最近のブログ記事のことに関連して
再び動き出した南米ベネズエラのクーデター未遂事件のこと その2-1
2014年は工作じみた国際的な事件が頻出、あれよあれよという間に、かつての冷戦以上の世界が露わになりつつある。
2月22日 ウクライナ・クーデター 右翼セクター・大統領府になだれ込み、大統領脱出、右派クーデター成立
3月 クリミア半島 ロシア帰属の住民投票可決
3月 マレーシア航空便 行方不明
5月 オデッサ虐殺事件 クーデターに反対する集会を赤リボンを付けた(右派?)集団が襲撃。オデッサ労働者会館に追い込まれた労働者・市民が銃撃その他による虐殺。死者40数人の公式報道あるのだが、死者は100人以上の情報もあり錯綜。真相究明は未だに不明。youtube・独立メディアに多くの動画・映像投稿。建物に向かい銃で発砲する民間人、労働者会館屋上で、赤リボンを付けた人物集団が多数工作活動している映像も多数投稿。また、集会場所とは別の場所に、黒装束集団が待機、一斉になだれ込み、広場の人々を襲撃するシーンもある。火焔瓶を広場で製造・渡して、右派クーデターに反対していた集団を建物内に追い込み、火焔瓶を建物内に投げ込むシーンの記録映像もある。
5月オデッサの労働者会館での虐殺事件は、自然発生的に展開したというよりも、黒装束の集団の待機、赤リボンの識別マークを付けた労働者会館屋上で動く人物の存在。拳銃で建物に発砲する人物、広場で建物に投げ込む火焔瓶の製造をするグループなどの状況、分担からみて用意周到に計画準備していたものと判断せざるを得ない。暴力による政権乗っ取りを批判する市民グループの殲滅。市民へ政治麻痺・沈黙を強いる暴力
この5月初旬のオデッサ虐殺事件、欧米大手メディアもちろん日本の大手メディアは、全くと言っていいくらい報道しなかった。黙殺。大統領を排除した暫定政府が起こした政府がいかなる性格を持っていたかを如実に語る事件であった。極右派による、政治反対派殲滅のファシズムの典型があそこにあった。
フランスで、例の新聞社襲撃事件があった時、まるで、前もって予定していたかのように、「私はシャルリ」というプラカードが駆けめぐり、世界にあふれた。
オデッサ虐殺事件では、もっと虐殺者も多く、多くのスマートフォンで記録された映像や動画があり、虐殺直後のオデッサ労働組合会館建物内部映像も、虐殺に関係したかもしれない右派とみられる投稿動画もyoutubeにあったのだが。建物に向かって銃を発射した人物名が特定できるほど顔の大写しの入った動画もあった。しかしながら事件の真相は闇に葬られたままである。ウクライナのポロチェンコ政権は、捜査を完了していないままである。世界のどこで、パリ新聞社銃撃事件のように、オデッサ虐殺事件に対する真相究明の100万人規模のデモがあっただろうか?
ところで、「わたしは、シャルリ」ということばには、真相徹底究明ということばが、どこにもないことに気がつくべきと考えている。事件追及の真実を求める動きを忘却させ、金太郎飴のように市民の感情をステロタイプ化する事。これもプロパガンダがからんでいるとみるべきであろう。死人に口なしの、いつもの工作の疑いを持って事件の追及を怠らないこと。フランス新聞社襲撃事件も一件落着にしてはならない。と思う。
『現代思想』2015年3月の臨時増刊号が2月末に発刊された。事件直後なので、事件の真相に迫る資料を駆使できるほど調査の蓄積があるわけではないが、「私はシャルリ・エブドではない」 「私はチャーリー・チャップリンだ」 が目に止まった。復讐・報復・殲滅・いつかまた来た戦争と全体主義の道に戻ってはならないはずだ。
▲ 『現代思想』 2015年3月臨時増刊号 青土社 本体1300+税(104円)
欧米・日本のメディアは、オデッサ虐殺事件で見事に沈黙を決め込んだ。
西欧の民主主義が、オデッサ虐殺事件について何も言わないのは、あの時点までに、世界に発信網を有するニュース配信内容というものは、極めて作為的に構成されたもので、内部検閲と自主規制が完成していたことを告げていた。
ニュースとは、ある寡頭勢力が、伝えたいものを伝え、伝えたくないものを伝えないプロパガンダのこと。
1930年代のヒトラー政権誕生するまでに何度も繰り返された市民・批判勢力に対するテロルのエスカレーション。1930ー1934年のドイツでの出来事をまざまざと思いだす。
ここにあるのは「文字通りのテロル」であり、いつの時代でもやってきた「恐怖政治」による、市民の表現と表現意欲の圧殺である。この恐怖の情報が、一瞬の間にウクライナの隅々まで伝えられ、ウクライナを恐怖の金縛りにおとしいれ、また、ウクライナ東部の独立の動きを一気に加速させたのではないだろうか。
