巴里の中心で、ワンとさけぶ

笑いながら一気に読んでください! 愛犬・ラブラドールとのドタバタ巴里暮らし

ラブの瞳に恋してる!

2006年06月16日 20時47分51秒 | Weblog
「ちょっと! そこの子犬! 予防接種はちゃんと済んでるわけ?!」
 牛乳瓶の底みたいなメガネをかけたマダムが、当時3ヶ月だったチビラブを指差して、激しい口調で捲し立ててきました。気が強い典型的なフランス女って感じで、や~な感じでした。マダムは小さいわりには気が強くて攻撃的な雄のジャックラッセルを連れてました。
 が、世の中わかんないもんです。初対面でヤナ感じだったフランス人が、180度変わって、急に親日家になる確率って案外高いんですよ。件のマダムが、オールドミス(いや、この言い方はよくない。そう、シングルでいいのでした)のミレイユさん、愛犬は当時2歳のレオ。
 飼い主同士は、わりとすぐに打ち解けて毎日、ドッグランのベンチでお喋りするようになりました。ミレイユさんはひとり暮らしなので、飼い犬が死んでしまうと悲しいけれど寂しさに耐えられないから、すぐに次を飼うんですって。でも、さすがに同じ犬種はだめだそう。ジャックラッセルの前は、ビーグルのトミー、その前はラブラドールのマックス……、と代々の犬たちとの思い出を聞かせてくれました。で、フランス人は犬を溺愛しない、ドライに付き合うって思い込んでる人がいますが、そんなことありません。ミレイユさんはレオを息子みたいに思ってて、いっつも添い寝してるんですって。……よかったウチとおんなじ。それに小型犬はバッグに入れればバスにもメトロにも乗れるし、デパートにもカフェにも入れるから、ふたりはいっつも一緒です。
 さて、攻撃的なレオはしつこいチビラブに噛み付いてばかりいました。そのたびにミレイユさんが叱りました。「レオ! 男の子でしょ、ジュエルにやさしくしなさい!」って。んで、やられてもやられても鈍感なのか楽天家なのかジュエルはレオにちょっかいを出すので、また噛まれて「キャヒン」と悲鳴。
 ところが、ウチのジュエルが1歳になった頃から、とつぜん立場が逆転してしまいました。レオが、ブスじゃなくて“ラブの瞳に恋しちゃった”んです!
 6ヶ月で卵巣摘出手術を受けて子供の産めない身体になったジュエルも、いちおう雌としてのフェロモンを発してるのか、レオはもうラブラブで夢中。が、体格がレオの5倍くらいになったジュエルは、ボール遊びにしか興味がないので、毎度、のっかかろうとしがみつくレオを軽く振り払っちゃう。怒りもせずに、シカトでレオを蹴散らす毎日。で、レオも振り払われても振り払われてもあきらめずにアタック。んで、ミレイユさんは「も~っ! レオ! いいかげんにしなさい!」って叱かる毎日。ただ、ジュエルはレオを友達だとは思ってるみたいです。その証拠に、勝手にのっかかってこようとするほかの雄犬に対しては大小にかかわらず、牙をむきだして「ウ~!」とすんごい血相で追い払いますが、それをレオにだけは決してしませんもの。ジュエルにとってレオは友達以上恋人未満ってとこかしら。