見もの・読みもの日記

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紀暁嵐先生の硯/文房四宝(大阪市立東洋陶磁美術館)

2019-06-12 23:49:39 | 行ったもの(美術館・見仏)

大阪市立東洋陶磁美術館 特別展『文房四宝-清閑なる時を求めて』(2019年4月1日~6月30日)

 神戸遠征の翌日、大阪で半日だけ遊んでいく計画を立てた。まずは気になっていたこの展覧会。中国の文人を魅了し続けた文房四宝の世界を、明清時代の文房具約150点をもって紹介する特別展なのだが、展示品については「日本有数の文房具コレクションを中心に」とあるだけで、所蔵者を明らかにしていない。誰なんだろう?

 展示会場は、階段を上がってすぐの企画展示室は「朝鮮時代の水滴」という特集展示をやっていた。巡路を進んで展示室Aの入口に「文房四宝」の掲示があったので、ここかと思って入ったら、いつもの朝鮮陶磁しか並んでいなくて、何か違う。奥のロビーにいったん出て、3階展示室Dとその下のE・Fが特別展に当てられている。

 最初の展示室Dは、文房四宝を構成する「筆・墨・硯・紙」の名品をそれぞれ展示。筆は穂先ではなく軸のおしゃれ具合を競う。堆朱や堆黒の具利文装飾は大好きだが、筆としては握りにくそうな気がする。墨は魚符墨や慈姑墨、石鼓墨など、さまざまな形態があって楽しかった。使えば消えてしまう定めなのに、こんなふうに形に凝るのは、小学生の消しゴムコレクターみたいで微笑ましく思った。墨の香を嗅ぎたかったが、年代物は香も飛んでしまうのだろうか。そして中国には「墨匠」という個人または家の職業があったことを思い出す。

 硯は自然な石のかたちを活かしたものが多かったが、紀昀(暁嵐、文達、1724-1805)先生旧蔵の「四直硯」に目が留まった。紀昀は愛硯家として知られ、『紀文建硯譜』の著作もあるという。この硯の裏面には嘉慶9年(1804)正月、紀昀が亡くなる前年の81歳の時に彫った銘文がある。見たいなあと思ったら、ロビーに拓本が展示されていた。

 

 紙は華やかな文様を摺り出した唐紙が各種。2階に戻って展示室E、Fは、諸具(水滴、筆筒、筆洗など)と印材の展示だった。私は「石印材の王者」と呼ばれる田黄が好きで、同じ黄色系統の石だが少し白みの強い黄芙蓉もよい。やっぱり印材は石が一番で、象牙なんか邪道だと思う。

 中国文人の文房四宝愛は、残念ながら日本には伝わらなかった。日本の文化で、これに類するものを探すと茶道具愛ではないかと思う。墨匠や筆匠の歴史は、日本の千家十職みたいなものだろうかと考えた。なお、展示室は、常設展も含めて全て写真撮影OK。最近、青花の皿を見ると、蘭州ラーメンの器にしか見えないことに笑ってしまった。

 最初に戻って、企画展示室の「朝鮮時代の水滴」も覗いたが、大ぶりな水滴ばかりで驚いた。日本民藝館でよく見る朝鮮の水滴は、小型のジャムかヨーグルト瓶程度の容量だったが、今回の展示品は、500mlのペットボトル1本分くらい入りそうなものもあった。まあ何度も汲み足さなくてもいいので実用的と言えるかもしれない。


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