5月より ロシア系・親ロシア派系住民のウクライナ東部独立の動き。ウクライナと東部独立派の間で内戦に入る
5月 ウクライナ大統領選挙ポロシェンコ ウクライナ大統領選に当選
7月15日 次世代の国家群5ヵ国 世界銀行・IMFに代わる 投資・融資銀行設立 中国・ロシア ・ベネズエラ・ブラジル・南アフリカ調印
7月17日 ウクライナ東部紛争地域にマレーシア航空機墜落
ただちに、欧米・各メディア、親ロシア派が、ロシア製地対空ミサイルを用い撃墜したとして非難攻撃開始
マレーシア航空機墜落原因調査は航空会社のある当該国マレーシア・そしてロシア抜きで、調査が進められることに。
ウクライナの管制官の証言・記録も全く公表されず闇の中へ。フライト・レコーダー、ボイスレコーダーも回収された。暫定でもすぐに音声記録・分析経過報告が公表されるべきだが、中間報告でもレコーダーに関する発表なし。今後発表されるものは、時間をかけて作られたねつ造の記録になるおそれも大。
2015年
1月 フランス、雑誌社襲撃、スーパーマーケット立て籠もり、犯人グループとされた人物全員射殺。最近の大型テロ事件は、犯人が射殺・あるいは自爆行為により、裁判もなく決着するので、残るのは捜査当局が発表する資料を鵜呑みするのみ。攻撃した人物と、特殊部隊が射殺した人物は本当に同一人なのか、まったくブラックボックス。
1月ー2月 ISに拉致された日本人、救出できず。追悼の間もなく、安倍内閣、安保法制見直し・海外派兵可能な法整備宣言
2月 ウクライナ東部内戦膠着、ウクライナ・ウクライナ東部独立派の間で停戦。
前書きが長くなったが、上記の、工作めいた事件の間
南米でも、石油価格下落の動きに並行して、政治工作・政府転覆の動きが着々と進行していたようである。
いつも、あるいは時々参照させてもらっている下記のホームページ・ブログからもたらされた情報をメモしてみる。
「桜井春彦ジャーナル」 ▼
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/
「マスコミに載らない海外記事」 ▼
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/
「現代ラテンアメリカ情勢」 伊高浩昭(いだか ひろあき)=ジャーナリストのブログ▼
http://vagpress-salvador.blogspot.jp/2015/02/blog-post_14.html
などの記事を参照すると
ベネズエラのマドゥロ大統領政権転覆 クーデター計画は
① クーデター作戦名暗号名 ジェリコ計画
② 計画作成日 2015年 2月6日
③ 指揮 アメリカのNSC(国家安全保障会議)のリカルド・ズニーガ
④ リカルド・ズニーガとは、CIAハバナ支局長 反カストロ派をキューバ国内で雇う工作に従事
⑤ クーデター成功後の大統領就任予定の人物 マリア・コリナ・マチャド元議員
以上は「桜井春彦ジャーナル」 2015年2月25日記事から
また以下は「マスコミに載らない海外記事」 2015年2月19日付けの記事から
元記事は アンドレ・ヴルチェク 2015年2月16日 Counter Punch の記事
これの翻訳から
⑥ 「 ニコラス・マドゥロ大統領は、2月12日(木曜日)、政府は、アメリカ政府の支援を得てベネズエラの右翼野党が画策していたクーデターの企みを阻止したと発表。」
⑦ 「2月11日には野党指導者が「ベネズエラの石油の民営化、経済の規制緩和と、国際通貨基金を含む“国際的金融機関”との協力などを含む“移行計画”を発表」
⑧ 「ベネズエラ軍は 断固、マドゥロ大統領政権側に立った。UNASURを含む中南米の大半は、団結と、支援を表明。」
記事の著者アンドレ・ヴルチェクは、このベネズエラでのクーデター未遂事件の、世界の沈黙について、怒りを込めて次のように言っている。
「 私がノーム・チョムスキーとの最新共著で書いた通り、連中(帝国)は第二次世界大戦の終結以来、既に約6000万人以上、虐殺しているのだ。
アフリカ、中東、アジアで、そしてつい最近まで、中南米で、帝国は、あらゆるまともな政権を打倒した。帝国は、平和的で、非宗教的なイスラム政権を打倒し、暴漢や過激派で置き換えた。我々の多くは、それを知っている。これは秘密ではない! ところが、同じ強盗行為が何度も繰り返されているのに、皆座視したまま、沈黙している!少なくとも、どこか欧米の首都や大都市で大規模な抗議行動が行われただろうか? 一体どこで、数百万人の群衆が“私はチャベスだ”と叫んだだろう?ヨーロッパやアメリカ合州国のまぬけな国民は、記憶消失と洗脳の完全な最終的、末期状態に陥ったのだろうか? 彼らは自国政府や大企業が世界中でしていることを気にしないのだろうか?」
