見もの・読みもの日記

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唐三彩の夢/サントリー美術館

2004-06-15 22:03:36 | 行ったもの(美術館・見仏)
○サントリー美術館『唐三彩展-洛陽の夢』

 さきにこの展覧会を見てみた友人から「唐三彩というのは発見されてから、まだ100年らしい」と聞いて、えっ?と思った。買ってきた図録冒頭の「ごあいさつ」によれば、「約100年前、洛陽市郊外の鉄道工事現場で、緑や黄、藍などの彩り鮮やかな焼き物が大量に見つかり、世界に衝撃を与えました」とある。うわ~。初めて知った。

 唐三彩といえば、洛陽・西安あたりに旅行に行けば、お土産の定番であろう。東京のちょっと高級な中華飯店なら、唐三彩(もどき)の大きな馬や駱駝が飾ってあって、雰囲気を盛り上げていることも多い。しかし、今の我々が感じる「中国趣味」というのは、実はそれほど長い伝統を持つものではないのだ。たとえば兵馬俑で知られる秦の始皇帝陵の発見だって1974年である。

 だから、明治や大正の頃の日本人の「支那趣味」というのは、今とはずいぶん違った感覚のものだったろうなあ、と思う。たぶん、隋唐なんて古代のことは曖昧糢糊としていて、明清の文化や風俗が基準になっていたんじゃないかなあと思う...想像だけど。

 さて、この展示会は小規模だが逸品が多い。また、製作年代と発掘場所を整理して、長文の解説パネルとともに展示してあるので、ちょっとした美術史ガイドを読むように勉強になる。ただ、今回の展示品は、一個の純粋な美術品として色や形を愛でるだけでも十分楽しめる逸品が多かっただけに「解説多すぎ」の感もあった。

 サントリー美術館は、最近、ちょっと説明が饒舌すぎるように思う。現地の写真や説明パネルだけでなく、子供にも分かる「Q&A」とか、クイズつきパンフレット(和歌と美術の回)とか。音声ガイドも始めちゃったし...

 私は美術館では見ることに集中したい。勝手気ままに見て歩くうちに、1点くらい「あっ」と印象に残る作品があって、あれは何だったんだろう、誰がなんのために作った(作らせた)んだろう、と気になり始めたら、はじめて図録や解説書を読み始める。本当は、美術と長いつきあいをするには、そのほうが理想的だと思うんだけどね。

 私は唐三彩を美しいと思う。この美しさは緻密に計算されたものではなくて、けっこう、いい加減に施された釉薬が、垂れたり、にじんだり、はみ出したりした偶然に拠るところが大きい(ように見える)。こういう感覚って、美術史や文化史では、日本人の専売特許なんじゃなかったっけ? 中国人って、むしろどこまでも計算され尽くした人工的・構造的な作品を尊ぶんじゃなかったっけ? その点がとても不思議だ。

 最後に、この展覧会で私がいちばん気に入ったのは、十数点の三彩陶片を並べたコーナーである。いずれも10センチ四方程度の小片だが、鮮やかな釉薬が作るリズミカルな文様は、見る者の想像を無限のかなた、天堂(天国)へと誘い出す。何枚かには線刻で連弁の文様が浮き出している。何か、そのまま「夢のかけら」と名づけたい作品のようだった。

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