ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

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夕凪の街 桜の国

2007-03-15 | 漫画
気象庁の桜予想、計算間違いなんですって。
寒いですよねえ、まだ。
「お花見弁当」なんかをつくっちゃったお弁当屋さんは困ってるらしいですが、すこしでも遅くなって、入学式の頃まで残っていて欲しいです。

さて、もう少しで桜の季節、ということで、こうの史代さんのコミック 夕凪の街桜の国を読みました。
もう読んだ方も沢山いらっしゃるかもしれませんね。語りつくされた感もありますが、あえて桜の季節なので・・・・

なんか一昔前の漫画という感じののんびりした絵柄が結構気に入ってます。
スクリーントーンとかコンピュータ処理をしないで、地道に手書きで仕上げた暖かさが良いです。
彼女って広島出身の方だったんですね。

去年、長崎に行ったときに、娘を連れて原爆資料館を見てきました。娘は海外育ちで、外から見た日本については鋭い目がありますが、日本の歴史には触れていませんでしたので、良いチャンスと思って。

高校生のときに、広島の平和記念資料館を見に行きましたが、あまりの悲惨さに気分が悪くなって倒れてしまったjesterです。
しばらくショックから食欲が失せました。

だから長崎へ行ったとき娘に「ちょっと覚悟していったほうがいいよ」と言いました。
でも長崎では、広島に比べて、爆弾の規模が小さかったことなどもあるのか、あまり悲惨な写真や人形などがなかったので、今回は冷静に見られたのでした。
同じ頃に入った外国の方が熱心に見られていて、帰り口であったとき、涙ぐんでいらっしゃいました。

この本のあとがきに「しかし、東京に来て暮らすうち、広島と長崎以外の人は原爆の惨禍について本当に知らないのだという事にも、だんだん気付いてきました」 とあって、ああ、そうなのかもしれないなあと思います。
私の知人でも、平和公園などに訪れたことがないという人が多いです。

この漫画は原爆投下から10年後の広島、そして何十年もたってからの東京が舞台です。
『原爆のあと、生きている人々』という切り口で描かれています。
人間の許容量を越えた悲惨な体験をした人が、そのあとそれをどう忘れようとして、どう克服しようとして暮らしていくのか。
克服するにはまず理解しなくてはいけないけれど、どうしても「なぜ?」の答がでない問い。

そしてその子孫にあたる、私たちの年代の人たちの想いはどうなのか。

もともと台詞回しの上手な漫画家さんなんですが、細やかな人間描写で、思わず感情移入してしまいます。
主人公たちが等身大に感じられます。

生まれてきた時間や場所がほんの少し奇跡的にずれていただけで、この人たちは私であったかも知れないのだ、と思います。
今現在だって、いつこんな中に自分が、そして自分の娘がほおりこまれるか分からないのですよね。

「ぜんたい この街の人は 不自然だ
誰もあのことを言わない いまだにわけがわからないのだ
わかっているのは『死ねばいい』と 誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということ
そして一番怖いのは あれ以来 そう思われても仕方のない
人間に自分がなってしまったことに 自分で時々 気づいてしまうことだ」
 p16
淡々と銭湯で体を洗いながら、皆実はこんなことを考えるのです。

「しあわせだと思うたび 美しいと思うたび・・・すべてを失った日に引きずり戻される おまえの住む世界は ここではないと 誰かの声がする」p25

絵柄がなくなって台詞だけの33ページが心に突き刺さる思いでした。

「夕凪の街」で厳しい視線でどん底の絶望を描いた後、再生への道が「桜の国」で描かれます。

94ページ目の見開き、美しい桜の満開の橋の上に立つ二人。
「そして確かに この二人を選んで 生まれてこようと 決めたのだ」
という七波の言葉。


お説教臭くなく、きれいごとではなく、でも暖かい視線がそこここに感じられます。
原爆ものと言うとお約束のような残虐な描写はなくて、人間の心の中を描いている分、希望があり、後味も悪くないです。
薄い本ですが、原爆をテーマに扱った作品の中でも傑作だと思いました。
子どもにも読ませたいけれど、小学生では少し難しいかな?  
漫画だけど伏線が沢山はられていて、答がすぐ見つかるようにはなってないので、大人向けかもしれませんね。
たとえば、冒頭で、皆実がどうして半そでのワンピースを作りたがらないのか、とかね。


アメリカ人と原爆について話すと、少なからず
「あの戦争を終わらせるためには原爆投下が不可欠だった」と言い張る人がいるんですよね。
そう来られると、「桜の国」生まれのjesterも負けじとかなり熱くディベートしちゃうんですけど(やめれ)たいてい平行線のままになってしまう。
そういう人に読んで欲しいな。イラク問題やテロにも通じることがあるし、何でも暴力(言葉も含む)で単純に解決しようとする人に読んで欲しいデス。
英語訳で出ないかしら。