また、今回のベネズエラクーデター未遂事件に関する記事を掲載しているのはキューバ研究室がある。
キューバ研究室はここ▼
http://estudio-cuba.cocolog-nifty.com/blog/ が、有益なラテンアメリカ情報を掲載してくれている。
ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が国内および国際社会に向けて発表した2月13日の声明を日本語に翻訳してくれている。PDFになっている。ここ▼
http://estudio-cuba.cocolog-nifty.com/blog/files/152.pdf
また、「現代ラテンアメリカ情勢」 伊高浩昭(いだか ひろあき)=ジャーナリストのブログでは
2月14日には以下の記事がある。
⑨空軍将校らによるクーデターの陰謀を ベネスエラ国会のディオスダード・カベージョ議長は2月12日夜、国営テレビ放送を通じて、「空軍将校らによるクーデターの陰謀」を明らかにした。
元空軍司令官(退役空将)、現役空将2人、同大佐ら士官10人の計13人が関与した。うち3人は逮捕され、2人は逃亡中。他の8人がどうなっているのかは明らかにされていない。逮捕者の情報はかなり混乱している。
議長は、右翼野党「まず正義を」(PJ)の国会議員フリオ・ボルヘス、カラカス首都圏市長アントニオ・レデスマのほか、実業家らも関与している、と述べた。
首謀者らは、刑務所にいる極右指導者レオポルド・ロペスを暗殺し、国中を騒然とさせて政府を倒し、レデスマが野党勢力の指導者として登場する、という筋書きを描いていた。そう議長は明らかにした。
彼らは、政庁、国家選挙理事会(CNE)、最高裁、検察庁、国防・外務・内務・司法・教育各省、国軍情報部(DIM)、テレスール放送局、首都中心街のリベルタドール区役所などを空爆するなどして制圧する計画を立てていた。
議長によると、パソコン、武器類、戦闘服などが押収されており、パソコンにはクーデター計画の陰謀の細部が記載されている。議長は、米国の関与を示唆した。
国軍はこの日、マドゥーロ大統領と憲法に忠誠を誓う、と表明した。一方、PJ党は、ボルヘス議員の関与を否定した。
ボリビアのエボ・モラレス大統領は、マドゥーロ大統領と政府への連帯を表明した。」
また、2月17日のブログには
パナマでは4月、第7回米州首脳会議が開かれ、米玖両国首脳が歴史的な顔合わせをすることになっている。ベネスエラのニコラース・マドゥーロ大統領も参加する予定だが、逃亡士官がパナマに潜伏しているとすれば、安全上、気になるところ。
また、ラ米ジャーナリスト連盟(FELAP)は同日、クーデターの陰謀に直面しているベネスエラ政府に連帯し、陰謀を糾弾する声明を発表した。 」
2月20日の同ブログでは
大統領はまた、「陰謀は今月11、12、13の3日間に決行する計画だった」と明らかにした。政府は先手を打つように空軍士官7人らを逮捕し、陰謀を潰したと公表している。
マドゥーロはさらに、「右翼のマドリーと、極右のボゴタおよびマイアミが陰謀の枢軸だ」と指摘した。これは、ラホーイ西政権、ウリーベ前コロンビア大統領一派、マイアミのラテン系極右活動家集団を指している。 」
マドゥーロは、カラカスの米大使館員がベネスエラの軍人、企業家、野党政治家、ジャーナリストらに謀反に参加するよう働きかけてきたと前置きし、
2月26日 ブログ
」
「大統領は、ウィーン条約の「外交駐在官数の平等性」に基づき、カラカスの米大使館員を現在の約100人から、ワシントンのベネスエラ大使館員数17人相当に減らすよう要求。」
「テロリスト取締名簿」を作成するとして、米政府現・元高官たちのベネスエラ入国を禁止する意向を表明した。米政府が既にとった措置に報復するため。同名簿には、前大統領ブッシュ、前副大統領チェイニー、元CIA長官テネット、クーバ系極右米連邦議会議員4人らの名前も記載されるもよう。」
スペイン語版 http://www.telesurtv.net/
英語版
http://www.telesurtv.net/SubSecciones/en/news/latinaamerica/index.html
