見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2018年9月@関西:逸翁美術館+高麗青磁(東洋陶磁美術館)

2018-09-23 23:58:07 | 行ったもの(美術館・見仏)
逸翁美術館 2018展示II【特別展】茶の湯交遊録III『東西数寄者の審美眼 阪急・小林一三と東急・五島慶太のコレクション』(2018年8月25日~10月14日)

 関西旅行の最終日は大坂。逸翁美術館が所蔵する、阪急電鉄の創業者小林一三(逸翁、1873-1957)と、東京の五島美術館が所蔵する、東急グループの基礎を築いた五島慶太(古経楼、1882-1959)の美術工芸品コレクションを併せて紹介する展覧会。8月からずっと気になっていた。最近、10月下旬から五島美術館に巡回することを知ったのだが、そうなると、逆に両会場を比べてみたくなった。

 大阪会場だと逸翁コレクションの比重が高いかな?と思っていたが、両コレクションの扱いはほぼ平等だった。実は、両者には共通する作品が多いのだ。そこで、古経でいえば、白描絵料紙梵字陀羅尼経の「伊勢物語・河内越」(逸翁)と「伊勢物語・笛を吹く男」(五島)を並べたり、絵巻でいえば『大江山絵詞』の南北朝時代写本(逸翁)と江戸時代写本(五島)を並べてみる。なお、帰属がすぐ分かるように、逸翁コレクションは小豆色、五島慶太コレクションは緑色をテーマカラーにしていた。阪急電車と東急電鉄のイメージかもしれない。

 両コレクションの競演が特に豪華なのは、歌仙絵・古筆関係。『佐竹本三十六歌仙絵』の藤原高光(逸翁)と清原元輔(五島)を並べて見ることができた。高光は(東京にいると)見る機会が少ないけど、下襲の裾が豪華で、さすが美男子顔だなあ。関戸本古今集切も、中院切も、なんと石山切(伊勢集)も両コレクションから。継色紙は残念ながら後期(9/19-)出品だった。逸翁コレクションの継色紙(あまつかぜ)は私の大好きなものなので、東京会場では見逃さないようにしたい。

 続いて、禅僧の墨蹟は五島コレクションの独壇場。逸翁はあまり興味を持っていなかったようだ。逆に逸翁は洒脱な俳画を好んで、蕪村の「又平に」句自画賛や『奥の細道画巻』を蒐集している。その延長上に、応挙や呉春、芦雪の絵画もあるようだ。長沢芦雪の『降雪狗児図』は私の大好きな作品! これが見られただけでも大阪会場に来た意味があった。

 茶道具は共通品も多く、競り合っている感じ。でも全体として、五島のほうが老人趣味であるのに対し、逸翁のほうが可愛いもの好きで、女子力高めな感じがする。

大阪市立東洋陶磁美術館 特別展『高麗青磁-ヒスイのきらめき』(2018年9月1日~11月25日)

 高麗時代(918-1392)に製作された高麗青磁を特集する。高麗王朝の滅亡とともに忘れさられた「幻のやきもの」が、19世紀末から20世紀初頭にかけて、墳墓や遺跡から発掘され、再び脚光を浴びた経緯は、第1室のパネルに詳しい(唐三彩を思い出す)。「再発見」からさほど遠くない時期に、高麗磁器の「再現」が始まり、李王家の美術品製作所や民間の実業家、日本人や韓国人の陶工が取り組んだ。

 最初の展示室に並んだ、よく似た瓜型水注。↓こちらは高麗青磁(12世紀後半~13世紀後半)で、 



 ↓こちらは20世紀初頭の再現品である。



 実は、どちらも安宅コレクションでは「高麗青磁」として扱われていたという。このほかにも第1室には、本来の高麗青磁と再現品のペアが並んでいたが、正直、あまり区別がつかなかった。

 展示品は約240件。同館コレクションのほか、寧楽美術館、東博、静嘉堂、根津美術館、大和文華館などからも出陳されており、日本国内の高麗青磁をかなり網羅的に見ることができるのではないかと思う。ほぼ全て撮影可で、SNSなどで拡散することが推奨されている。これだけ数が多いと、どの写真を選ぶか難しいが、私が一番気に入ったのは、「練上」という技法でマーブル模様をつくり出した小さな盒(ふたもの)。



 会場の解説には『宣和奉使高麗図経』という書物の名前がたびたび登場していた。宋・徽宗の宣和年間に高麗に派遣された官人が著述したもので、高麗の歴史、政治、社会の重要史料であるという。こんな細かいことまで、と思うようなことが記録に残っているので面白かった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2018年9月@関西:延暦寺根本... | トップ | さっぽろペンギンコロニーin... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事