(そういえば、Hidalgoでヴィゴが来日したとき、プロモーションが終わってしばらくプライベートに旅行していたのですが、どこへ行ったのかと思いきや、息子をつれて広島に行っていたのでした。こういうアメリカ人もいることを忘れないようにしようっと。
・・・しかしこのくそ真面目なのを隠そうとしない大人であるところも、ヴィゴのいいとこの一つかと・・・)(殴!!
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6 コメント

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夕凪の街・・ (igu)
2007-03-16 01:23:25
わたしも読みました。
淡々としてちっとも声高ではないのにヒタヒタと悲痛が押し寄せますよね。でも後味は悪くないのです。
イーストウッドの「硫黄島・・」や「父親たちの星条旗」と共通するような静けさのある作品でした。

悲惨なシーンは描かれていませんが、あのだんだん空白になっていくコマが胸に突き刺さりました。
すごい表現方法だなと思いました。

jesterさんがおっしゃるように、原爆を扱った中でもほんとうに傑作だと思います。
映画化されたみたいですけど、映画の方はどうなんでしょうね。
上映は今年の夏なのでしょうか・・・
iguさんおはようございます。 (jester)
2007-03-16 07:59:08
iguさん、コメントありがとうございます。iguさんは当然お読みになってますよね~!これ、最初はアクションに掲載されたのでしたっけ。青年誌、おそるべしです。

>悲惨なシーンは描かれていませんが、あのだんだん空白になっていくコマが胸に突き刺さりました。

そう、やっと幸せをつかんでいいと思ったあの瞬間に体から力が抜けて、そして空白になっていくんですよね・・・ショック、そしてじわじわとこみ上げる涙・・・でした。

でもあの絶望があってこそ、後半の「桜の国」が生きるのだと思いました。

映画化、されるんですか~ 知りませんでした。
へ~どうなるのかしら。期待&ちょっと不安ですが。(自分の好きな本や漫画などの映画化はいつも不安です)
安っぽいお涙ちょうだい感動物にして欲しくないなあ・・・
うんざり (Tofu on the rice)
2007-03-16 20:29:13
私も昨日買って読んでみました。

原爆の話と聞いていたので、表紙の明るさにびっくり。
中身を読んで、もいっかいびっくりでした。

読んで気付いたのですが、
自分も一部のアメリカ人のような、
“仕方ない”出来事として原爆を考えていた気がします。

そこで苦しんだ人々や、その人たちの思いを、
なかったかのように、見てみぬふりをしていた気がします。

私も世界中で翻訳されて、読まれたらなあと思います。
というか読みたい人は世界中にいるのではないかと。

今世紀になっても、
「劣化ウランを使用している疑惑のある高性能爆弾」
を開発し、使いまくった連中に読んで欲しい。
Tofu on the riceさん、こんにちは (jester)
2007-03-16 21:12:33
Tofu on the riceさん、コメントいただくのは初めてでしたでしょうか。でしたら初めましてです。
よろしくお願いいたします♪

Tofu on the riceさんもお読みになったのですね~
原爆の歴史的意義どうこう以前に、私たち「桜の国」の人たちがこういう本で原爆被害者の気持ちを共感するのって大切だと思います。
沢山いたはずの皆実さんたちの声を私たちが語らなかったら、だれがこれを語り継いでいくのだろうって思いますもの。
世界の人に読んで欲しいですね、本当に。

いま、ケーブルで「End of the world」っていうオーストラリアのドラマをやっていて、北半球で起きた核の冬とそれが南半球に及んでいく、というドラマなんですけどね。
人間は脳を発達させた分、利口になっているのだろうかって考えてしまいます。
あ、どうも (Tofu on the rice)
2007-03-16 22:54:04
はじめましてですね。

年表でおぼえる歴史以上の事を、
誰かが語り継いでかないといけないですよね。
核家族化により、多くの人がそのチャンスを失ってしまったのかと。

私もですが。聞かなきゃです。

興味深いドラマですね。じりじりと恐そうな。
こちらこそ (jester)
2007-03-17 08:44:54
Tofu on the riceさん、またコメントありがとうございます。素敵なHNですね。お豆腐大好きです。

>年表でおぼえる歴史以上の事を、
誰かが語り継いでかないといけないですよね。

そうですね~
でもユダヤのホロコーストなんか、いまだに普通の人が分かりやすい形で語り継がれていますよね。たとえばスピルバーグだって「シンドラーのリスト」とか作っているし。

日本人はわすれっぽいというか、いやなことはさっさと忘れたがっているのでしょうか・・・

それとこうのさんがあとがきで語っていたように、本州のほうに住んでいる人のなかには所詮「他人事」みたいな気持ちもあるのかもしれません。自分もそうですけれど。

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