世界の主要メディアは、寡頭勢力の道具になり果てている。
ベネズエラ大統領は、ベネズエラのアメリカ大使館を、外交機関ではなく、国際法にも抵触する不正工作活動を行っているとして、ベネズエラが、アメリカに派遣しているベネズエラの大使館規模に、アメリカ大使館を縮小することを要求している。また、ベネズエラ国家に入国を禁止される、危険人物リストに、元アメリカ大統領ブッシュ、チェイニー元副大統領、元CIA長官テネットが含まれている。かつて、ベネズエラはチャベス大統領時代、20002年、2006年にも、クーデター事件はあり、その時のアメリカの政治と、軍事の責任者はだれかと言えば、確かに彼らなのだ。彼らは何も知らないとはいえないはずだ。
今回も入れて、21世紀になってもベネズエラは、3回も大きなクーデター事件が発生しているわけだ。去年2014年2月12日の暴動はこうしてみると、今回のクーデター準備につなげる計画であったのだろう。
この窮地を救ったのはベネズエラ国民である。チャベスは、もう(アメリカが手を引く)クーデターは真っ平御免と言っていた。
ベネズエラでは、2000年代には 「わたしはチャベス」 という国民の圧倒的支持で、クーデターを乗り越え、生還してきたのだが。
いまや、軍事活動は、大幅に民間軍事会社に委託されている側面もある。ある国家による指示が見えなくなる仕掛けもできている。捕まえてみれば、とかげの尻尾切りよろしく、その犯人たちは民間軍事会社の社員だったということにもなりかねない。
想像に想像を重ねる愚はこれくらいにしても、
ロシアの野党党首ネムツォフの暗殺と、ベネズエラで起きるはずだった2.11ー2.13のクーデター未遂事件は、敵対する野党党首の排除を、政権転覆の起点・展開の鍵として設定していると現時点で思われる点で、古典的な、陰謀のセオリーと、プロパガンダに極めて忠実であるように見える。
すべて対立する敵のやったことにしてしまえ。
敵は邪悪で悪党だ!
またいつか来た道を辿らないように何度でもこのブログで繰り返そう
モレリの戦争プロパガンダ10の法則 10のプロパガンダは以下の通り。
1 われわれは戦争をしたくない
2 しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
3 敵の指導者は悪魔のような人間だ
4 われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う
5 われわれも誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる
6 敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
7 われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大
8 芸術家や知識人も正義の戦いを支持している
9 われわれの大義は神聖なものである
10 この正義に疑問を投げかけるものは裏切り者である
「次の戦争が始まるまでは、 もう二度と騙されないぞ と心に誓う。だが、再び戦争が始まるとわれわれは性懲りもなく、また罠にはまってしまうのだ。
あらたにもうひとつ法則を追加しよう。 たしかに一度は騙された。だが、今度こそ、心に誓って、本当に大義があって、本当に悪魔のような敵が攻めてきて、われわれはまったくの潔白なのだし、相手が先に始めたことなのだ。今度こそ本当だ。」
アンヌ・モレリ著 永田千奈訳 『戦争プロパガンダ10の法則』 2002 草思社
▲ 当ブログに記事あり。参照願う。
この二つの事件は、同じ比重と紙面で、調査追求すべき、事項であると思う。
果たしてメディア各社は、ロシアの事件だけに目を奪われることなく、ベネズエラでのクーデター未遂事件に目を向け、調査報道をすべく、体制を整えて取材するであろうか。
また、ウクライナ内戦の一つの端緒ともなった、ウクライナ・オデッサ労働者会館で起きた惨劇は今後メディアはどのように検証して、考えていくのか。そんな事件があったのですか?と言う声も聞こえて来そうなほど、重要事件が、メディアの話題になることもなく消えていく。
ラテンアメリカの歴史の困難さとその希望についてはジョン・ビルジャーのドキュメンタリー映画が極めて有益 動画はここの頁から ▼
http://www.truthdig.com/avbooth/item/who_was_hugo_chavez_20130306
この項 断続的につづく