見もの・読みもの日記

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どうしようもない/江戸の密通(永井義男)

2011-05-29 17:53:39 | 読んだもの(書籍)
○永井義男『江戸の密通:性をめぐる罪と罰』(学研新書) 学研パブリッシング 2010.2

 江戸時代、正式な婚姻以外の男女の性交渉は全て「密通」とされた。ということで、本書が取り上げるのは、いわゆる不倫関係のほか、結婚前の男女の性関係、婦女暴行、近親相姦、僧侶の女犯および男色、少し解釈をひろげて、私娼稼業まで。さまざまな性犯罪(当時の)とその結末を紹介する。ネタ元は『藤岡屋日記』が断トツで多い。やっぱりこの本、すごいんだなあ。『藤岡屋日記』(全13巻、刊本あり)を読破したら、かなり江戸通になれるだろうなあ、とヘンな感心をしてしまった。

 私は人形浄瑠璃(文楽)が好きなので、その背景である江戸時代の「性をめぐる罪と罰」について、知っておきたい気持ちがあった。果たして本書には、白木屋お駒(恋娘昔八丈)とか八百屋お七(伊達娘恋緋鹿子)など、浄瑠璃の題材になった事件も取り上げられていた。

 しかし、『藤岡屋日記』の採録時期は、文化元年(1804)から明治元年(1868)まで。その他の資料を含めても、本書が言及する「江戸」は、だいたい文化文政期以降の社会と思われる。したがって、強固な身分制、圧倒的な女性の不利益、原則は厳罰主義、しかし関係者の体面を重んじ、面倒を嫌って、内済(揉み消し)が多かった等々、本書に語られている特徴が、近松門左衛門の時代(元禄期)まで遡っても、どの程度あてはまるのかは、よく分からない。早計な判断をするのはやめておこう。

 正直な感想を言うと、浄瑠璃芝居のネタになって、人の心を打つような、ドラマチックなエピソードは少ない。大半は、卑小で、陰惨で、どうしようもない男女の痴情ばなしである。まあ、性にまつわる犯罪や不祥事は「本質的には江戸時代もいまも同じ」という〆めの言葉が当たっているのだろう。明治の「血みどろ」新聞錦絵の猟奇趣味には、かなり近いものを感じた。

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