ゆきてかえりしひび――in the JUNeK-yard――

読書、英語、etc. jesterの気ままなおしゃべりです。(映画は「JUNeK-CINEMA」に引っ越しました。)

おなかに湯たんぽいれてます? 「村上海賊の娘」 by和田竜 山で読んだ本その3

2014-08-23 | 読書
先日のことですが、エレベーターの中で、隣のおば様とご一緒になりました。

jester「ほんとに毎日暑いですね~~」

おば様、私をじっと見ながら

 「おなかに湯たんぽ入れてる?」にっこり。



・・・・は???

思わず自分の腹に手を当てる

・・・そりゃあ湯たんぽ入れてるみたいにで出てるかもしれんがの。そんで汗ダラダラだしの。

Damn my tummy!!!・・・・とガラ悪く返したくなりましたよ、まじに。

(これは「私のおなかなんかほっとけや!」ぐらいに訳せばいいかなあ・・・

シャーロックでジョン・ワトソンがハドソンさんに足のことを言われて「Damn my leg!」といったののマネです・・・

つい出そうになったぜよ。すぐ真似したがるんだから・・・

ほんと、いかんがな、こんな品の悪い言葉ばっかり憶えちゃ・・・

しかもtummyは幼児語ですがな・・・)


しかし3秒ほど、目を白黒させて腹を抑え、隣人にスラングで怒鳴り返したものか、その場合その後のご近所関係をどう友好的に維持しようか迷う私に

おば様 「・・・っていうほど暑いわね~~」にっこり。



・・・・つまり、なんですか?「おなかに湯たんぽいれてるほど暑いわね」と、そうおっしゃりたかったと。


・・・それにしては途中のタメが長すぎませんでした????

エレベーター5階上がる分ぐらいタメてましたよ????

        


・・・なんとかその場をひきつった笑いでごまかして、家に帰り家族Bに話すと

「それ、被害妄想でしょ? そのぐらい暑いってことよ」

とわれましたが、それにしても「おなかに湯たんぽ入れてるほど暑い」なんて慣用句は生まれて初めて聞きましたよ。

おなかに湯たんぽ入れるの? お布団じゃなくて? 歩いてて重くないの?

そういう地方があるのか?

それとも思わずそういう慣用句が生まれてしまうほど暑いということなのだろうか・・・ 

言葉に敏感な乙女(当社比)なんだから、せめて「背中にカイロ入れてるほど暑い」といって欲しかった・・・・・・・・・


(その後我が家では「おなかに湯たんぽ入れてるほど暑い」という慣用句が公認され、頻繁に使われ始めました。)


・・・とまあ、八月も後半戦なのに、毎日体温を超える暑さが続いておりまする。

皆様、お元気でしょうか?



さて、お山で読んだ本のその3は、

村上海賊の娘 上巻村上海賊の娘 上巻

村上海賊の娘 下巻村上海賊の娘 下巻

です。

ま、これも、前の2冊も、色物と申しますか、本屋大賞だったからとか直木賞をとったからとかいう理由だけで旅のお供に選ばれた本で、自分でもそれほど期待してるわけではなかったのですが。


和田竜さんは「のぼうの城」しか読んだことありません。


『和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。

海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。

その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった…。』

(アマゾンの紹介より)


というような話ですが、上巻70ページ目までは、大阪本願寺と織田方の政治的な説明がいろいろなされるわけで、良く知らない人がいっぱい出てきて良くわからんことをしゃべるんで、

「げ、これってずっとこの調子で上下巻行くのかな・・・」

と暗雲立ち込める心境でしたが、70ページを過ぎて「景」が出てきてぐっとテンポが速まります。


『身の丈6尺(180cm)髷も結っておらず肩までの髪を海風になびかせ』

『長身から伸びた脚と腕は過剰なほどに長く、これもまた長い首には小さな頭が乗っていた。その近世の不具合は、思わず目を留めてしまうほどである。』

『最も異様なのはその容貌であった。海風に逆巻く乱髪の下で見え隠れする貌は細く、鼻梁は鷹の嘴のごとく鋭く、そして高かった。その眼は眦が裂けたかと思うほど巨大で、眉は両の眼に迫り、眦とともに怒ったように吊り上っている。口は大きく、唇は分厚く、不敵に上がった口角は、鬼が微笑んだようであった』上巻 p70

とまあ、こんな容貌の、20歳すぎても嫁げない、飛び切りの醜女の景が大暴れしてくれるので、さくさくと読めます。


ところが。

この『飛び切りの醜女』は『この時代の』というワードが隠れているタイトルでありまして。

この時代は、色が白くて目が細くてぽっちゃりしてるのが美女だったのでした。

しかし田舎ではそうでも、堺・泉州あたりに行くと、外国と交流があるので、目鼻立ちがはっきりして手足がすらっとしている景は

「ごっつ、べっぴんさんやな~」

と男が群がってくる美女と思われてしまう、これも一種のパラダイムシフトでしょうか。


それを聞いて大阪本願寺なんかどうでもいいけど、おのれの婚活のため、いそいそと堺に船出していく景も景なのですが・・・・

思わず「これが映画になったら、誰が景の役をやるのだろう」と妄想してしまった。

(宝塚で男役をやっていた人が向いているかも。身長180センチある人いるかなあ。)


いままで瀬戸内の「村上水軍」の単語は知っていてもその実態はまったく知らなかったので、結構楽しく読めましたが、それにしても漫画のような展開で、海賊たちの海賊ぶりもとてもコミカルでした。

全編にちりばめられた海賊の会話がおかしい。

命を救われて、

『「余計な手出ししよってからに。いらんかったのによお、おどれなんぞ」

これでも礼を言っている。』上巻p414

なんてところがたくさんあって笑えます。


これもまた「男が書いた男のための男が主人公の物語」系の小説でした。

題名にもなってますが、ヒロインは「村上海賊の娘」である景ですが、主人公と言えるのはワサワサと出てくる海賊たちであります。

というか景も中身は男みたいなもんだし。


全体的に「ターミネイター」と「パイレーツ オブ カリビアン」とを混ぜて舞台を日本の時代物にした・・・・みたいなお話です。

つまり、面白おかしいけど、心には響いてこない、自分の心を投影して共感できる主人公は出てこず、考えさせられる場面もなく、ひたすらはらはらドキドキで終わってしまう軽いお話。


今回の『色物』本は、そんなのが多くて、ちょっとjester的にははずれかな。



それにしても・・・ターミネイター『七五三兵衛』は何回も振り仮名(しめのひょうえ)が振ってあるのに、心の中では「しちごさんべい」と読み続けておりました・・・。