見もの・読みもの日記

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脂派の魅力/近代の洋画家、創作の眼差し(三の丸尚蔵館)

2010-12-13 00:30:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
三の丸尚蔵館 第52回展覧会『近代の洋画家、創作の眼差し』(2010年10月30日~1月10日)

 日本の近代初頭の洋画が好きだ。それも、黒田清輝などの本格的な洋画が登場する前の、まだ混沌とした世代の作品に惹かれてしまう。展示会場の解説パネルによれば、当時、まだまだ社会的に大きな力を持っていたのは伝統的な日本画であったが、皇室は、洋画を積極的に買い上げ、支援したという。その意図は、明治美術会設立趣意書草案の冒頭、「美術の国家に有用なる事は、今識者の共に唱導する所なれば」云々、に尽きるだろう。

 「国家有用の美術」!? 嫌な表現だ。そんな枠組みから、真の芸術なんて生れるはずがないと言いたいところだが、旧弊な枠組みが厳然とあって、しかもそこから、画家の個性がずるずるとはみ出していくところが、近代黎明期の面白さなのである。芸術の自立を意識した世代の作品より、かえって無類に面白いことさえある。

 本展は「見出された景観」「時代を写す」「歴史画の流行」の3つのパートで構成される。洋画は、まず風景の全く新しいとらえ方を日本人に教えた。高橋由一の『栗子山隧道図』や鹿子木孟郎の『大台ヶ原山中』などを見ていると、「写生」という概念が明治人に与えた衝撃と、その衝撃と格闘した明治人の生真面目さが感じられる。この世代の作品は、全体に画面が暗い。明治20年代後半に登場し、明るい外光描写を得意とした白馬会の画家たちが「紫派」と呼ばれるのに対し、彼ら(旧派)は脂派(やには)と呼ばれたのだそうだ。脂派、いいんじゃないの。私は好きだ。

 「時代を写す」に登場する山本芳翠は、黒田清輝の白馬会にも参加しているけど、皇室への尊敬の念深く、伊藤博文らの九州・沖縄巡視に記録者として同行したらしい(証拠となる公文書は未発見)など、「国家有用の美術」の枠内に身をおいていた感じもする。芳翠、面白いなあ。どこかで本格的な回顧展をやってくれないだろうか。日清・日露戦争に従軍していたことは初めて知った。バルビゾン派の風景画みたいな『唐家屯月下之歩哨』も相当不思議な作品だったが、図録に収録されている参考作品『明治二十七八年戦地記録図』をぜひ見てみたい! 松岡寿の『ベルサリエーレの歩哨』は巧すぎると思うのだが、本場の西洋人が見たら、やっぱり日本人臭を感じるんだろうか?

 明治20年代~30年代前半に集中する油絵の歴史画もかなり不思議な流行であるが、最近の、戦国武将をゲームキャラクター風にアレンジする流行と似ていなくもない。

 前後期で完全展示替え。図録を見ると、前期を見逃したことがすごく悔やまれる。

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