見もの・読みもの日記

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7人の社会科学者/<帝国>を考える

2004-06-29 22:06:04 | 読んだもの(書籍)
○的場昭弘編著『<帝国>を考える』双風舎 2004.10

 7人の社会科学者が「<帝国>を考える」と題して行った連続講演の記録。7人とは、編者の的場昭弘のほか、宇波彰、藤原帰一、中村政則、鳴瀬成洋、尹健次、後藤晃である。

 このうち、私が(著書もお人柄も)存じ上げているのは藤原先生だけである。なので、藤原先生の名前に惹かれて本書を購入したわけだが、初めて触れた6人の著者は、それぞれ個性的で面白かった。

 的場昭弘さんの「ネグりとハートの<帝国>とは何か」では、大著「帝国」の内容と、その登場が持っている意味を概観できる。さまざまな論者がこの本を引用しているのを聞いたけれど、最後に聖フランチェスコが出てくるなんて初めて知った。

 宇波彰さんは、本書の執筆陣の中では比較的年長だと思われるが、「メディア・カルチャーに抗して」と題し、国家とマスメディアという、古くて新しい問題を扱っている。

 尹健次さんの「朝鮮半島と<日本>」は、本書の中ではやや異色である。他の論者にとって<帝国>は第一義的にアメリカのことであるが、尹さんはむしろ、朝鮮半島に対して日本人が持っている<帝国>意識を問題の主眼としている。

 (北朝鮮の日本人拉致について)「どうしてそうなったのか、そうされたのか、ということを考える回路を、一応は持ったほうがいい」という発言は、多くの日本人の反発を買うだろうが、私は聞くべき意見だと思う。

 それは、9.11がテロリストの許されない犯罪であるとしても、同時に、なぜ彼らはそこまでアメリカを憎むのか?という疑問を忘れないことと同じである。

 なお、本書は、2003年秋に神奈川大学が実施した神奈川区民大学連続講座の記録だという。大学の公開講座にもピンからキリまであるものだが、本書の論考は、いずれも、平易な語りかけの中に著者の真摯な姿勢が感じられ、読み応えがある。おそらく、よい聴衆と、よいコーディネーターにめぐまれたのだろう。

 大学の「知」が、このように市民と交わる場を持つのはたいへん重要なことだと思う。その成功例の1冊としても本書を推奨したい。
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